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閑話 拷問探偵ルミィの可憐な事件簿

「犯人はこの中にいます!」


 ルミィの言葉に集められた五人の容疑者達が騒つく。


「そんな……ルミィ!どうやって犯人がわかるって言うんだ!」


 時夫が驚きながらルミィに詰め寄る。

 まだ碌に捜査らしき捜査なんてしてない……。

 ルミィが不敵に笑う。


「ふふ……簡単な事ですよ。コレを使えばね……」



 ……時は遡る。



 ♢♢♢♢♢

 


「大迷宮は今や大人気観光スポットの様ですね」


 

 ルミィが新聞を見ながら、温かいお茶を啜る。

 大迷宮でのアレコレから一ヶ月が過ぎた。季節はもう冬も近づいてきた。

 

 この一ヶ月の間にも色々なことがあった。

 

 スライム研究に必須のハーブを、少し神殿から離れた場所に土地を借りて大量に栽培していたら、違法な草だと勘違いした近隣住民と警察関係の人達に燃やし尽くされてしまった上に、失ったハーブの保証はゼロで、しかも拘束されて紛らわしい事するなと怒られてみたり……。

 植物系モンスターとノーマルスライムを同じところに閉じ込めておいたけどスライムのなる木は生まれず、せっかく集めてたスライムが水分吸われて全滅したり……。

 良い加減アイスクリームは売れないシーズンなのでスライムをモチーフにした饅頭を売り出したが、全く売れずに赤字続きで、アルバイトは随分といなくなってしまった。伊織も勉強忙しいからとアルバイトはあまり来れなくなったし。

  醤油とか作ってみようとアルマに作り方調べさせて人を雇ってやらせてみたけど、臭くなったから全部捨てたと報告が上がっているし……。

 生活魔法のカリスマになろうと本を自費出版してみたけど、平民の識字率の低さと貴族の生活魔法への偏見は根深くほぼ売れなかった。


 

 ……思い返すと碌な目に遭ってないな?

 俺が何か悪いことしたろうか。


 せっかくスローライフを目指してみようとしてるのに、上手くいかないもんだ。

 才能が無いのか?向いてないのかなぁ?


「大迷宮周辺の人達の商才には嫉妬しかないな」


 時夫は深〜い溜め息を吐く。


「そろそろ冒険者稼業で稼ぐかぁ……」


 時夫の様々なスローライフ赤字は冒険者としての報酬で補填されている。

 時夫も気がつけばクラス2の冒険者になっていた。

 邪教徒討伐の実績からしても、クラス1でも良いらしいが、目立たない様にルミィが裏で色々やってくれている。


「私も行きます。スライム補填するんですよね?」


 ルミィも新聞を置いて立ち上がる。

 ルミィは最近は冒険者はお休みしていた。

 古代魔法研究に明け暮れていたらしい。イーナもそれを手伝っていた。

 

「そうそう。せっかくアルマボーナスで『空間収納』を馬鹿でかくして貰ったのにスカスカだからなぁ」


 そう。時夫は単純に収納の容量アップをお願いしたのだ。

 ルミィは古代魔法の才能アップを望んだが、古代魔法はアルマじゃ無く初代女神のレグラの方の担当らしく断られていた。

 なので風魔法の運用を簡単に出来るようにして貰ったそうだ。

 

 イーナは身体能力アップをお願いしていた。

 もっとちゃんと大人の姿で勇者やってた時は、光を操りつつ剣を振り回していたそうだ。

 子供だとまだ剣が大き過ぎて取り回しが難しいが、身体能力を上げて剣の方でも戦える様になりたいそうだ。

 ……大人にして貰ったら良かったのではないかという考えが頭をよぎったが、ちびっ子姿は可愛いし何も言わないでおいた。


 まあ、そう言うわけで街に繰り出す。

 三人揃って外出するのは久しぶりかもしれない。


「最近涼しくなって虫が少なくなったでしょう?腕が鈍りそうだわ」


 虫殺しの勇者イーナは殺戮に飢えているようだ。

 目を皿にして虫が居ないかキョロキョロしている。

 そこら辺の事情を知らなければ、キョロキョロと大きな目を見開いて、あちこちを好奇心いっぱいに眺める幼女に見える。

 実際には神殺しの運命を背負わされたつわものである。


「……あら?血の匂いがするわ」


「本当ですね。どこでしょう?」


 二人の戦闘狂が鼻をスンスンしながら、ふらふら〜と二人揃って何処かへ導かれて行く。

 二人のセリフさえ聞いていなければ、お腹空いた女の子達が食べ物屋さんの匂いに導かれてる様に見えなくもない。

 見た目だけなら最上級に可愛い女子達なので、周囲の羨望の眼差しと道行く男の嫉妬の眼光がウザいくらいだ。


 因みに時夫には血の匂いとかは分からない。それよりウェイトレスさんが忙しそうに働いているレストランから漂ってくる匂いの方が気になる。

 スパイシーな食欲を唆る香り。赤いミニスカ制服のウェイトレスさんがデカい肉を給仕している。

 こんな所にこんな小洒落た店があるとは思わなかったな。凝った店の作りをしている。

 今日の昼飯はここで決まりだ。

 

「二人ともあんまり変な事に首を突っ込むなよ」


 時夫は店の方を眺めつつ二人の後ろをのんびりとついて行く。


「むむ!お巡りさんと刑事さんがいます!

 これは事件ですね!!」


 ルミィが迷わず刑事さん?っぽい人に近づいて行く。

 刑事さん?は恰幅が良く、ボロいコートを羽織ってドーナツを両手に持ってドラ声でお巡りさん?に怒鳴りながら指示を出している。

 お巡りさん?は両手ドーナツの刑事さん?の為に飲み物を持っておいてあげる係を仰せつかっている様だ。

 上下関係がよく見える。

 体育会系と言うよりはパワーなハラスメントが垣間見えるが、この世界ではあるあるな関係性だ。


「あ゛!?ほら!一般人には下がって下がって!女の子の見るもんじゃないよ!

 野次馬なんて若い女のする事じゃない!」


 刑事さん?がダブルドーナツを交互に振ってルミィを追い返そうとする。

 お巡りさん?に怒鳴ってると思ったが、単に地声がデカいだけだったようだ。

 しかし、ルミィは何故か銀色の冒険者カードを見せびらかしつつ、


「私はクラス2冒険者ルミィです。

 何があったんですか?」


 当然の顔をして首を突っ込もうとする。


「あ……貴女がルミィさんですか!?こんな若い女性とは!

 ……本当は捜査情報は一般人には言えないのですが、良いでしょう」


「モルガー刑事!?良いんですか?」


 近くでその話が聞こえていたらしいお巡りさんっぽい人が止めに入る。

 執務上のルールに忠実な人は時夫は割と好きだ。

 

「良いんだ。この方は様々な事件をスピード解決に導いた高名な凄腕の冒険者系探偵なんだ。

 ……あと、多分だけど貴族だから言う事聞いとけ」


 冒険者系探偵が何なのかは時夫には分からなかったし、後半の方は本人なりの小声で囁いていた様だが、元の声が大き過ぎて普通に時夫達にもバッチリ聞こえた。

 内緒話に向かないお人だ。

 でも、観察眼はある。ルミィが平民では無いと直ぐに見抜くとは。

 実はやり手の刑事なのかも知れないな。

 そして、あちこちの界隈でルミィは有名っぽい。そういう一目置かれる役目は時夫がやりたかった。


「少し手を空けたいのでお待ちください!」


 モルガー刑事はバクバクあっという間にドーナツを平らげて、お巡りさんからお茶を受け取って流し込む。


「こちらへどうぞ……」


 ついて行った先の煉瓦造りの小さめの民家の中には、目を開いて仰向けに横たわる男の死体があった。

 近くに血が固まり黒くなりつつある包丁が落ちている。

 滅多刺しにされたらしく、血の渇いた服には幾つもの穴が空いている。


「ふむふむ。それで容疑者は?」


 ルミィが顎に手をやり死体を観察する。


「外にいる五人です。

 それでですね、見ての通り刺殺なのですが……なんと!密室殺人だったんです!!!!」


 モルガー刑事は何故か嬉しそうに大声で主張する。

 密室殺人はやはり珍しいか。


「自殺ってことはないんですか?包丁落ちてるし」


 時夫は思いつきを指摘した。


「いやぁ、何十箇所も刺してるんですよ?自分でやるとか根性あり過ぎでしょう。

 見てくださいよ、被害者ガイシャのこの根性なさそうな顔を!!」


 根拠は被害者の顔だった。

 優男……と言うのか、何と無く軽薄そうな顔をしているな。

 ひょろひょろと背が高い様だが、こういう男はウドの大木に違いない。モルガー刑事の勘はきっと当たってる。こいつは殺人事件だな!


「まあ、ハンサムさんね。根性があるか無いかはわからないけど」


 イーナはそうは思わなかったらしい。


「ルミィはこういう顔の男好きじゃないもんな?」


 ルミィに確認しておく。これは不必要な情報に思えるかも知れないが、まだ情報が少ない今の段階では何の情報が事件解決に必要になるか分からないので、何でも確認しておくべきだから確認しておくのだ!!


「好きなタイプではないです」


 ふむ。やはり殺人で間違いない。

 知らない奴だが、少し祈りを捧げておく。


 ルミィは勝手に部屋の中を彷徨いて、あちこち確認する。

 素手で何を触っても怒られないのは、指紋の利用の概念に乏しいからか?


「食べ物や飲み水のストックがあまり無いですね。

 空いている容器はいくつもあるのに」

 

 ルミィが疑問を呟く。

 必要になる都度買いに行く家なのか?

 もしかして事件と何かの関係が?

 その疑念をモルガー刑事が一笑に付す。


「アッハッハ!それは大丈夫ですよ!

 被害者は死ぬ前から数日の間、奥さんに家の中に監禁されてて飲食物の補給路を断たれてたんです。恐らく本人が食い尽くしたんでしょう!」


「いや待て!それは果たして大丈夫と言って良いのか!?

 っていうか犯人奥さんだろ!!」


 思わず時夫はツッコミを入れた。


「いやいや、奥さんがこれがまた美人なんですよぉ〜。何とも色気のある人でねぇ……。

 そして、此度未亡人になった訳か。いやね、ワタシも女房に逃げられて今は男やもめでして……。

 コホン……まぁとにかく刑事の勘が彼女は無罪だと告げているんです!」


 モルガー刑事は目元をキリッとさせた。しかし、鼻の下は伸びたままだった。


「………………」

 

 時夫はちょっと気になって、外の方を見ようとする。


「トキオどうしました?急に外が気になりましたか?」


 ルミィの笑顔が目の前にあった。

 目が笑ってない。


「……いや、まだ内部を調べないとだよな!!」


「そうですよ」


 ふう……危なかった。

 

「で、奥さんは何故この人を監禁してたんですか?

 監禁方法は?ロープで縛ったりしたら自力での飲食はできないでしょうし。

 ……いや、待ってください。密室殺人と言ってましたね?」


 ルミィが一応真面目に事件を考えだした。


「そうです!この男はあの様に美しく妖艶な奥さんがありながら浮気したらしいんです!

 その罰として大工を呼んでこの家の脱出できそうな窓や扉の全て『接着』させたそうなんですな。

 あ、その大工と浮気相手も外にいますよ。

 で、そろそろ反省しただろうとその大工を連れて家の中を見たら……」


「あの男が死んでいたと言う訳ですね」


 ルミィが刑事から言葉を引き継いだ。

 モルガー刑事も重々しく頷く。


「家はこの通りレンガ造りです。

 この家を出入りできたのは『接着』の魔法を使った。大工のマットだけです。

 彼なら『剥離』で出入りを自由にした後に、もう一度出入り口を塞げますからな。

 しかし……問題がありまして」


「問題とは何です?」


 ルミィが勝手に椅子に座って腕を組む。

 何だか偉そうだ。

 イーナはレンガの壁をコンコン宝剣で叩いている。

 モルタルは使われず、『接着』の魔法で造られている建築はこの世界の特徴だ。かなり丈夫なのだ。

 時夫もやる事が無いので、ルミィ達の話を聞きつつコンコン壁をノックする。

 

「マットは大工仕事のために、大工仲間達と一緒に隣国のノマ連邦まで泊まりがけで仕事に行ってたんですよ。

 ほら、あそこ大迷宮が今凄く人気でしょう?

 近くに新しい宿が沢山建つって話で、こっちの国の大工にまで仕事が回って来てるって話です。

 で、戻って来て直ぐにここに来てイザベラさん……この被害者ガイシャガインの奥さんと一緒に死体を見つけたって訳なんです」


「なるほど。その容疑者達とお話させて貰う事はできますか?」


「ええ!五人とも揃ってますよ」


 そして、案内された場所にいたのは次の五人だ。


 奥さんのイザベラ……ぼんきゅっぼん!と言えば良いのか?そして泣きぼくろがセクシーだ。緩く巻いた黒髪が艶やか。

 大工のマット……手持ち無沙汰にしている。単発の明るい茶髪にそばかす顔の童顔の若者だが、大工だけあって腕が太い。

 飲食店のウェイトレスのブリトニー……被害者ガインの浮気相手だ。体型がイザベラと似ている。被害者の好みの傾向が伺える。オレンジっぽい赤毛をポニーテールにしている。赤いミニスカが似合う美脚の持ち主だ。

 その飲食店の店主クリム……料理人は力仕事をする事が多いからか、ムキムキしている。年齢は時夫よりそこそこ上か。

 そして……


「何で僕が容疑者なんだよ!」


「おお!オターク!久しぶりだな!」


「違う!僕の名前はターク・ナーデッドだ!」


 そう、女店員大好き手汗凄い男のタークがいた。


「刑事さん、コイツも容疑者なんですか?」


「ああ……近くにあるクリムのレストランで店員に絡んでたからついでに連れて来たんだ。

 怪しいし犯人はそいつで良いかと思っている。刑事の勘って奴だ」


「捜査しろよ!」


 時夫とモルガー刑事のやり取りにタークが憤慨している。


「刑事さん……タークの逮捕は大賛成ですが、一応捜査しましょう」


 探偵ルミィが口を挟む。

 いつの間にか鹿内帽を被っている。ホームズさんの家のシャーロックが被ってる奴だ。何故ゆえ異世界とそこらへんの感覚が一緒なんだ?


「刑事さん……私が夫を殺すはずがないわ。そうでしょう?」


 イザベラがしなを作って、モルガー刑事の肩にそっと手を置く。


「おお!そうですな!さっさとあんな死体は片付けて綺麗さっぱり嫌なことは忘れてください!!」


 モルガー刑事が嬉しそうだ。


「容疑者はあと四人か……」


「そんな訳ないでしょう!彼女も容疑者のままですから!」


 ルミィにお叱りを受けた。

 容疑者は五人のままだ。


「オバさん……そんなだからガインに愛想尽かされたんでしょ?

 なのに逆恨みして殺したんじゃないのぉ?」


 ブリトニーがイザベラを挑発する。

 

「何ですって!この小便臭い小娘が!」


 掴み合いになる。両者互いに一歩も引かない!


「それでオレは何で連れてこられたので?」


 レストランの店主クリムがムキムキの腕を組んで刑事に詰め寄る。


「いや、イザベラさんがアンタんところの常連だって言ってたし、後は……刑事の勘かな?」


 刑事の勘はあちこちに反応する様だった。


「そろそろ昼近いので、オレとブリトニーが抜けてると店が大変なのですが……」


「お、じゃあ店に皆んなで行ってご飯食べながら親睦を深めるってどうだ?」


 時夫は提案した。


「あ、じゃあ私は少し買い物したいので後から合流します。

 トキオが代わりに話を聞いといてください」


 なんと探偵ルミィまさかのお買い物優先で、時夫は探偵オマケから探偵代理に昇格した。


「……よし!事件は俺が解決する……爺さんの名にかけて!」


「山元さんって何かなさってたの?」


「うんにゃ。何でもないっす」


 イーナは不思議そうな顔のままだった。

 店にゾロゾロ歩いていく。


「来るの久しぶりねぇ。ねえクリム……奥さんはお元気かしら?」


「いや……その、今は実家に帰ってますよ」


「あら……それじゃお店大変ね」


「ええ……まあ」


 イザベラは今度はクリムの腕に手を添えている。

 クリムは困った様に頭をポリポリ掻いている。

 なかなか節操なしな奥さんだ。

 その割には夫の浮気は許さないとは……えーっと、柔軟な思考の持ち主だな?


「万年発情期のオバさんきもーい!」


 聞こえるか聞こえないかギリギリの音量でブリトニーが呟く。

 女同士の恐ろしい戦いに男達は沈黙するしかない。


「あなただけがガインの遊び相手だった訳じゃ無いのよ?」


「ふーん?つまりオバさんにはすっかり愛想尽かせてたってことぉ?」


 近くにいるクリムがムキムキの大きな体を縮こまらせて複雑な表情をしている。

 イザベラがクリムの腕をとったままなので、逃げ出せないのだ。

 時夫は戦いの場から気持ち距離を取ってみる。


「こういう女達はどちらもお断りだな……」


 タークがボソッと呟いている。時夫も完全に同意だ。


「あ!あの店っすか?うわぁ!お洒落っすね!お洒落なだけじゃ無い!金かけてそうっす。

 大工の端くれだからわかるんすけど、これかなりの匠の技っす!」


 居た堪れない空気をどうにかすべく、マットがクリムのレストランの外装を褒めちぎる。

 それにクリムが嬉しそうな顔をする。


「いや……金はそんなにかけてないかな?そこまで資金がある訳じゃなくて」


「ええ!?じゃあこれを安くやってくれる人がいたんすか?そんな人いたら商売あがったりっす!」


「オレが自分でやったんだ。昔ちょっと経験があって……」


「へぇ……凄いっす!尊敬っす!」


 マットの機転で何とか雰囲気は改善された。

 時夫だけじゃなく、他の容疑者やモルガー刑事も感心した様に店を眺めた。


「もちろん……割引はあるんだろう?」


 モルガー刑事がクリムに確認する。


「断ると後が怖そうですから……」


 クリムが苦笑した。

 気分で容疑者を決める刑事相手じゃ選択肢も無いだろう。


 そして、クリム自慢のスパイシーな骨付き肉を堪能しつつ、事件について自分なりに考察する。

 タークは逮捕されて欲しいけど、今回は関係無さそうだ。

 探偵代理の勘である。


 やはり犯人はイザベラとマットが共謀して?マットは愛人だったとか?

 閉じ込める前に殺しておいたとか……?

 いや、そもそも閉じ込めてたというのが嘘とか?

 でも、マットはイザベラが他の男に媚を売るイザベラに興味なさそうだ。


 時夫が探偵代理としての職務を果たそうと頑張っていると、まだデザートを食べてないのに、真打ちルミィが戻って来てしまった。

 

「とりあえず私もご飯食べますね」


 茶色のコートを羽織っている。

 シャーロックホームズっぽい。何故異世界人のルミィが探偵の定番の姿を知っているのか。

 ……まさかルミィは事件を放置してコートを買いに行ってたというのか?


 食事を普通に終える。

 ルミィが優雅に口を拭く。


「では、他のお客さんに迷惑にならない様に場所を変えますか」


 そして、時夫達とモルガー刑事、そして容疑者一行は被害者ガインとイザベラの家に戻って来た。

 死体は既にお巡りさん達が運び出している。

 死体の置かれていた床も綺麗なもんだ。


「で、捜査はどうするんだ?」


 時夫が代表で質問する。


「犯人はこの中にいます!」


 ルミィの言葉に集められた五人の容疑者達が騒つく。


「そんな……ルミィ!どうやって犯人がわかるって言うんだ!」


 時夫が驚きながらルミィに詰め寄る。

 まだ碌に捜査らしき捜査なんてしてない……。

 ルミィが不敵に笑う。


「ふふ……簡単な事ですよ。コレを使えばね……」

 

 取り出されたりますは五つの小瓶。

 緑と紫の色が内部で渦巻き発光している。

 相当不気味だ。


「まさかそれは!?」


 その正体をルミィ以外はモルガー刑事だけが知っていたようだ。


「そう……これを容疑者全員に飲んでもらいます!」


「何なんだよそれは!」


 時夫が我慢できずに半ば叫ぶように聞く。


「それは……最高級の自白剤だ。

 とても庶民には手が出せないぞ……一本で二月分の生活費が吹っ飛ぶ。

 ソイツがあれば俺たちの仕事がどれだけ早く片付いたことか。

 流石だ……拷問探偵ルミィ。数々の事件を圧倒的な推理速度で解決して来た実績に偽りなしだな!」


 モルガー刑事が畏怖を込めて色々言ってるが、拷問探偵ってなんだ?

 自白剤って推理でも何でもなく無いか?

 

「こういう事件の推理に自白剤ってルール違反では……?

 それに人権や人道は?」


 時夫は細やかながらこの異世界の常識に抵抗してみた。


「ああ……本当に人道的だよな!

 平民をゴミムシのように扱う他の貴族とは大違いだ。

 普通の貴族なら何となく気に食わない平民を家族ごと拷問にかけて冤罪であろうとも自白させるのに、副作用が少ない最高級品を用意するなんて……!」


 モルガー刑事がうんうんと頷く。

 ……本当にサイテーだなこの世界!!


 そんな訳で、大変人道的配慮のなされた自白剤が配られた。


「これ……売れば生活費二ヶ月分か」


 マットがその輝きに魅入られた顔をする。

 一本で日本円換算で数十万円か。

 それをホイホイ買えるならそりゃルミィも大活躍できるか。


「そう言えば……拷問探偵の拷問って?」


「犯人が判明したら、その後は事件の全てを詳らかにしなくてはいけないので、じっくりお話を根気よく聞くんです」


「なるほど?」


 時夫の知ってるお話を根気よく聞く方法とは少し違いそうな感じがする。


「では、サッサと飲んでください。

 飲まない人は犯人として扱います」


 ルミィの死刑宣告に意を決して蓋を開ける容疑者達。

 タークが一番に一気飲みしたところで、真犯人が声を上げた。


「こんなもんいらない!オレがやった!オレがあいつを殺したんだ!」


 クリムが薬無しに自白した。


「喫茶店……マリーサちゃんの隠し撮り……机の下……エイミーちゃん……下着……下から二番……引き出し……」


 タークの目つきがヤバくなってる。人道とは?


「よし!逮捕だ!!」


 自白を聞いたモルガー刑事が指をビシッと指した。

 控えていたお巡りさん達が刑事の指の先の犯罪者、タークに殺到した……。



 ♢♢♢♢♢


 後日談。


 モルガー刑事はわざわざ時夫の店を訪れて、クリムが語ったらしい犯行動機や密室殺人のトリックを教えてくれた。


 クリムの奥さんと殺されたガインは不倫していたそうだ。

 クリムはそれが許せずに殺害を計画した。

 そして、ガインの自宅を作った大工の中には、料理店を開くことを夢見て資金を貯めていたガインが含まれていた。

 元大工だから凝った安い資金で凝った店の外装が作れたのだ。

 大工時代のクリムはレンガを『接着』でくっ付けながら積み上げる作業の担当だった。

 だから、事件の日は『剥離』でレンガの壁の一部を崩すことが出来た。

 犯行後に壁を再び『接着』し、密室の完成という訳だ。


 まだ若いマットはクリムの大工時代を知らなかったが、他のこの街の大工はだいたい知っていた。

 レストランに食事に来たクリムの昔の大工仲間から、憎くいガインが家に閉じ込められているということを知って、今回の犯行に及んだそうだ。


 あと、タークはコッテリ絞られて、自宅を隈なく調べ上げて女性の隠し撮りや下着類は全て回収され、事件は幕を閉じた。


 王都警察署からの感謝状が時夫の店に飾られている。

 そして、時夫の店にはモルガー刑事とその部下がたまに来てくれる事になった。


「うん……ドーナツが至高だが、饅頭っていうのも悪く無いな」


 モルガー刑事が両手に饅頭を持ってもぐもぐしている。

 お茶はサービスしておいてやる。


「どうですか、ルミィさん……いえ、ルミィ様は今後の捜査協力などは?」


「いえ……やるべき事がありますので」


 ルミィは今日も古代魔法の研究に勤しんでいる。


「そうですか……しかし、我ら王都警察署はいつでも歓迎いたしますぞ!」


「まあ……覚えておきましょう」


 ルミィがお茶を優雅に啜った。

 今日もこの街は平和そのものだ。

 拷問探偵ルミィがこの街にいる限り悪は栄えないのだ!

 


 

 

これは果たしてミステリーと呼べるのか!?

ブクマよろしくお願いします!


そして、⭐︎評価もすごーくすごーく沢山欲しいのですが、貰える方法がわかりません。

誰か⭐︎付けてもらえる方法教えて下さい!

え!?その霊言あらたかな壺を買えば良いんですか!?買います!!!!!

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