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空白  作者: paoharu
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竜胆

最近の彼女は忙しそう。


度々、スマホにメールや電話の着信が入る。

その相手がご両親なのか会社からなのか分からない。


ただ僕と彼女が一緒に過ごす時間も少なくなった気がする。他に男でもできたのだろうか…


一緒にテレビを観ていると彼女のスマホが着信を知らせるために、けたたましく鳴る。


慌ててバッグからスマホを取り出し、玄関から外に出て話し出す。

そんなに慌てなくても…何か隠し事でもあるのか。

そう思い、彼女のバッグに目を落とす。

慌ててスマホを取り出したせいか、彼女の私物がバッグから顔を覗かせている。

そこには彼女がいつも事あるごとに記入している日記のノートがあった。魔が差した。

個人的なものを勝手に見るといけない。

そうは分かっていても最近の彼女の様子から疑ってしまう。この日記に何か書いてあるかもしれない…。


そっと日記のノートを拾いあげ表紙をめくる。

表紙裏の厚紙には、コピー用紙が貼られている。


「精神科訪問看護指示書…?」

「患者氏名、小林…穂高?」

「生年月日…平成◯年4月◯◯日…」

これって僕のこと?


「主たる傷病名、統合失調症」

「病状・治療の状況…少年期に近所の少女に暴行。当時、妄想・幻覚症状あり精神科に入院。治療にて症状コントロールでき在宅での生活可能と判断。時折、内服薬飲み忘れがあり。内服管理、症状観察、外出支援・リハビリのため訪問看護導入となる。」


何度も何度も読み直した。

理解しづらい。いや、理解したくない。認めたくない。

僕が精神疾患…?彼女は訪問看護師だったということか?


ノートには彼女の日記が綴られていた。

日記というより記録…。


" 7月8日

訪問時、ソファに腰掛けている。表情穏やか。

テーブル上の内服薬を確認。飲み忘れなし。

内服薬に関して「コレステロールの薬だよ」と話され、治療への理解度が低い様子。

昨夜、不眠だったためか介入中より居眠りされる。"


" 6月17日

訪問時、まだ眠られていたようで身支度できていない。本日は外出支援の予定だったが本人は記憶にない様子。公園で紫陽花をみる。

時折、訪問看護師に対して親しげな人物を重ねて見ている様子。

妄想症状の悪化の恐れあり、続くようであれば主治医へ相談し内服増量を検討する。"



" 5月◯日 … "


それは僕の記憶の中に鮮明に残っている。

ただノートの記録の中には、楽しかった思い出と僕たちの会話は業務的な単語でまとめられている。


現実を受け止められず、僕は家を飛び出した。

電話中の彼女はびっくりして僕を追いかけようとするが間に合わずただ僕を見つけているだけだった。

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