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空白  作者: paoharu
3/6

朝顔

暑い日差しが窓から入り込む。

もう7月だ。


- ピンポーン~♪ -


「開いてるよ〜」

僕はソファにもたれたまま、そう答える。


「お邪魔しま〜す。今日も暑いですね。」

そう言いながら部屋に上がってくる彼女。


テーブルの上に乗った薬袋を見て

「今日の分のお薬ちゃんと飲みました?」

と心配する彼女。

「ちゃんと飲んだよ。」


僕は小さい頃から病弱で入退院を繰り返していた。

一時期は注射をしていたが、今は内服でコントロールできている。ただ、僕が小さい頃、夜中に暗い部屋で母親の啜り泣く後ろ姿を見た。そのときに「僕の人生は長くないんだ」と悟った。

彼女にはそのことを話していない。

ただ健康診断でコレステロール値が引っかかって、コレステロールを下がる薬を飲んでいると説明している。


最近は暑さもあり、2人で外出はしていない。

家でまったり過ごす時間が多い。

「そういえば、最近は家で何してるの?」

僕の問いに、

「う〜ん、何してるっけ」と濁す彼女。

多趣味というか熱しやすく冷めやすい彼女は

いろんなことに興味を持ってはすぐにハマる。

以前は、同じ質問をすると

「カップケーキ作り!」「アクセサリー作り!」

「ミステリー小説読んでるよ!」と即答していた。


今回の彼女の返答に思うところはあったが、追求はしなかった。


気がつくと僕は居眠りしていたようだ。

テーブルの上に置き手紙、

「今日はもう帰りますね。

疲れているようだったので起こしませんでした。

お許しを…!」

メッセージの横に、土下座しているうさぎのイラスト。お世辞にも絵心があるとは言えない。

そんな歪んだ線で書かれたうさぎでさえ愛おしく思う。


もう帰り着いたかなぁ…

ふと、玄関に彼女の傘が置き忘れていることに気づく。そういえば明日から雨が続くよな。

届けよう。

僕は彼女の傘を握り、自宅を出た。


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