七人隊
「話は以上だ。部屋を用意してある。数日休んで魔界に慣れ、それから出発しろ」
秀は指を鳴らした。
「類次、案内しろ」
「かしこまりました」
類次と呼ばれた青年は、相馬たち三人が跪いている場所まで来ると、顔を覗き込んだ。
「初めまして。七人隊のリーダー、アルカーツク類次です」
軽く微笑むと、類次は相馬に手を差し出した。
「お部屋を案内しますので、お立ち願えますか?」
「ありがとう」
相馬はその手は受け取らずに、ゆっくりと立ち上がった。
「こちらへどうぞ」
それを気にする素振りもなく、類次は三人をエスコートする。そして、大広間から出る直前に立ち止まり、振り向いた。
「ご紹介します」
類次が手で示した先に、四人の男性が並んでいる。
「左からトランジェ紀伊知、サルバード流、サルバード新斗、扉累留実」
「紀伊知です、よろしくね」
「あ、よろしく・・・」
紀伊知は柔らかく微笑みかける。対して、他の三人は警戒するように無言で僕たちを見ていて、居心地のいい集団とは言えなかった。
「七人隊の仲間たちです。ところで紀伊知、雷需くんは?」
「慣れない訪問者に緊張しているのでしょう、先程私が呼びに行ったのですが、部屋から出てきませんでした」
「そうですか・・・。まぁ、何かありましたら我々七人隊までお願いします。雷需くんは後々ご紹介しますから」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
「ところで・・・」
相馬と挨拶をした後、佐倉はふと口を開いた。
「リーダーの類次さん、それから彼ら四人、雷需さん・・・それ以外にはいないような素振りですが、七人隊なのに六人、ですか?」
「・・・それは」
「本来は七人なのですが、現在一人、違う類の仕事を兼ねていまして。常に王城内にいられるのは我々六人なのです」
紀伊知がフォローに入る。その後で類次と目配せし、軽く頷いた。
「さて、お部屋まで案内致しますので、こちらへ」
類次の後について、僕たちは廊下を進んだ。
「はぁー・・・」
ベッドの上に倒れ込んで、相馬は深い息をついた。
あの後、ご丁寧に一人一部屋割り当てられた。高級ホテルのように完備された部屋だったが、なにぶんやることがない。佐倉の部屋に遊びにでも行こうかなと思っていた矢先、急に部屋が暗くなってきた。
「雨、か」
見れば窓の外は薄暗く、厚い雲が空を覆っていた。
相馬は起き上がり、窓に近づく。
「あれ、結構降ってる」
遠くからではわからなかったが、雨はそれなりに降っていた。道行く魔族たちは、薄い色の膜に包まれていたり、そのまま濡れていたりと様々だった。
「あれは魔法なのかなぁ・・・」
僕にもできるんだろうか。薄い膜をしげしげと見つめる。しかし、階段を何回か上ったため、通りにいる魔族は遠目にしか見えなかった。
「やってみるか」
相馬は部屋を出ると、案内されているときに見かけたテラスに向かった。