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動き出す状況

「・・・」

「直接ここに来たのか、蓮」

 霊次は窓から外を見たまま、背後にいる蓮に話しかけた。

「人間どもは置いてきたのか」

「ロビーでヴィーネと・・・」

「そうか」

 振り返り、灰色の髪を揺らす。

「それでお前は、どうするんだ」

「・・・」

「知っているぞ。俺に対する気持ち、秀との絶妙な関係、お前自身のこと、すべて」

「・・・」

「その上で、どうするか、だ。ここで俺と戦うか、それとも」

「・・・」

「選べ、蓮」

「俺は・・・」

 薄茶色の髪が風に舞い、二色のリボンを揺らした。


 少女は震える手で兄の服を掴む。

「・・・怖い」

 階下から争う音が聞こえる。その様子は、ロークの水晶にぼうっと映し出されていた。ヴィーネと向かい合う二人の人間、宮野相馬と七瀬佐倉。相馬が秀の妹だということはわかったが、佐倉はなぜ大きな魔力をもつのかまったくの不明。

 正直、俺では勝てない。

 ランドとミナは、まだ情報もほとんどない頃、急ぎすぎて命を落とした。ラインは、おそらく蓮に始末されたのだろう。ラインは人間二人に引けを取る奴じゃない。そして今戦っているヴィーネは・・・将来有望ではあるが、今はまだラインほどの力はもたない。人間二人が本気を出せばあるいは打ち負けてしまうかもしれない。

 残された俺と妹は、ほとんど補助的な力しか扱えない。闇の魔力は制御が難しすぎて、魔力が劣る俺たちに何とかできるようなものではないのだ。

「・・・ローク、行くぞ」

 今しかない。勝てる見込みが少しでもあるときに力を使いたい。

 妹の手を引く。

「お兄様・・・」

 ロークが手を引っ込めようとするが、そんなのお構いなしに引っ張った。

「・・・」

「・・・わかりました、お兄さ・・・ううん」

 こんな強引な兄は、最初で最後だろう。

 ロークを連れ、部屋を出る。

「ロヴァイン、ありがとう」

 小さな声でそう言う少女は、何か妹とは違う存在のような気がした。


 まずい。このままでは。

 佐倉はヴィーネと対峙しながら考えていた。どうするべきか。

 相馬は慣れない自分の属性に、苦戦している。それはあるいは本人も気づいていないのかもしれない。だが、明らかにまともな魔法が使えていない。僕よりはるかに低レベルだ。秀王の妹とあろうものが、あの程度であるはずがない。僕だって。僕だって魔力を解放できるというのに。

 正直、相馬にそれをして欲しい。その力があれば、おそらくヴィーネには勝てるのだろう。だが彼女にはそれができない。光属性の魔力の扱いが、想像できないのだ。それは、必死に戦う彼女を見ればわかる。

「蓮は!?」

 相馬が叫ぶ。

 気づいていた。蓮はヴィーネが最初の攻撃をしてきたとき、既にいなかった。どこに行ったのか、わかる。霊次のところだ。そうする理由も、僕にはわかる。なぜなら彼は。

「・・・いないな」

 相馬には、敢えて言わない。蓮が言わなかったということは、僕にも黙っていろということだ。

 もうすぐわかる。すべてわかる。相馬、ごめんな。何も言えなくて、ごめん・・・。

 氷の柱が降り注ぐ。が、僕の注意はそこではない。

 ・・・あれは。

 やるしかない。僕がやるしか。

 相馬、無事でいてくれ。

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