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異世界と出会い

 気がつくと、見たこともない草原に座り込んでいた。

 ここはどこだ?

 相馬は、辺り一面を見渡した。何も、ない。仕方なく立ち上がって歩き出す。歩いていけば、どこかに辿り着くだろう。そう思っていたのだが。

「・・・あれは」

 割とすぐ人影を見つけて、相馬はそちらに向かった。不審を抱いてはいた。

 だって、さっきは誰も、いなかったはず。

「おーい、そこの君」

 相馬は少年に話しかけた。同じくらいの年格好だ。

「・・・はい」

 しかし、振り向いた彼の顔には、ぞっとするほど大人びた表情が浮かんでいた。


 彼から受ける違和感に、相馬は言葉を呑み込んだ。

 少年の体格、少年の容姿。それなのに、表情だけ、少年ではない。

 世の中を知った大人のような、薄い感情。

 少年は、そんな相馬を見てそっとため息をついた。そして、再び問い掛けた。

「どうかされましたか」

「あ、いや・・・」

 綺麗なアルト声を受けてよくよく見れば、かなり端整な顔立ちをしている。若葉色に染められた柔らかそうな髪に、均整のとれた輪郭。澄んだ細い瞳。引き締まった唇。

 眉毛にかかるくらい深くバンダナをしているが、これは彼なりのお洒落だと受け止めておこう。スーツにはこれでもかってくらい似合わないけど。

「ここ、どこかなと思って」

「・・・申し訳ありませんが、僕は存じません。こう申すのは難ですが、突然移動し、ここに来てしまいましたので」

「あ、僕も!押し入れで鏡を見つけたんだ。そしたらいつの間にかここで・・・」

「・・・類似点が見られますね。僕も、書斎で覚えのない本を見つけましてね。それを開いたら浮遊感があり、気がつけばこの場所にいました」

 少年は淡々と言葉を紡いだ。先程の表情といい、まるで感情がないようだと思った。

「ところで、貴方のお名前は?」

「あ、相馬だよ。宮野相馬」

「同じ境遇ですから、何かとお世話になるかもしれません。僕は七瀬佐倉と申します。以後お見知りおきを」

 少年――佐倉は、恭しく礼をした。

「うん、よろしく。ところでその髪どうやって染め・・・わぷっ」

 突然、強い風が吹いた。しかしそれは一瞬のことで、次の瞬間には風圧を感じず、ただ木々の葉が残りの風に音を立てていた。

「けほっ・・・何?」

「迎えに来た」

 二人以外誰もいなかったはずの近くから声が聞こえ、相馬たちは振り向いた。

「よう」

 そう言ってさっと手を挙げて見せたのは、薄茶色の髪の、爽やかな青年。ただ、両頬に刺青らしきものがあった。

 見慣れぬものに、佐倉は少し緊張する。

「どちら様でしょうか」

「蓮だ。サイキャル蓮」

「お名前は了解致しました。しかし、僕が聞きたいのは貴方様の身分であり・・・」

 青年が頭を掻く。

「わかってるよ、説明面倒なんだ」

「ねえ、外国の人なの?」

「あー、お前ら人間とは違うんだよ」

 蓮の言葉に、二人は顔を見合わせた。

「ったく、歩きながら話そうぜ。名前は?」

「僕は宮野相馬だよ」

「・・・宮野?」

 先ほど歩き始めたばかりの青年がぴたっと歩みを止める。そして相馬の顔をじっと見てから、また歩き出した。

「なるほど、そういうことか」

「え、何?」

「いや、何でも。そっちの嬢ちゃんは?」

「七瀬佐倉です、申し訳ありませんが、女性ではありません」

「そうか」

 眉根を寄せた佐倉に対し、蓮は何事もなかったかのように歩き続けた。彼がなぜか早足なので、ついて行くのが大変だ。

「あ、それとここ魔界な。だから俺は魔族」

 さらっと言った蓮の言葉に、今度は二人、引きつった顔を見合わせるのであった。

「おっと、ここだぜ」

 蓮は急に立ち止まった。相馬はそれにぶつかりそうになる。

「何やってんだ?これ、俺の住処」

 それは洞窟に扉をつけただけの質素な作りに見えた。しかし実際中に入ってみると、まるで一部屋であるかのような空間が広がっていた。魔力の支配する世界というのが、何となくわかる気がする。

「そこにある服に着替えてもらいたい」

 展開が早すぎて何が何だかわからない。しかし、魔界と言われたここから帰れる見込みがあるかどうかわからない今、蓮に従うことしかできなかった。

 服を拾い上げる。

 迎えに来た、と蓮は言っていた。僕らは魔界に呼ばれたのだろうか。サイズぴったりのこの服も、そのために用意されていたのだろうか。帰れない、のだろうか・・・。

「着替えたらそこで寝ろ。明日、王に会いに行くから」

 僕らは王様に呼ばれたのだろうか。どんな王様なのだろうか。

 佐倉と共に横たわると、気疲れからかすぐに眠ってしまった・・・。

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