詠唱兄弟
「ただいまより、七人隊員流と、同新斗の決闘を始める。相手を敬い、互いに全力で臨むこと」
「了解!」
「了解した」
「では、開始!」
秀の言葉で、二人は構える。
二人を決闘を見守るのは秀、相馬たち、七人隊のみだ。本気の決闘はいささか刺激的であるということで、一般兵は見学に参加させなかった。基本的にはどちらかが動けなくなるまで攻撃を続ける方針だ。地位の差もある上に相性の問題がある。戦い中少しでも新斗が不利になった時点で、一気に片が付くだろう。そしてその際、命を落とす可能性も否めない。
水柱が地面の至る所から沸き上がる。
「見たくないです・・・」
留実が苦しそうに呟く。
「僕も・・・新斗さんがいなくなるなんて耐えられない」
雷需がそれに呼応する。
脚に炎を纏った新斗が、迫り来る水柱を蹴りながら避ける。
「まだ決まったわけじゃないぜ」
蓮は、それほどこの場を苦痛に感じていないようだ。
「我と共に在る水脈よ。呼びかけに応えよ」
流の詠唱が聞こえ、召喚された水龍が新斗を襲う。新斗は所々炎で蒸発させながら、間を駆け巡る。
「詠唱で魔力を高めましたか・・・時間の問題ですね」
「・・・本当に、相性は悪いのかな」
相馬は呟く。
「どういうことだ?」
「大きな炎は水を掛けても消えない。魔力の強さが問題じゃないのかな」
「でも新斗さんの魔力は、七人隊の中では極めて弱く感じますが・・・」
不安そうに呟く類次。紀伊知がそれに頷く。
「本当に、秀様がなぜ彼を七人隊に選んだのか、わからない」
上昇した水龍は水槍に姿を変え、四方八方から新斗目がけて落ちる。
「僕は、そうは感じないよ」
その瞬間、今まで音のみ存在した場所から、もう一つの声が聞こえてきた。
「我が魂に炎を宿せ。冷たい涙を焼き尽くせ。正義と秩序の在るところに。我の呼びかけに」
「詠唱!?」
「流だけじゃなく、新斗も詠唱を使えたのか!?」
類次と紀伊知が信じられないという顔で叫ぶ。天から降り注ぐ滝の真ん中に、魔力が集中する。
「応えよ!」
叫びと共に爆発が起こり、ものすごい爆風を感じた。途中から蓮が風を起こし相殺してくれたが、その向こうは何も見えない。
「そこまでだ!勝負あり!」
秀の声を境にようやく爆発元の炎と、風が止んだ。
「・・・っ、う」
魔力の源である水脈は、完全に蒸発させられていた。瀕死の流を、新斗が抱え上げる。
「よかった、なんとか大丈夫そうだな・・・」
流の眉がぴくりと動く。
「うっせぇな、魔力隠してるとかむかつく・・・げほっごほ」
「喋るなよ、ひどくやられてるんだろ?部屋帰ったら水飲ませて治療してやるから」
「自然治癒するから必要ねぇよ馬鹿兄貴・・・ごほっ」
「だから瀕死の状態で喋るな馬鹿者」
とりあえず無事に終わったようで、一気に身体の力が抜ける。
「よ、良かった・・・」
「まぁでも総動員して治療しなきゃ駄目だな、あれは」
「申し訳ないが、流の治療を頼むぞ」
「はい、秀様」
そんな和みムードのギャラリーから孤立して二人。
「下手したら私も負けるかもしれない・・・」
「私が樹木の助けを借りても、すべて焼き尽くされそうですね・・・」
氷属性の類次と木属性の紀伊知。トップの二人は、まだ呆然と焼け跡を見つめていた。




