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十八日目 安堵して初めて生ずる、徒労感を覚える余裕

「良かったわねえ」

「いや、本当に」

「あそこらだったら良いかもな。まだ分かんねえけどさ」

「本当にほっとしたよ、寄合の結果を聞いた後だけに……」


マサが云うと、エイコも、


「ね~、優しいお爺さんだったね」

「あのお爺さんだけが優しいって可能性もあンだよ、まだよォ」


混ぜっ返すようにトヨが云うので、ぼくも一応、


「どうかな、村の新参の部落ってことで、やっぱり違うんじゃ」

「明日、天気が悪くなければ、トオルにまた建設許可申請すぐに出してこようよ」


マサが気の早いことを言い出した。


「いや、まだ場所が決まって……」

「ああ、そうだな、そうしよ」

「え、いいんだ?」

「ねえ、これ、こっちでいいの? 草~」

「でも、最初のようだと困るし、部落の人達が良いって決めてからさぁ……」


少しずつお喋りがカオスになってきたので、


「ちょっとお手洗いぃ」


と抜け出す。

外のひんやりした空気で、なんだかほっとする。

わちゃわちゃしたのは、やっぱりまだ苦手だ。


用を足しつつ、空を見上げると、曇り空が薄れてゆきつつあり、一か所にぽかっと晴れ間があいて、青空が覗いていた。

なんだか、気持ちが楽になった、気がした。


--


結局、新しい建設許可申請は、せめて部落の人達が良いという迄は焦らずに待とう、また前回みたいに先走ると厭だから、と言う事になったようだ。

その後、やる気の出たトモトヨが、上流へ行って、粘土を採って、土器を作り始めたらしい。


今はぼくが火の番をしていて、石を研ぎながら、履物について考えている。



農家ならさ、稲藁が幾らでもあって、わざわざ材料を集める手間が要らないから、毎晩藁を叩いて縄を綯って、それで草鞋を作るのも、まあまあ効率的で経済的なんだ。

でも、ぼくたち浮浪児は違う。

何も持っていないから、わざわざ代替材料を探して、刈り集めて、束ねて担いで持ち帰り、やっと取り掛かる。

余分な枝葉を取り除いて、この材は合う、合わない、をその場で見極めながらどうにかこうにか一足作り上げるのも大変だ。


そしてやっと作っても、一日も歩けば、材料にもよるが、履き潰してぺしゃっとなってしまい、裸足で歩くより歩きづらいような代物に変わってしまう。

或は、蔓が切れてバラけてしまう。

耐久性に乏しい。


とにかく、とても効率が悪い。


しかも、谷間の中央道とか、その直近のまっすぐな枝道はともかくとして、村の外縁の小道なんてまだまだ小石だらけで、裸足では歩きづらい。

マカダム舗装みたいに砕石でわざわざ舗装しているという小石ではなく、明らかに未整備で、道が通される前から天然にもともと其処に散らばっていた、山から谷底へ転げ落ちてきた岩石が風化して砕け散って風化しただけの小石だ。

代を重ねて落ち着いた村と違って、裸足で歩けない以上、何か作りやすく耐久性のある履物が必要だ。


村人はどうしているかと言えば、靴底を膠で固めたのだろう、革のブーツを履いてる者も居たりするが、サンダルや草鞋や草履で済ませている者も居る。

ただ、サンダルにしても紐がしっかりしているし、草鞋なら陸稲の稲藁で作ったであろう品質の一定した縄だ。

ぼくたちが寄せ集めの素材をどうにか組み合わせて編み込みにも苦心して作って居るのとは違う。

素材の入手で難があるぼくたちには、真似がしづらい。


何かもっと別の履物を作れないか。


例えば、こないだのように、灌木の枝を編み込んで、柔軟性のある曲がった板状にしたのを底板にして、草よりは耐久性があるし……手間がかかり過ぎるし、過重で破損した時に足を怪我するんじゃないかな。

下駄とかさ……平らな道でないと歩きづらいよ。

かんじきの輪の木材をもっと上下巾を厚くしてさ……網に体重をかけてさ……。

いや、∩型部品を多数連ねて、ハンモックみたいに紐を編み込んだ処に足を載せて体重を網で支えるなんてのも……。

それならX型部品の方が、硬い物を踏んづけても足が護れる……上に網張って……いや、だから網に足を乗せても、ぐらついて立ってられないんだよ……網系は没。


しっかりと足からの重量を受け止めて、地面に伝えて支えてくれないと、ぐらついて立っていられない。

猶且つ、接地面には堅くて削れない耐久性が欲しい。

しかも地面からの衝撃は足裏に伝えずに途中で吸収してほしい。



ずっと考え込んで、色々な案を検討しては、あれは駄目、これも駄目、それも駄目と妄想にも似た考えを次々に捨て去っているうちに、いつしか研ぐ手が止まっていた。

眠り込みそうになり、はっとして、慌てて頬をぱちんっと叩いてしゃんとする。

以後は火の番に集中し、研ぐのを再開する。

拙作をお読み頂き、実に有難う御座います。

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