十五日目 木札
昨日履き潰した草鞋は、昨夜の火の番の間に解して、再生草鞋を作った。
新たな草鞋を作る草が手元には残って無かったので、今は新しい草鞋が無い。
しまった、これなら家畜小屋に泊まっていた方が良かったか……と後悔したが、今更そんな事思ったって、もう遅い。
今日は、お殿様からの建設許可の代札を貰ってくる予定。
最初に皆で小川行って獲って食べる。
そしたら先ずは草を探して採って、草鞋二人分だけは新しく編んでおこう。
それが出来たら二人だけが新しい草鞋で受領に出向いて、受け取ったらすぐに帰ろう。
残る三人は無駄に歩き回らずに、小川の辺りで活動していれば、無駄に草鞋を多く履き潰さずに済むんじゃないかな。
「って思うんだけど、どう?」
「ん~……草鞋はねえし……そっか……二人で行く、のか……ん~」
「あたしは良いと思う」
「でも全員でってー」
エイコが首をかしげるのへ、マサが
「ん-、今日はもう分ってる場所しか行かないんだから、それでいいかもなあ」
「泊まる必要が無いって判ってるんだし、それだから荷物も昨日と違って持って行く必要が無いでしょ、良いと思うの」
「ん~、そっかぁ。なら、良いのか」
トヨキが納得したように頷いたので、
「ぼくとトモで行こうかと思うんだけど、どう?」
「ああ、まあ、そうなるでしょうね」
「なんでだよ」
「まあ、そんなもんじゃない」
「そうなの?」
「あ、トヨ行く? 行ってくれるんなら任せた」
「おう、任せとけよ」
「ふ~ん」
トヨトモで行ってくれる事になったので、早速いつも通り獲って食べて採って持ち帰る為の準備をして、出かける。
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雲で一時的に日が翳った中をトヨトモが出発した後、居残り組のマサエコぼくの三人で、小川の畔の、既に何度か使用した石積み竈の周りに、今日もまた少し石を積み上げる。
そうしておけば、大雨により氾濫するほどの大増水などで崩れたりしない限りは、また次に利用する時に、少し使い心地が良くなる。
食事の後片付けを終えると、文明人としての一張羅である粗末な黒っぽいズボンは脱いで近くの枝に引っ掛けておき、菰も脱いで近くの草に引っ掛けておき、石斧で薪や柴を採る。
あらかじめトオルに訊いて、草を採っても良いかを確かめておいた場所だ。
途中で火熾し棒の木を見つけたので、火熾し棒のセットを新たに作る。
それが終わると、草を採って、自分の草鞋を編み、枝に引っ掛けておく。
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作業が終わると、荷物を細く裂いた低木の樹皮を撚った紐で束ねて、棒の両側で出っ張りに引っ掛ける。
天秤棒みたいに肩に掛けて運ぶ心算だ。
汚れた草鞋ごと小川にざぶざぶ入って行って、汚れた手足と顔を小川で洗い、上がって来て手足の水気を切った後に、細い丸太の杖に手を擦りつけて湿り気を少し吸わせ、残った湿り気は粗末な黒っぽいズボンで拭い、それで湿ってしまったぶかぶかでつんつるてんのズボンを履くと、岸辺の草に引っ掛けておいた菰をとって、頭からかぶって胴に掛ける。
さっき作った草鞋をとって、腰帯に結わえ付ける。
帰る準備ができると、棒を肩で担いで持ち上げる。
マサノリが、よたつく。
「おい、おい、大丈夫か?」
「っ……ああ!」
ちょっと欲張って多めに束ねてしまったようだ。
ふらつきながらも、杖でなんとか身を支えて、前へ歩いている。
さすがにそれだと早く疲れて、またふらついてくるので、途中で何度も休みを入れる。
その度に棒をかける肩を変えて、なんとか持ち帰る。
何度目かで見かねて、こっちの軽めの薪の束と荷物を半分入れ替えて、重さを均等化した。
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「ふあああぁ……」
マサノリはなんとか持ち帰れたが、頭痛が酷いらしく、眠そうに欠伸を連発している。
そのうちに寝っ転がって、寝入ってしまった。
エイコも疲れが出ているようなので休ませ、一人で熾火の番をしつつ、石をひたすら研ぐ。
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エイコに熾火の番を交代してもらって寝てると、午後にトヨトモが拠点建設許可証の代札を持って帰って来た。
札に開けた穴に紐を付けて貰ってあるので、トモコが腰帯に付けて持ち帰った。
「見せて、見せて」
「待ってね……」
菰を脱いで肌着の下から取り出したのは、掌より少し大きめのほぼ真四角の板切れで、隅に小さな穴が開けられて、麻紐を通して環にしてある。
必要な事項が書き込まれて、彫りこまれ、焼き印が捺されてる。
「これかあ」
「失くさないでね……」
これであとは、村人の寄合次第だ。
そろそろ結果が出ている頃合だろうか。
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「草刈りは皆でやるでしょ」
「いや、オレ達男だけでやる。トモコはおかねや札を預けてあるんだから、力仕事はオレ達がやるよ。エイコも草とか集めた方がいいよ」
「ふーん、じゃあナイフは三つあればとりあえず足りるか……」
拠点建設をスムーズに進めるには、道具を予め作っておきたい。
破損に備えて、予備も欲しい。
それでもう皆疲れているから今日は休むとして、その前にちょっとだけ出て、少し歩いて、ミントを摘んできた。
明日は、灌木を伐って来る事にした。
それを編んで、少し窪んだ板状に編めば、重たい土をどかすのにも、二人で運べる。
土を運ぶだけでなく、いざという時に担架にしたり、防風遮蔽にして火を焚くにも使える。
此の日は、あとは休みながら火の番をして、その間に新しい三つ目のナイフを準備すべく、河原で拾っておいた石をひたすら研いだ。
拙作をお読み頂き、まことにありがとうございます。




