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六日目 その1 休息

六日目。


「おはよ」

「よ」

「おはよ~」

「……」

「Zzz」


火の番をしていてくれた二人に声を掛けて起きる。


用便の為に草むらから出ると、外は山気が下りて来ててかなり冷える。

今日も晴天に恵まれた。

雪は融けて来ている。


昨日、農家の小父さんと話を済ませたし、がんばって道の段差の問題も片づけたので、一安心。

まだ傷も癒えていないし、今日は一日、基本的には、のんびり休む方針。


そうは言っても腹は減ってるし、毎日魚を獲ったり草や木の芽などを採らないと、その日の食事もできない。


--


用を足して来てから、繕ったばかりの草鞋を締め直してるマサへ、みんなにも聞こえるように、


「此処、灰の中に(おき)(うず)めておくから」

「わかった」


出掛ける準備として、土の上の灰に小さな熾火を埋める。

薪の燃え残り部分がまだ大きな熾火は、


「あちち……」


燃えてない部分も既に結構熱いのを、右手から左手に、左手から右手に持ち替えながら、腰と背中で後ろ向きに草を分けて火から守りつつ、草むらから外へ出て、融け残ってる雪に熾火を突き刺して、消してしまっておく。


火の始末を終えると、また草むらに戻り、今日も遮光板を顔に巻き付ける。

樹皮を剥いだ、細い丸太の杖を手にとり、気持ち良い握り具合を楽しんで、外へ出る。


「ちょっと女子ー?」

「待って「~」」


もう少ししたら、出発だ。


--


残っている雪と、雪が融けても今度は泥濘の所為で、道の途中ではほとんど休めないから、とにかく無理せず行くのを心掛ける。

ただ、あんまりゆっくりしていると、今度は足から冷えが昇って来てしまう。

多少足元を補強してはあるが、しもやけを防げる程度でしかないので。

なので、道の途中で登れる木があれば、枝に上って足を揉み、血行を良くした。


上流の河原でも、冷たい水には入らず、罠にかかってる川海老や魚や貝だけ獲って、それだけでは量は少ないのだが、今日はそれで済ませる。

数日前に作ったままの焚火跡を今日も使い、皆で分けて食べる。


食べて汚れた手は、泥で脂を擦り落とし、冷たい川水で泥ごと洗い流す。

水気を切った手指はまだ濡れているので、丸太の杖を握って、手の平を擦りつけ、湿り気を木部に吸わせ、それから焚火で乾かす。



雪が積もったままで、近付くと危ないかもしれないので、木の橋を渡って滝元へ近づくのは止めておく。

喉を潤すには、まだ残っているきれいな雪をとって齧る。


ただ、ここには近くにツワブキのような草があったので、ぼくはその丸くて大きな艶のある葉を一枚摘んで、それを引っ張って曲げて、雪を少し容れて、火で炙って雪を融かして飲んでみる。


「おめー、なにしてンの?」

「ものは試し、さ」


正直、雪なんて直接齧る方が余程早い。

でもこれは手が雪でかじかまず、焚火で温まりながら、少しでも温んだ水を呑めるのが悪くない。

ぼくはそんな些細な事に、贅沢を感じた。


「そろそろ着ている物も洗いたいね」

「ほんと」

「いやあ~、脱いだら寒いぞ~」

「いやだよ、オレは絶対脱がねえ、死ぬ」


二人とも背中を丸め、少しでも暖まろうと足を突き出して、火に当ってる。

草鞋が焦げそうで、観てて冷や冷やする。


「それにぃ、お天気良いけど、お日様で乾しても、帰るまでに乾かないよ?」


山が目の前の此処だとまだまだ雪が一面に残っていて、かなり冷えるし、乾しても乾かないだろう。

シェルターに戻るまでに風邪ひきそうなので、止めておく。



その後、トヨマサだけで棒きれを使って罠の手入れを少しだけする。

寒そうに背中を丸めた二人は、汚れた手足を冷たい川水で洗い、各自の丸太の杖に手指の湿り気を吸わせてから、焚火で温める。


その間、ぼくは石刃で周辺の草を少し刈って、束ねていた。

あまり沢山は持って帰れないけれど、今晩の手仕事の役に立つ程度の量はある。


トモコはミントを沢山摘んでいたが、一株を根っこごと掘った。



ミントの株を持って無事に帰りつくと、トモコはエイコと相談しながら、草むら近くの比較的日当たりの良い場所を選び、石斧と棒きれで掘って、植え込んだ。

殖やすつもりらしい……。

植えたミントには、泥濘の泥を寄せ掛け、更に融け残りの雪を少しその上から掛けて、水遣りとした。


拙作をお読み頂き、実に有難うございます。

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