二日目 食糧を持ち帰る
河原に戻り、食糧を手っ取り早く得る為に、トヨキは開拓村の川でもしていたように、銛で魚を突いて獲ることにした。
石の斧頭で叩き切った手近な細枝を、河原の大きめの石の割れた面で粗く削り、磨かれた面で仕上げ研ぎをして尖らせ、同じ石の鋭い縁で返しを削りこんで、銛を作った。
マサノリは焚火の周りに大きめの石を集めて、魚を効率よく炙れるように積んでいく。
積んだ後で表面に塗りつける泥は、石が急膨張して破裂するのを防ぐものだが、トヨキの指示で、川の傍の、あとで罠を仕掛けたい所の土を選んだ。
とはいえ、今日はシェルターで待ってる二人の処にさっさと戻って、早いところ魚を食わせてやる心算なので、まだ罠は実際には設けない。
マサノリは力仕事の他に、研げば鋭利な刃を出せそうなナイフ候補の石片を拾ったり、石斧にできそうな石を探したり、樹皮を剥いたり、鈍らな石斧の刃を研いだりと、多少の労苦が伴う事をあれこれ細々としている。
トモコは周囲で、エイコから教わったり自分で知っていた数種類の草を摘んだり、生で食べられる芽を少し摘んだり、蔓を集める。
漁を一人ですることになったトヨキは、川に入って行くと魚影を探して、暫く観察する。
やがて、幾つかのポイントの見当をつけると、大きめの魚に狙いをつけ、勢いよく一気に銛をブチ込んで仕留める。
獲った魚をトモコに渡すと、ナイフで切り開いて銛を回収してくれるので、また別の魚を獲りに行く。
獲れた魚はトモコがナイフと小枝でさばいて頭とワタを除き、炙って調理した。
三人とも腹が減ってるので、すぐに充分に炙ってから食べた。
更にポイントを変えて仕留めて来て、炙ってから、マサノリが剥いだ樹皮にトモコが集めた蔓で持ち手を付け、即席で作った手提げ容器に草を敷いて容れた。
まだ腹が空いてるので、更に獲ると、さっきのは炙り直して食ってしまい、新たな方を炙って器に容れた。
そしてまだ食べたかったので、もう一度同じことをした。
今日の処はその辺にしておいて、さっさと後片付けをすると、帰路に就く。
途中の休憩を減らしての帰り道では、手にした熾火で、魚に付こうとする蠅を追い払いながら歩いた。
まともに食べて力が湧いたので、帰りは往路より早く戻れた。
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ぼくは火を看つつ、薪が熾火で安定してるので、すぐに外へ出て、近くの葉の上の奇麗な水滴を、それがまだ蒸発して消えてしまわない朝のうちに、別の曲げた葉に集めて持って行き、エイコの喉を少し潤しておいた。
「エイコ、ちょっとだけど、水だよ」
「え……、ああ、水……ありがとう……」
幸いにもエイコの腹痛は収まっていた。
それでもまだ具合が悪くて辛そうなエイコを撫でてやりながら、ぼくも辛くて横になっていた。
言葉少なにのんびり待っているうちに、時々火が消えそうになったり、逆に勢いが強まって炎が立ちそうになり、その度にダルい身体を起こすのが億劫で、寝たまま腕を伸ばして薪を調整していた。
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悪かった体調が少しずつ治まったエイコがうつらうつらして、高く上ったお日様が雲の晴れ間から地を照らす頃、やっと出かけた三人が帰って来た。
「おう! 帰ったぞお!」
「……あー、おかえりぃ……ふぁあぁ~……」
「……おかえり~……」
「エコ、調子はどう?」
三人が獲って焼いて来てくれた魚を、熾火を少し強くして炙り直して貰い、エイコと二人で食べた。
指迄舐めたい美味しさであったが、汚れたまま洗えていないのでしなかった。
そうして栄養をつけてずっと休めたお蔭で、夕方になる頃には、熱っぽさや疲労、痛み、くしゃみ鼻水鼻詰まりも大分治まって、かなりマシな具合になっていた。
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三人はもう一度、今度は下流へ出かけていったが、昨日最初に渡った橋に行きつく迄の間、流れはずっと狭く激しく、川岸は切り立ち、魚を手に入れるのは難しいと分かった。
ただ、橋の傍、ほんの少し下流の処に段々があって、そこを降りると川辺に近づけるようになっていた。
流れに勢いがあって少し危ないものの、水を得られる。
帰る途中で、玄武岩らしき大きな平面を持つ石を見つけて、マサノリが抱きかかえて持ち帰って来てくれたので、喜んだぼくは、鈍らな石斧頭を研ぎ始めた。
暗くなってしまう前に一度、トヨマサ二人が薪と柴を刈りに行って、それで二日目は日が暮れた。
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夜の間、トヨマサぼくの三人で交代しながら、火をみた。
するうちに、いつしか冷えが忍び寄って来たと思ったら、頭上から雪が降りこんできた。
「え……? ……っ! おいっ! 雪だ!」
驚いて皆を起こすと立ち上がり、すぐに頭上の草を引き寄せて塞いだ。
そのままでは、手を離したら、また草は元に戻ってしまう。
急いで草の葉を毟り取って貰い、草同士重ねて爪先で中心を切り、通した葉で強くきゅっと巻き締めて留めた。
それで上手く頭上で草同士を繋げられたので、次々に葉を毟っては繋いだ。
頭上に腕を上げての作業で、疲れた。
余裕のない急場凌ぎの作業だったので、草の葉の縁で手指に切り傷も作ったが、頭上の穴はすっかり塞ぐことができた。
それでも少しずつ雪は入り込んできて、火を強めにしないといけなくなった。
入って来た雪で草を湿らせて防炎に使えるにしても、気温変化で火の管理が難しくなって、火の番は気を抜けなかった。
拙作をお読み頂き、真に有難うございます。




