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天の川

・蝉時雨聞こえぬ怖いババの家

  お盆時期になると毎年親と祖母の家に帰省してました。

  田舎の古い家だったため、なぜか怖いという感覚があった時もありました。

  おもてでは、蝉がうるさく鳴いているというのに、そんなときに限って聞こえなくなったものでした。


・隙間風集う囲炉裏がババの家

 「ストーブよりもあったかいね」

  そんなことはないのだろうが、旦那がそっとつぶやいた。

 「ストーブのほうがあったかいよ」

 「いや、こうやってみんなで集まって話をしている。

  そんな状況も含めてあったかいってことさ」


・秋時雨古びた写真ババの家

 「これはね、ジジの宝物が入った箱なんだよ」

  母がそっと私に一つの箱を渡してきた。

 「これは……写真?」

  写っていたのはかわいらしい赤ちゃんの写真だった。

 「あんたの写真だよ。ずっとしまっていたものだよ

  結婚式の写真もある。ほら、これなんてあの時の……」


  私は父のことが大嫌いだった。

  何を頼んでも『仕事だから』で片づけられていた小学校時代。

  何かと頼みたいことがあっても『仕事』でいなかった父。

  孫と帰省しても『仕事』があるからと孫と遊ばなかった父。

  でも、子供はジジのことが好きだったらしい。

 「今年もババの家行きたい、ジジと遊びたい!」

  そんなことを言われ、帰省しようとしていた時

  母からの電話で父の危篤を知った。

  それからはあっという間だった。

  私が病院へ行き、父の顔を見たときもう長くないことはわかった。

 「ジジ、おきてー」

  子供が父に話しかける。

 「そうだな……もう仕事もないしゆっくり遊べるな」

  孫の顔を見て笑いそうになった時……息を引き取った。


  外は少しだけ雨が降っている。

  もっと早く父のことを知っていたなら晴れてたのかもと思った。

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