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マデロさんと回復技。
マデロさんはホメオパシーを信じている。
これは毒や病気の原因を薄めて飲めば、耐性がつき、毒や病気そのものを治すことができるという治療法だ。
で、どのくらい薄めるかというと十の六十乗倍に薄める。
たぶん分子一つ分も残ってないよ、マデロさん。
実際、毒を少量ずつ摂取して毒に耐性をつける修行をした忍者な僕から言わせてもらうと、十の六十乗倍は薄め過ぎである。それだけ薄めればプルトニウムだって害にはならないだろう。
でも、マデロさんは信じているのだ。マデロさんは僕がダンジョンでかすり傷を負うと、その希釈液を一滴垂らした角砂糖をくれる。
角砂糖を頬張る僕をマデロさんは期待に満ちた目で見つめてくれる。
「うわあ、元気になった! すごいよ、マデロさん!」
僕の過剰な賛辞に、マデロさんは嬉し恥ずかしといった様子で頬を掻く。
……まあ、病は気からとも言うしね。