マデロさんとダンジョン。
ダンジョンに入るには現代とは違う時代を生きた〈転生者〉と一緒でなければならないことは前に述べたのだけど、最大の理由は別にある。
転生術士というのは歴史上の人物を現代に転生させることができるが、それ以外は普通の中高生である。
ダンジョンでモンスターと戦うのはもっぱら〈転生者〉たちの仕事だ。というのも、〈転生者〉はこっちの世界に転生するにあたって、特殊能力を身につけているのだ。炎を操るとか、幻の軍隊で戦うとか、天使になるとか。
ご都合主義!
そんなわけでダンジョンで戦闘になったら、転生術士のすることは後ろの安全なところから応援するくらいしかない。
ただ、みんながみんなそうだというわけではない。
他ならぬ僕がそうだ。なんたってマデロさんの特技は農場経営と降霊術である。バトル向きではない。降霊術のほうもこっくりさんに毛が生えた程度で戦闘での支援もできない。
だから、ダンジョンで戦うのは忍者な僕の仕事である。マデロさんは小さなこぶしをきゅっと固めて胸の前にひきつけて「がんばれー、がんばれー」と応援してくれる。
知ってますか? 背中に美少女のエールを得た忍者はどこまでも頑張れるものなんですよ。