マデロさんとゆかいな仲間たち。
ダンジョンがあるところには冒険者が集まってわいわいする酒場がある。
僕らは未成年なのでわいわいする酒場の代替品としてわいわいする学生会館がある。学園の部活や同好会が集まっている建物で外観内観ともに近未来風でシャープでかっこいい。
ただ近未来風のかっこいい見た目を重視して建築基準法をダース単位で破っていると噂で、震度三の地震でも肝が冷えるほどぐらぐらする。学生たちのあいだでの通称は『ジェンガ』。
学生がいるということはそこには〈転生者〉もいる。ジョージ・ワシントン(♂)が両刃の斧を肩に担って「桜切りに行こうぜ!」とリチャード獅子心王(♀)を誘い、ソクラテスさん(♀)が生徒会所有の業務用印刷機を勝手に使って二人の美少年があんなことやこんなことをする同人誌をせっせと刷っている。レクリエーション・ルームでは源頼朝(♂)とアウグストゥス(♂)とマキャベリさん(♀)が麻雀のメンツを探していて、諸葛亮(♂)を三顧の礼で誘ったが「自動麻雀卓を買ってから出直してくれ」とつれない返事をされていた。
ちなみに(♂)(♀)とは魔改造の有無、もとい、性別を表す。『ジェンガ』において見る限り、現代社会は確実に歴史上の人物たちを僕らと同じ次元に引きずり下ろしつつある。
「あの陣太郎さん」
「ん?」
「ちょっと知り合いに挨拶してきますね」
「うん、分かった」
このなかでマデロさんと仲がいいのはマキャベリさんと諸葛亮である。マデロさんがいうには彼らはまったり仲間なのだそうだ。マキャベリさんは『目的のためには手段を選ばなくてもいい』というようなことを有名な著作で書いたらしいが、本当はまったりのんびりするのが好きな楽天家である。マキャベリさんが言うには『(目的のためには手段を選ばなくてもいいといきがる暴君を倒す)目的のためには手段を選ばなくてもいい』というニュアンスで書いたらしい。そういうことなら、世のマキャベリストのほとんどはマキャベリさんにとって打倒対象だ。
諸葛亮はごぞんじ三国志の名軍師だ。劉備玄徳が三回訪れて軍師になってくれと頼んで軍師になったらしいが、実際の彼は三回だろうが三百回だろうが頼まれても軍師になんかなりたくないし、麻雀牌も自分で並べるのがめんどくさいから気が乗らない、究極の面倒くさがりである。マデロさんやマキャベリさんとつるんでいるのは面倒くさがりとまったりのあいだには通じるところがあるからだ。ちなみに諸葛亮の特技は変な四文字熟語を知り合いのために考えることで、僕とマデロさんがもらったのは『摩足掘梱』。他にもいろいろ考えたらしい。




