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第四章 上 探索

「おーい、薪結構集めたぞー」


俺の声が夜を迎えた森に響き渡る。

・・・・別に俺は夜の森で意味もなく薪を拾っている訳ではない。焚き火をしないと、低体温病で死んでしまうからである。

じゃあなんで森になんか居るんだよと思うが、それは昨日のことまで遡る必要がある。

・・・・・・あぁなんで俺愚痴をこぼすように、こんなこと考えてるんだろう、





アスペル地区の街に歩く二人の男女がいた。

一人は先程モンスターともう一人に魔法の詠唱を行ってた十代半ば程の少女、名をセリア・リ・スカーレットという。そしてもう一人、前者の少女セリアに魔法でビビらされて、完全に縮こまってセリアの後ろに付いていってる二十代程の男がいた。まあ俺こと(たちばな) 一機(はじき)なのだが・・・・・

俺は完全にビビっている。心の中でよく分からないナレーションをするくらいに。でも少し煽った程度で、モンスターですらドロドロに溶かした魔法を俺に行使しようとしてきたのだ!セリアはもう少し包容力というのを学んだ方がいいと思うんだが!


「ねぇ、今心の中で良くないこと考えてたでしょう?」


セリアが真顔で言ってくる。


「お、おいおいそれはちょっと自意識過じゃねーの。」


威勢を張ってみたものの、完全にセリアの言ってることが図星だったので声が上ずっちまった。


「そ、そんなことよりもこの通りは小物を売ってる店が多いな。」


ここはさっさと話題をそらした方が賢明だろう。


「ええ、ここの一角は商店街でこの街の物は殆ど揃っているわ。」


確かに少し歩けば、食料を扱う店などが増えたりだとか、物に困ることは無さそうだ。

するとセリアが


「見えてきたわよ、あれが今日の宿よ。」


と、前方の豪華な建物を指差して言ってくる。


「お前ちゃんと金持ってんの?旅って言ったらもっと質素な宿をイメージしてたんだけだな、」


「別にお金には困ってないわよ。お父様に旅に出る前に、パパお小遣い頂戴って言ったら五十万くらい持たせてくれたわ。」


それは旅と言えるのか。と俺のツッコミを無視して歩いていく。

俺も必死に付いていくが、途中で興味深い店を見つけた。店先に武器があるので、武器屋だろうが、なにせ俺は異世界に来てから見る初めての武器だった。


「俺あの店の中見ていきたいから、先にチェックインしといてくれ。」


「まあ、見るくらいなら好きにしていいわよ。」


俺はセリアと別れて、店の中ヘ入る。

ギィィ、と扉を開けて中に入るとそこは、壁を覆いつくさんばかりの武器が飾られている。店自体は木で出来た歴史を感じる作りだが、置いてあるのが武器なので、かなり違和感のある雰囲気だ。


「へぇ、これがこの世界の剣なのか、」


勿論漫画とかで見る日本刀の方が切れ味は良さそうだが、初めて見る剣に俺は感動していた。


「ふぅ、」


十分程武器屋を堪能した俺はセリアと合流しようと、宿へ向かう。

そこへ


「なあ姉ちゃん。今暇だろ?俺達と遊ぼうぜ!」


典型的な異世界のチンピラが碧髪の若い女性に絡んでいる。チンピラが面倒なのか周りの人たちも、見て見ぬふりをしているようだ。近くに警察もいないようだし、俺はそのチンピラたちに近づく。


「俺達今暇なんだよ。だから何時間でも遊べるぜ、なあ?」


「ええ、兄貴の言う通りですぜ!金ならあるからよ!」


「ぃ、ぃぇ。そういうことでなく・・・」


「なに?声がちっちゃくて聞こえ・・・てめえ!何しやがる?」


俺は二人のチンピラの襟を不意打ちで掴みあげた。


「ほらほらお姉さん困ってるだろ?強引すぎる男は嫌われるぞ?」


俺はチンピラ達を道の真ん中へ引きずり出す。異世界アニメは見まくっているので、この手のチンピラのあしらいかたは、熟知している。

俺に引きずり出されたチンピラは落ち着いたのか、体勢を整えて俺の胸ぐらを掴みあげた。


「おい、てめえ舐めてるとぶん殴るぞ?」


とドスの効いた声で脅してくる。

ふんッ、と鼻で笑ってやったが、これマジで怖ええ!チビりそうなんだけど!


「こいつ俺らのこと舐めてますよ!ええい!兄貴、やっちゃってください!」


チンピラが拳を振り上げるのを確認して、俺は大きく息を吸い込み、


『暴力反対!』


と大声で叫んだ。

流石に予想外だったのか、警察が来ることを恐れたのか、チンピラ達は走って逃げていった。

・・・小心者のチンピラで助かったぜ。


「あ、あの」


後ろから声がしたので、振り向いたら先程絡まれていた女性が立っていた。

その女性を見て俺は驚愕した。


「なっ!」


別にその女性がエイリアンだったとかではなく、めちゃくちゃ美人だった。


「ありがとうございます。私、あういう押しの強い人が苦手で、」


「いえいえ、お気になさらず。俺も偶々通りかかっただけですから。」


すごい堅苦しくなってしまったが、その女性は再びありがとうございました、とお辞儀をして去っていった。

しかしそれにしても美人だった、怖い思いしてまで助けた甲斐があった・・・・あっ!

俺はとんでもないことを思い出した。

・・・・あの人の名前聞いてねぇ!


「セリアと合流するか、」


今日は災難な日だったが、宿に入れば、ゆっくり出来るだろう。




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