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第三章 門出

「行ってやっしゃいませ~!」


顔立ちの整った、それでいて胸が大きなメイドさんたちが俺達の旅の安全を祈りながら見送ってくれる。

普段ならはしゃぐところなのに、こんなにも気乗りしないのは、この女、セリアの先程の発言だろう。

(眷族と戦う技術を身に付けるのよ、)

ふざけんな!俺は人間だぞ?戦闘力は53万もねえし、武器の扱いに長けてる訳でもねえんだぞ!

俺に戦わせるより、一人で戦った方が絶対生き残れるだろ、そう言ってやりたい。でも


「それにしても、よくもまああそこまで粘ったわね。」


セリアが愚痴るように言った。


「仕方ねぇだろ。俺はいきなり召喚されたと思ったら、モンスターと戦えと言われてるんだぞ?あれくらいですんでむしろ感謝して欲しいくらいだろ。」


「清々しいまでに、恩着せがましく接してくるわね。」


セリアが呆れたように言ってくる。


「俺は無駄死にはしたくないんだよ、だから屋敷に戻ろ?な?」


諭すように俺は言う


「なんで私が悪いみたいになってんのよ!

別に一緒に努力すれば、無駄死になんてしないわよ。」


「そんな努力・友情・勝利みたいなものに俺がつられると思うなよ?俺は少年じゃないんだよ」


そういうのは、漫画だから良いのであって、実際に言われるとただリアクションに困るだけなのでやめて欲しい・・・


「そういえば、モンスターとやらについて、詳しく教えてくんね?」


これ以上言い争っていても、気まずくなるだけなので、話をそらそう、


「お父様が説明してたじゃない、」


「こう、もっと詳しくだよ。」


適当に頷くんじゃなかったと後悔する俺にセリアは語りかける。


「まず、この世界には魔力が満ち溢れているわ。そして、この世界の全ての生物はその魔力を吸収して体内に保有するわ。ここまでは分かる?」


さすがにそれを理解できないほど、俺もバカじゃない。

俺は頷く、


「続けるわよ。我々は体内に保有されている魔力を以て魔法を行使するわ。そして魔力には属性が存在するの。でも、属性自体は単純よ。火属性の魔力では爆発や着火の魔力を行使出来るわ。他の属性も似たようなものよ。きゃんゆーあんだすたんど?」


なんで、異世界人が英語を使えるんだよ、とかいろいろツッコミたいところがあったが、堪えよう。

そういえば、今さら思ったけど異世界で日本語が通じるってなんか不自然だな。


「どうしたの?黙っちゃって、

・・・もしかして理解できなかった?」


「い、いや大丈夫。続けてくれ。」


俺は雑念を追い払うように、頭を振ると、続けるように促した。


「お父様がモンスターは空気中の魔力が集まって生命体を形づくるって言ってたわよね?その説明に少し訂正を入れるわ。モンスターは空気中の同じ属性の魔力が集まって生命体を形づくるわ。だからその結果できたモンスターにも属性があるわ。」


分かる?と目で言ってくる。


「続けて続けて、」


「そして魔力の属性には相性があるのよ。火属性は水属性に弱く、水属性は木属性に弱い、そして木属性は火属性に弱いわ。後は、神聖属性はゾンビやアンデットに強いわね。」


なるほど、ポ○モンみたいなものか、


「他に属性はないのか?」


「魔法の属性はそれだけよ。」


「なんか含みのある言い方だな、」


「ええ、魔術には魔法以外にもう二つ種類があるわ。」


魔術と魔法の違いって何だよ。

・・・まあいいか、


「で、もう二種類って何だよ。」


「物質の性質そのものを変化させる錬金術と体の一部や武器に魔力を纏って戦う魔術拳刀術よ。」


「その三種類を組み合わせて、戦うって出来ないのか?」


「無理ね。魔法を使える人は、錬金術は使えないのよ。全ての生命体はどれかを扱えるけど、これは生まれつきだから受け入れなさい。」


誰でもどれかは、使えるってことか、


「俺はどれを扱えるんだ?」


ぶっちゃけ魔術に憧れがないと言えば嘘になる、


「私にはまだ分からないわ。いずれ唐突だけど扱えるようになるわ。いずれね。」


いづれを強調すんな・・・いづれを、

そこに、


「キャャャャァァァァ!」


甲高い声が聞こえた。強盗にでも遭ったのだろうか。


「なっ!何事!」


セリアはこういう非常事態に遭遇したことがなかったのだろうか。挙動不審っているのが分かる。


「あ、あんた!貴族に求められるものは冷静さであってよ!」


・・・こいつこんな口調じゃなかっただろ、


「おい!モタモタすんな!助けに行くぞ!」


普段なら怖いから見捨てるところだか、ここは異世界。何かイベントが起こっても、おかしくない!

俺は走り出した。それこそ今までの人生で一番全速力だと言えるほどに、






現場にたどり着いた俺は戦慄した。そこにいたのは、体長は裕に三メートルを超える巨体に、どんな物でも切り裂けそうな鋭利な蹄を持った生物だった。

俺はすぐに先程セリアが言っていた、モンスターだと理解したが、助けに行こうにも、あの巨体を前に足がピクリとも動かない。

そんなふうに棒立ちの俺の後ろから、まるで何かを唱えるかのような言葉を発していたセリアが


「任せて! 『アシード・ランス』!」


それは俺がこの世界に来て一番最初に見た魔法だった。

セリアが魔法を唱えると同時にセリアの手のひらに魔方陣のようなものが現れ、そこから液体がモンスターに噴射された、


「グォォォォォォォォォ!」


その攻撃はモンスターにとって大打撃だったのだろう。たちまちモンスターの体は崩れ落ちた。


「これが魔法か・・・・」

「でもグロッ!」


酸のようなものによる攻撃だったのだろう。

そのモンスターは体がスクランブルエッグのようにグチャグチャになりながら、溶けていった。


「・・・・お前・・・まともな魔法が使えたんだな、」


俺の呟きに、


「おっと!功労者に対して随分と失礼な発言をするじゃないか?そこに直れ!お前にも同じ魔法を掛けてやる!」


と、かなりマジな顔で言ってきた。


俺はすぐさま


「俺の聖剣エクスカリバーはまだ未使用なんです。このまま死にたく無いです。ほんと、マジすいまっせん!だから詠唱するのやめて!」


土下座に移行した。

どうやら今のでお互いの力関係が完全に決まってしまったようだ。

こんな世知辛い世の中に俺は


「クソッたれえええええええ!」


と叫ぶしかなかった。






この世界は簡単には攻略させてはくれないらしい。



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