第二章 召喚
「エっ?ナニコレ?」
それが俺が異世界に来てから最初の言葉だった。
「ようやく、ようやくこれで…」
俺の正面にいる少女が憧れの人を見たようなキラキラした目で一機を見ている。
勿論、自分は人から憧れを抱かれるようなことはした記憶が無いのだが。
その少女は背の真ん中程までさげられた金髪に宝石のように澄んだ丸っこい目をしていて、メイド服に身を包んでいてメガネに獣耳という、まぁ正直どこを見ればいいのか分からない服装だが、端整な顔でさぞやモテそうである。
「眷族召喚成功!」
「 ・・・はぁ?」
少女の意味不明な発言に俺は唖然とするしかなかった。
「お茶です。」
小間つかいだろうか。年若い女性がお茶(と言っているからお茶だろう)を出してくれた。
「あっ、いえおきずかいなく」
「かしこまりました」
・・・本当に持っていきやがったやってたよ。この世界には社交辞令というものは存在しないのだろうか。
「そろそろ良いかしら?」
先程の少女が口を開いた。
もうすでに、小間つかいの人たちは退室していて、今この部屋にいるのは、俺と少女と少女の父親だろうか、えらく高そうなタキシードに身を包んでいる初老の男のみだ。
まぁこれ以上静寂が続いても、気まずくておかしくなりそうだったので、俺は頷いた。
「そう、じゃあ言葉が通じそうだし幾つか質問させてもらうわね。」
この女なんて失礼な奴だ。俺は正真正銘人だから言葉は通じるだろ。
「まず最初に、あなたはなぜ今此処にいるか分かる?」
ここは知らないと言うのがセオリーだろう。
俺は首をふった。
「そう、では単刀直入に言うわ。
あなたは眷族、要は私の部下として南方から転移されたわ。」
なるほど、あの少女は本来自分の部下として眷族を南方と呼ばれる地方から召喚するはずだったが、なぜか異世界から俺が召喚されてしまったといったところだろうか。
「ちがぁぁぁあう!」
少女がビクンッと震えた、
「俺が望んでいたのはこんなんじゃなぁぁい!
全然フラグ回収出来てねぇよ!俺は眷族を召喚したいと言ったのであって召喚されたいとは言ってねぇだろ!これじゃあ俺の雇い主が会社の社長からよくわかんねぇ女に切り替わっただけじゃん!正直ニートで親戚の子供に姉弟でバカにされる方がまだましだよ!」
「なるほど、」
ひとしきり叫び終えた俺はセリアと呼ばれた少女にこの世界についていろいろ聞いていた。
少女の名前は セリア・リ・スカーレットという名前らしい。
ちなみにさっきのおっさんの名前はルーズ・リ・スカーレットでセリアの父親らしい。
そして、俺が今いるアスペル地方を治め、代々王家に仕えてきたのがセリアとルーズの家、大貴族スカーレット家だそうだ。
「………俺が今どんなに偉い人と話しているのかが分かったが、どうしても分からないことがあるんだがいいか?」
「えぇ、良いわよ。私のプライベート以外なら答えてあげるわ。」
「じゃあお構い無く。
俺がいくら頑張っても、眷族にたどり着けないんだけど、」
「あら、あなた頭が悪そうだから、気を使ってあげたのよ?」
この女あとでシメよう。
俺がそう考えていると
「では、ここは私が説明しよう」
さっきから一言も話さなかったおっさんが説明しだした。
「この世界には魔力が満ちていて、どんな人でも体に魔力を溜めている。その魔力を使って我々魔術師は魔法を行使するわけだが、同じ属性の魔力はお互いに引かれ合って、生命体を形作る。我々はそれをモンスターと呼称している。なので当然、モンスターは街中にも発生する。よって領地を治める者は眷族を召喚して、戦うことで街の治安を守ってきた。つまり、眷族を召喚することが出来なければ、貴族として一人前と見られないのだ。」
「分かった?」
セリアが聞いてきたが、ここで分からないと言うのは恥ずかしいのでとりあえず頷いとこ。
「そう、分かったのなら早速出発ね。」
・・・えっ?
「出発ったてどこに?」
「決まってるでしょ。一人前に成るための修行よ。旅をして眷族と一緒に戦う技術を身に付けるのよ。」
「はぁぁぁぁぁぁ!?」
そんな訳で、この先のことも知らないまま、俺の異世界攻略記が始まった。