~I~ マサキが言ったんだ2
マサキが、お互いのために頑張れ、って言ったんだ。
こんな練習早く終らせたほうが、俺にもお前らにも良いことしかない、皆で知恵を出しあって工夫しろって。
毎日毎日、夕方になると同じことの繰り返し。5分以内に全員が達成しないと終わらない。
はじめは皆できなかった。初日なんて、平均して10分以上かかった。そのときには希望なんて全くなかった。ほんとに可能なのかよ、って皆の顔に書いてあった。
その空気を察してか、先輩全員で手本をみせてくれた。見事に4分30秒で完了した。しかも少し余裕そうな顔で。
おかげさまで、俺たちだってやればできるはずだって思えるようになったんだ。
でもやっぱり、すぐには、できるようにはならないんだ。結局半月くらいかかったかな。
正直、十日ほど経った頃から、達成する人がだんだん増えていったんだけど、やっぱり詰めが甘くて駄目だったんだ。
個人技だし、そういうときって人柄が出るよね。僕は平均的だったんだけど、周りの人を軽く観るくらいのことはできたから知ってるよ。
必死そうな顔で遅い人、ほとんど無表情で早い人、嫌気が全面に出ている人、今にも泣き出したいのを堪えている人とかね。
数ヵ月後には、先輩達と競えるくらいまでになったんだけどね。あと、片目を瞑ったままする人が増えたかな。