其の一 第10話
「「「「「うぇぇえぇえええーっ!?!?」」」」」
皆の驚き混ざる悲鳴が、一斉に空間へと放たれる。
その後……一番に我を取り戻したセリカが、ドラゴンに大きな声で物申す。……フェンを盾にしながら。
「チョッと、何してくれちゃっているのよ!? イルミネート・ストーンが、バラバラに粉砕しちゃっているじゃないの!?!?」
先程まで、地面から力強く輝き生えていたイルミネート・ストーンの現在は……そこら辺のライトストーンと見分けが付かないくらいに、無残な姿に変貌を遂げている。
地面に輝き転がる石ころを視界に映す度に、セリカの怒りは増していく。
「どうしてくれるの!? 絶対に、価値が下がっているじゃないっ!?」
再びセリカは、怒りの言葉を放つが……ドラゴンは『グゥオオオオー?』と、若干首を傾げて困っている。
こんな光景を見た皆は、『ドラゴンにも感情はあるんだな』っと、内心で感じていた。
と、
セリカは、フェンの身体から両手をパッと離して、ドラゴンの足下に一人駆け向かっていく。
この行動を目前にしたフェンから、咄嗟に声が漏れだす。
「お、おい!? ちょっ、お前……どこ行くんだよっ!?」
刹那、セリカは前を向いて脚を動かしながら口を開く。
「自分の剣を取りに戻っているのよ!」
そう言い終えるなりセリカは……腰を曲げて、先ほど地面に放り投げてしまった黄金の剣を拾い上げる。
同時に、
「さあ、巨大なトカゲ……どっからでも掛かってきなさい! 私は、世界一の遊び人になる女!! 先ほどの恨み、キッチリ晴らしてやるわっ!!」
大声で叫びながら、黄金の剣をブンブン振り回しはじめた。
そんな行動を見ながらネルスは、隣にいるアネータへと訊ねる。
「なぁ……世界一とかなんか言ってるけど。遊び人という職業は、確か……最弱職じゃなかったか?」
「そ、そうですよ。遊び人は、最弱職ですが……?」
セリカに悪いと思ったのか、アネータは少々に躊躇いながら返答した。
そんな会話がされている中、セリカは懸命に剣を振り回す。
しかし……全てドラゴンの硬い鱗や爪で、攻撃は跳ね返されている。その前に、剣の平らな部分が当たるばかりで、攻撃の要な刃が一切もって当たっていない。
そうとは露知らずに、セリカは剣を精一杯の力で振り回しながら呟く。
「な、なんで!? どうしてっ!? 全く攻撃が効いていない!?!?」
ちょこまか足元で動くセリカを鬱陶しいと思ったのか、ドラゴンは大きく鋭い牙を見せつけながら咆哮を発しはじめる。
『――ヴォォオオオォォオオッ!!!!』
瞬間にセリカは、何を閃いたのか……突然に地面の石を幾つか拾ってニヤケた。
と、
「これでも喰らえぇぇええええーっ!! おりゃぁああぁああああーっ!!!!」
セリカは目を光らせて、大きく開いたドラゴンの口内を目掛け、手にした石ころを勢いよく投げ飛ばした。
……のだが、
石は、ドラゴンの口がある高さまで昇って行くことなく……地面へと戻ってきた。
刹那、セリカは目をパチクリとさせて呟く。
「ご、ゴメンネ……トカゲちゃん。今のは攻撃とかじゃないの。アレよ、触れ合いよ? だから、敵意とかは全くないの……」
もう勝てないと確信したセリカは、額に脂汗を滲ませながら謝罪をすると……ネルス達がいる後方を振り返って、懸命に走りはじめた。
同時に……逃さまいとドラゴンは、大きな口から咆哮を発する。
『――ヴォォオオオォォオオッ!!!!』
逃げる背後に咆哮が聴こえたセリカは、涙目を見開きながら叫ぶ。
「怒ってる! トカゲ物凄く怒ってる!? 今までの中で、一番大きい咆哮なんですけれどっ!?」




