其の一 第9話
「ね、ねぇ……結構ヤバくない? なんか、ドラゴン……物凄く怒ってない?!」
雄叫びが響いている中……ペリシアは、頭に生えた獣耳を抑えながら呟いた。
そんな呟きが聴こえたネルスは、すぐさま言う。
「あぁ……コレはとても、ヤバイ! 早く、引き返すぞっ!!」
と、
「ねぇ、皆んなっ、何をしているの!? 手伝って! イルミネート・ストーンを斬り倒したりするのを手伝って!!」
お金に目が眩んだセリカが、大声で叫んで……引き返そうとする皆を引き止めた。
刹那……皆は軽く脚を止めて、セリカへ訴えかける。
「そんなモノ、今はどうでも良いだろう!?」
初めに、ネルスが声を荒げて言った。
「ドラゴンが、怒っているんですよ!? 早く、この場を離れましょうよ!!」
続いて……アネータが、不安めいた表情を浮かべ、口を大きく動かした。
「おい、早くしないと置いていくぞっ!?」
フェンが、声を荒げて言葉を発した。
「本当に、早くしな――」
「私だって、逃げたいわよっ!!」
ペリシアが口を開くなり……セリカは、声を大にして、皆へ弱音のような言葉を伝えた。
その言葉を聞いたネルスは、再び唇を開いて言う。
「じゃあ、何故……早く逃げようとしないんだ!?」
「仲間……。仲間のためよ!!」
セリカが、少しばかり頬を赤らめて……恥ずかしそうに言い切った。
「仲間のため……?」
ネルスは一瞬、首を傾げて疑問を浮かべた。その後、すぐに追求をはじめる。
「どういう意味だ……??」
「なにっ、伝わらなかったの!? バカなの!? 理解力が無い、バカなのっ!?」
セリカは口悪く言い返しながらも、渋々に説明を開始する。
「仲間が、村の税金を全て使ってしまった罪で、監獄島に囚われているのよ! だからダメ元でも、使ってしまった金額を稼いで……村へ返還して、罪を許してもらおうとしているの!! 分かった!? コレで、理解したでしょ!?」
セリカが堂々と言い終え、口を閉じるなり……ネルスがボソリと、誰にも聞こえない声量で呟く。
「このパーティメンバーで、最もヤバい奴は、セリカだと思っていだが……更に上をいく者が、存在していたのか」
と、
『――ヴォォオオオォォオオッ!!』
ドラゴンが……薄水色に煌めく氷彫刻のような身体を起こし、ゴツゴツとして硬そうな翼を大きく広げながら、駆け向かってきた。
「うわぁぁああぁああああー!? なんか私の方に、向かって来ているんですけれど!?!?」
セリカは剣を放り投げて、叫び逃げるなり……ふっと視界に映ったフェンを盾にして、自身の身を守りはじめる。
「ちょっ、おい!? やめろ!! オレの身体から、手を離せっ!?」
フェンは全力で抵抗するが……セリカは、それを許さまいと、徐々に力を強めていく。
そんなこんなしていたら、
――バキリッ!!
ドラゴンが皆の目前で、イルミネート・ストーンを粉々に噛み砕いた。




