其の一 第4話
「うん! さっさと入って、生態調査とやらを終わらせちゃいましょう!!」
セリカの返答を合図に、一同全員は……苔が目立つゴツゴツとした入口を潜り、薄暗い洞窟へと足を踏み入れた。
と、
「うおぉぉっおおぉっ!?」
フェンが突然に、叫び声を上げた。
震えおののく大声は、洞窟内で大きく反響して……皆の鼓膜に、何度も微かに響き渡る。
「洞窟に入るなり、どうしたのよ。うるさいわねぇ……」
セリカは眉間にシワを寄せて、迷惑そうに問い掛けた。
すると……フェンは頬を赤らめ、恥ずかしそうに答える。
「い、いや……。なんか、変な唸り声が聴こえてきた気がして」
「唸り声……?」
返された言葉に、セリカが首を傾げていたら……ネルスが洞窟の奥を凝視して、ポツリと呟く。
「唸り声……もしかして、あの噂は本当だったのか……??」
「あの噂……?」
独り言の様な呟きを耳にしたペリシアは、ネルスへと顔を向けて口を動かした。
続けてセリカも、ネルスへ向かって口を動かす。
「なになに、ねぇ、どんな噂っ!? もの凄く、気になるんですけれどっ!!」
「え? そんなに気になるか??」
向けられた視線へネルスが問うなり……セリカとペリシアから、『うんっ!』という元気な声が返ってきた。
「そうか、そんなに気なるのか。まぁ……別に、隠したりしなきゃならない話題でもないし、教えてやっても良いが……」
ネルスはボソリとそう言って、説明を開始する。
「噂っていうのは……この洞窟に、古から封印されているドラゴンの封印が解けてしまっているっと、いうもので……。俺は、その噂の真実を確かめる為に――」
と、
「ねぇ、チョッと待って!? アレは、ゴブリンの赤ちゃんじゃない!? もの凄く、可愛いんですけれどっ!!」
セリカが、説明をしているネルスの声に言葉を被せて……道の隅っこをヨチヨチと歩く魔物の赤ちゃんを指差し、大きな歓喜を上げた。
「えっ!? あんな不細工な顔をしている、ゴブリンの赤ちゃんを可愛いと思うとか、有り得ないぞ!?」
ペリシアも、説明そっちのけで……セリカの話題に食いついていく。
そんな光景を目前にネルスは、声を荒げて怒る。
「ちょっ……自分たちから説明を頼んどいて、酷くない!? なんか、俺の独り言みたいに、なっているんだけどっ!?!?」
瞬間に……ヤバイと思ったセリカは、平謝りをしながら唇を開く。
「ご、ゴメンね! でも、勘違いしないで欲しいわ!! シッカリと説明は、聞いていたから!! 内容はアレでしょ……!! 封印されていた、ゴブリンが目覚めたとか――」
「違うっ!! 話が混ざってる!!」
セリカの醜い言い訳が始まるなり、ネルスは全力で否定する。
そんな時だった。
『――ヴォォオオオォォオオッ!!』
洞窟奥から、明らかに強そうな感じな咆哮が響き渡ってきた。
刹那、セリカは目を見開きながら言う。
「も、もしかして……封印から目覚めたゴブリンの――……」
「だから……封印から目覚めたのは、ゴブリンじゃないからな!!」
セリカが緊張感満載に言葉を発するや否や、ネルスの鋭いツッコミが炸裂した。




