其の一 第1話
2章の幕間、その後すぐの物語です。
レクシムという町にある、葉巻の煙や食べ物の匂いが漂うギルド建物内で、突如にそれは響き渡る。
「うぁぁああああああんっ!?!? カナヤァァアアッアアーッ!!!!」
白銀髪な長髪を大きく揺らめかせる、セリカという少女は……軍服男と生まれ故郷の村長に囚われていくカナヤという青年の背中を見つめながら、グッと前のめりに叫んだ。
と、
「ほ、本当に……カナヤ、監獄島に連れて行かれちゃうの……?」
毛感触良さそうな二つの獣耳が頭頂に目立つ、ペリシアという幼女の様な女の子が……自身の足元を俯き見つめながら呟いた。
それっきりに、少し前まで怒号や笑い声が交差していた建物内は……まるで時が停止していっているのかと思えるぐらい、ジワジワと沈黙が濃くなっていく。
そんな中……綺麗な大人びた背中に、弓矢を背負うアネータという美しい女性が、少し頬を赤らめながらドバッと口を開く。
「あ、あのっ!! わ、私たちで……カナヤさんを救いませんかっ!? クエストでお金を稼いで、使ってしまった額をキッチリと村に返金したりして……」
「お、オレは賛成だっ!!」
アネータが声を発するや否、勇者などと崇められているフェンという名の少年が、目を見開かせ勢いよく首を縦に振った。
……アネータという美しい女性の前で、良い格好を見せ付けるために。
そんなフェンの外道な内心を知らないアネータは……色白な美しい顔いっぱいに笑みを浮かべて、感動のあまり唇を震わせ動かす。
「あ、私の意見に……賛成してくれるんですか……っ?!」
と、
「はいはいはいっ!! 私も賛成するわっ!!」
セリカが両手を天井高く上げて、自身の存在感をアピールしながら、唇を早口気味に開閉させた。
続いて、
「アタシだけを置いてきぼりにするなよっ!!」
ペリシアも声を張るなどして、自身の存在感を辺りへと知らしめる。
――こうして、囚われた仲間を救うべく決断した四人であったが……。
――――三日後。
「ねぇ……もっと効率よく、お金が稼げるクエストとかないのぉー??」
セリカが……クエスト内容が記された用紙が沢山に貼り出されている、ギルド内の掲示板を吟味しながら、やる気無さげにポツリと呟いた。
「そ、そんな事を言われてもなぁ……」
フェンは、困った態度をとりながらも……ブツブツと文句を口から漏らすセリカにへと、視線を向ける。
と、
「よぉ、稼げるクエストをお探しかい??」
突如……掲示板を吟味していたセリカたち四人の背後に、そんな言葉が寄せられた。
「だ、だれっ!?」
すぐさまペリシアは、獣耳や髪の毛を逆立て警戒しながら、声がした後方へ問い掛けて振り向く。
刹那、
「まぁ、そんな警戒しないでくれよ」
そう言って、悪戯めいた笑みを浮かべる……黒いローブに身を包んだ、白髪混じりな頭の怪しい中年男が、ペリシアの瞳に映る。
そんな男とペリシアが、少しばかり睨み合っていたら、
「ねぇ! 稼げるクエストが、あるの!?」
突如……セリカが、ローブを纏う男へと問い掛けた。




