4章 第38話
「よく分からないけど、試練を乗り越えたんだな!! 助かったんだなっ!? 早くこんな場所から、出てしまおうっ!!」
俺はそんな事を言いながら、出口な扉へと走り向かう。
瞬間、
「おいっ!? ちょっと待てっ!?!?」
慌て口調で呼び止めてくる男の声が……聴こえてきた。
……なんだ??
不意な呼び止めに疑問を感じながら、俺は扉の目前で立ち止まり……ガラス板内に浮かぶ男の方を振り返ってみる。
すると、
「なぜ、悩まない!? ワタシは、お前達が苦悩する様子を楽しみたいんだ!!」
……いや、知るか!?
俺は言葉を無視して、この部屋を出ようと再び脚を動かす。
と、
「おい待て、お前達の目的はなんだ!? アレだろ!? この国の宝、オーブだろうっ!? では、残り三つの試練を乗り越えれたならば……くれてやろうっ!!」
……もう命を賭けた試練は、懲り懲りなんだ!! 絶対にやらん!!
心中そんな事を思いながら……俺は一言の返答もせずに、出口扉を潜ろうとする。
「やる!!」
……え?
不意に、ドルチェの前向きな言葉が聴こえてきた。
刹那、
「そうか、試練を受けるのか!! 良いだろう。ワタシ……このイディオスを、存分に楽しませてくれるが良いっ!!」
……えっと、俺は受けるって言ってないから、帰っても良いんだよね??
そう感じながら俺は、扉を潜ろうと再び脚を動かす。
と、
『バタンッ!!』
通ろうとした瞬間に……目前で扉が勢い良く音を立てて、閉まってしまった。
……うおぃ!? 嘘だろっ!?!?
俺が絶望を感じていると、イディオスとかいう奴の声が聴こえてくる。
「では、新たな試練が待つ……舞台へと誘おう!!」
「いや、誘わなくて良いから……帰らせてくれっ!!」
俺が叫ぶように声を荒げていたら、突如……足元が大きく揺れ始めた。
「な、なんだっ!? じ、地震かっ!?!?」
あまりの揺れの強さに、俺が床に尻餅をついて腰を抜かしていると……アスモリが言う。
「いや、地震ではない……。昇降機が作動した事によって、発せられた揺れだ」
「……昇降機!? なんだよ、それ!?」
俺が思考を働かせながら質問すると、アスモリは再び口を動かして説明してくる。
「昇降機とは……建物の階層を楽して移動する為に、この国で造られたモノだ。足下の床が上下に動き、別階層へと一瞬で到着することができる」
……そうなのか。じゃあ今は、床が上へと向かって動いているから……上の階層に行っているのか。
俺が上昇機について、ある程度理解を深めていると……地震のような揺れが止まる。
瞬間、
「うわっ、なんだ此処!?」
突然にアスモリが叫び声を上げた。
……えっ!? 急にどうした!?!?
俺は少し驚きながら、周囲を見渡してみる。
そして、上昇機に運ばれて到着した場所は……細いロープぐらいしか足場の無い断崖絶壁だと分かった。
ロープで出来た細い道を歩いて、もしも足を踏み外してしまったら……底が見えない崖底に、真っ逆さまに落下してしまうのは確実。
アスモリが驚いていた理由が分かった。
……多分、次の試練は『綱渡り』とかなのだろうか??
俺が唖然としていると……不意にイディオス王の声が、何処からともなく響き渡ってくる。
「さぁ、お前らっ!! 次の試練は、綱渡りだっ!! 現在お前達が、足底を付けている所から……次の試練が待ち構えている扉の目前へと、到達する事が出来たならば……試練達成だっ!! さぁ……ワタシを楽しませてくれる事を、期待しているぞっ!!」
……うわぁ、帰りたい。
絶望感を抱いていると……ドルチェが呟くように、俺たちへ伝えてくる。
「ねぇ! 飛行するから、皆んなウチに掴まって!!」




