4章 第36話
――数分後。俺たちは、王宮の入口前に到着したのだが……。
「んね、ユンバラたち見つからなかったね……」
ドルチェは、残念そうに呟く。
俺は内心思った事を、敢えて口に出して言ってやる事にする。
「そりゃ、あんなに駆け走りながら人探しは無理だろうっ!?」
呟く感じで、声を発しようと思っていたのだが……思わずツッコミを入れる様に、言ってしまった。
俺は口を閉じるなり……此処に到着するまでの出来事を思い返して、人探しが可能だったのかを考えてみる。
…………。
……いや、無理。人探しが可能な瞬間は、無かったな。
一瞬で、そんな答えの元へと辿り着いた。
……いや、そんな事は無いよな!!
自身の辿り着いた答えに対し、多少の不安を抱いてしまった俺は、もう一度考えてみる事にする。
皆が走る中。俺一人だけでもユンバラたちを探そうと、王宮へ続く道を逸れたら……必ずドルチェが『どこ行くの?』とか言って、全力で引き止めてきた。
どんなに頑張って、探しに行こうとしても……やはりそれの連続で、『無理』だった。
……うん。辿り着いた答えは、間違っていなかったんだな。
冷静にそんな事を思っていると、ドルチェが開き直った感じで声を発する。
「しょうがないね! もう、ウチら四人だけで中へ入ろう!!」
……いや、探しに行くとかしないで……四人で侵入しちゃうの!?
俺がドルチェの発言に驚愕していたら、ユンバラが口を開く。
「良いな!! それじゃあ早速、侵入するか!!」
「了解シタ……」
ユンバラが言葉を終わらせるなり……メロは了承して、口に右手先を突っ込みはじめた。
……おい、急に何してるんだよ。視界の景色が、一気に汚れちまったよ。
目前で起こっている行動に、俺が嫌悪感を抱いていると、
「コレガ……王宮ノ、鍵ダ」
メロは右手を口内から出して……煌びやかとした真っ赤な小さい指輪を、俺たちへ自慢気に見せびらかしてきた。
……口から出したモノを、自慢気に見せてくるって……コイツの心、普通じゃないな。
と、
「ソレデハ……入ルト、シヨウ」
見せびらかすのをやめたメロは……王宮の入口扉へと近づいて、指輪を微かに見える窪みに翳す。
刹那、扉が勢いよく開いた。
「すごーい!! 中に入れるぅ!!」
扉が開くや否や、ドルチェは興奮した様子で王宮内に駆け入った。
「おい、先に行くなよ!!」
ドルチェを少し叱りながら、俺もスグに王宮内へ侵入する。
王宮の内装は、硬そうな金属壁で覆われており……上層へと続く階段や、建物内部を明るく照らすランプが、幾つも確認できる。
続いて、アスモリとメロも中へと足を踏み入れてきた。
瞬間……入口扉が、勢いよく独りでに閉まる。
そんな事は御構い無しに、ドルチェは……たくさん確認出来る階段の中から一つ道を選んで、又も一人先に上っていく。
「おい待てよっ!!」
俺は多少に声を荒げながら、ドルチェを追い掛けた。
すると、
「何をしているんだ!? 何にも確認せずに、道を選んだら!?!?」
アスモリが、大いに慌てながら……俺たちの行動を止めるように、追い掛けてきた。
メロは一人置いていかれまいと……アスモリの背中を追って、此方へと向かって来ている。
「おい! そんなに慌てながら言われても、何を言っているか分からないぞ?!」
俺が言葉を返すなり、再びアスモリは口を開く。
「王宮内には、沢山の罠が仕掛けられていているんだ!!」
……罠?! 王宮内には、罠が仕掛けられているのか!?
アスモリからの知らせに、驚いていると、
『侵入者!! 侵入者!!』
突然に……機械的な声が、建物内部全体に響き渡った。
「え!? なに!? 急にどうしたの!?!?」
俺が唐突な音に困惑しながら周囲を見渡していたら、ドルチェが申し訳なさそうに言ってくる。
「……ご、ごめん。なんか、足元にあった赤外線的なモノに、触れちゃった」
……え? 赤外線的??
と、
足元の床が突然に開かれて……俺たちは無抵抗に、出来上がった穴に落っこちる。




