4章 第33話
俺は……謎の人影へと、少しばかり足音を立てて段々と距離を詰めてみる。
と、
「おい、また追っ手かよっ!?」
少しばかり近付くや否や……人影は声を荒げて、俺を避ける様に逃げだす。
……追っ手?? 何のことだ??
そんな事を思いながら……俺はドルチェを置き去りにして、逃げる謎の人影を追い掛けることにした。
「おい、なんで逃げるんだよっ!?」
走りながら質問してみると、人影はスグに答えてくる。
「なんでって……それはお前らが、俺を捕まえようと、狙っているからに決まっているじゃねぇかっ!?」
……捕まえる?? なんか、勘違いされてないか??
人影の言葉を聞いて、又も疑問が浮かんだ俺はハッキリと伝える。
「俺は、追っ手なんかじゃないぞっ!!」
と、言葉を告げ終えるや突然に……
「ピョォォオオオオッ!!」
大きな鳴き声を発する巨鳥が、天から目前に降り立ってきた。
「うおっ!? なんだイキナリ!?!?」
不意な出来事に、俺が驚き戸惑っていると……人影は元気良く言葉を発する。
「ヤっちまえぇぇ!! 其奴を倒せぇぇ!!」
……え!? この鳥、人影の仲間だったのか!? って、ん!? この鳥……なんか見覚えが?!
鳥が嘴先で全力の攻撃をしてきている最中に、俺の脳内で少し前の記憶が蘇った。
「この鳥……監獄島の巨鳥じゃねぇか!? ということは、もしかして……あの人影は、『アスモリ』なのか!?」
そんな事を大声で言い終えた瞬間……巨鳥の向かって来ていた嘴先がピタリと目前で停止する。
同時に、
「も、もしかして……カナヤだったりするのか??」
人影が逃げて行った方から……少しばかり興奮した口調の言葉が飛んできた。
「そうだ!!」
急いで俺は返答した。
瞬間に……際ほどまで、あんなにも逃げ隠れしていた人影が、スンナリと俺の前へと姿を現してくる。
段々とハッキリとしてくる容姿に、俺は徐々に興奮してしまう。
その後……目前に堂々と姿を現してきた人影は、笑顔で口を動かして言ってくる。
「仮面を付けているけど、背丈などからしてカナヤだな!! 久しぶりだ!!」
目前に現れた者……謎の人影の正体は、監獄島から共に脱走してきた『アスモリ』だったのだ。
……そんなに久しぶりな再会じゃないのに、何故かとても懐かしいなぁ。
俺がしみじみと、そんな事を考えていたら……アスモリが再び口を動かす。
「それにしてもお前……六魔柱の縄張りに入ったのに、よくぞ無事に今日まで生きていたなぁ」
そんな言葉を耳にした俺は、再び少し前の記憶を思い出した。
……そういや、コイツ。俺がピンチな時に、一人だけで逃げたんだったよな。
と、
「ねぇ?? カナヤのお友達さん……身体つくれるぅ??」
突然に……背後から、アスモリへ質問する声が聞こえてきた。
後方を振り向いてみると、生首を片手に持つドルチェの姿が見えた。
……地味に、俺の背後を追って来ていたのか。
そんな事を一人で考えていたら、アスモリがドルチェの質問に答えはじめる。
「身体……?? もしかして……嬢ちゃんが片手に持っている機械の首に、身体をつくれってことかい??」
アスモリが唇を閉じるなり……ドルチェは『うん!』と、勢い良く頷いて反応をした。
すると、ユンバラは満面の笑みを浮かべて言う。
「そうか、了解だ!! こうみえて実は俺……この国の出身で、機械を組み立てる知識が結構備わっているんだぜっ!!」
……え? アスモリ、この国産まれだったのか!? って、ことは……前に初めて話した時に教えてくれた、忍び込んだ王宮はもしや……??
俺が又も記憶の回想をしていたら、ドルチェが袖先を唐突に引っ張って呟いてくる。
「んねっ! 部品を探しに行こう!!」
「おう! そうするか!!」
俺は急いで元気良く返事をすると、ドルチェと一緒に……クズ鉄が多量に積み上がる場所から、使えそうな部品を探すことにした。




