4章 第30話
「おう、そうだな!」
ユンバラがイリビィートの発言へ返答したのを合図に、俺たちは王宮に向かって歩き始めた。
そんな道中……俺は、朝日が昇りつつある町の風景を楽しみながら、脚を進める。
何処もかしこも、金属で造られた頑丈そうな建物ばかりだ。建物一つ一つが、銀色に輝き……美しい町並みを作り出している。
それと、まだ朝が早いからだろう。人通りは、そんなに多くはない。
うん。『人通り』は、多くはない……のだが、
……なんなの? この町は、どうなっているの??
俺は、町を通行している一部の者たちの姿に、唖然としてしまう。
……この町、絶対におかしい。
町を歩いている一部の者たちの姿を見て、そんなことも思った。
その後スグに、俺は視界に入る景色に耐えれ切れなくなり……おかしいと思った点を指摘するかのように、大声を発してしまう。
「おい、どうなってるんだ……この町っ!? なんで……武装した機械兵が、堂々と歩き回っているんだよっ!?」
ジックリ周辺を見渡してみたら……武器ではなく、買い物カゴを持っている機械兵も確認できる。
俺が呆然と辺りを眺めて歩き続けていると、不意に背後から……偶然に近くを散歩していたお爺さんが、話し掛けてきた。
「おやおや、機械兵に驚くとは……旅人さんなのかい? この国に住む人々は、一家に一台……機械兵を所有しているんだよ。何かあったら護ってくれるし、お使いもしてくれる……。機械兵は、とても便利なんだ」
……え? 戦闘兵器が、お使いをしちゃうの?? てか、なんだこの爺さん? 急に後ろから話し掛けてくるから、少しビビっちゃったよ。
俺は、そんな事を思いながらも……この国の情報を教えてくれた爺さんに、頭を軽く下げて御礼を言う。
その後も、町風景を眺めながら進行していると……王宮入口の目前に辿り着いた。
と、ドルチェが興奮した口調で言う。
「うわぁ、おっきぃ!? 遠くから見るのと、迫力が全然違うねぇ!!」
ドルチェの言うとおり……王宮の迫力は、遠くから見た場合とでは、全く異なっていた。
遠くから眺めていた時は、ただ単に『大きい』や『でかい』しか、言葉が思い浮かばなかったのだが……目前で見てみると、建物が徐々に迫り来る感覚がして、『恐ろしい』などとも思えるのだ。
俺が建物の威圧感に茫然としていたら、ユンバラが首を傾げて言う。
「入口前に来たのは良いが……王宮内には、どうやって入るんだ??」
この疑問に、シュティレドが淡々と返答をはじめる。
「えっと……入口扉の何処かに存在する小さな窪みに、王宮の鍵のような役割を持つ『指輪』を翳したら……扉が開いて、建物内に入る事が出来るらしいんだけれど――……」
シュティレドは……途中あたりから、段々と自信なさ気に言葉を濁らせていき……遂には、発言がピタリと途絶えた。
謎の沈黙が訪れるなり、イリビィートが堂々とした口調で言う。
「入口の鍵である、指輪を持っていないのね」
この言葉を耳にしたシュティレドは、申し訳なさそうにコクリと頷く。
すると……イリビィートは、優しい口調で再び声を発する。
「持っていないのなら、他人から貰いましょう」
……王宮の鍵という大事なものを、くれる奴が存在するのだろうか??
イリビィートが言い終えるなり、俺がそんな事を感じていると……シュティレドは、開き直って言う。
「そうだね!! 無いなら、他人から奪えば良いっ!!」
「ちょっと待て、今なんて言った!? 奪う!? 他人から強奪しちゃうのっ!?」
すぐさま俺は、シュティレドの発言に問い掛けた。
するとシュティレドは、もう一度言う。
「無いなら、奪えば良い」
「いや、奪っちゃダメでしょ!?」
再び俺が、シュティレドの発言にツッコんでいると……ベジッサが微かな声で呟く。
「もしかしたら……町の何処かに、落ちているかもしれない。落ちているモノを拾うのなら、強奪にならない」
続いて、ドルチェが張り切った様子で言う。
「よし……町の何処かに落ちてるかもしれない指輪を、探しに行こぅ!!」
と、ユンバラが割り込むように発言する。
「じゃあ……効率良く探すために、二人一組ぐらいに手分けをして、探すとするか!!」




