4章 第29話
――シュティレド達と、しばらく歩いていると……アージニエンの正門が視界に入ってきた。
旅人を快く受け入れる国とはいっても……流石に、分厚そうな金属製の巨大扉で出入口は厳重に塞がれているし、武器を片手に持つ門番兵らしき者が居るのも分かる。
俺たちが先ほど着陸した位置は、アージニエンから少し離れた場所だったので……此処に到着するまで、数分の時間が掛かってしまった。
……はぁ、やっと到着した。
俺は正門の目前へ辿り着くなり、深い一息を吐き……巨大扉の左右に立ち尽くす、二人の門番兵を何気無く見つめてみる。
と、ある事に気付く。
門番兵の至る所から、歯車が剥き出しになっていて……身体は全体的に、金属で成り立っている事に気付いてしまった。
……何この、生命が感じられない門番兵っ!? なんか、こわっ!?
俺が門番兵の容姿に怖気付いていたら、シュティレドが呟くように言う。
「アージニエンの最高傑作な発明品……『戦闘兵器・機械兵』。予想していたより、ガッシリとしていて強そうだな……」
……え? 戦闘兵器……?? やっぱり、この門番兵は怖いっ!?
俺が、シュティレドの独り言に身震いしていると……、
「「旅人ヲ六人確認……。入場ヲ許可スル」」
突如、正門の左右を守備している門番兵が声をハモらせ、そんな事を言ってきた。
刹那……閉ざされていた巨大扉が、大きな音を立てて独りでに開かれていく。
……こんなにもアッサリと、入場の許可を得られるのか!?
俺がそんな事を感じているうちに、正門は完全に開かれて……扉奥の、銀色に輝く町景色が視界へと飛び込んでくる。
「うぉぉおおおおっ!? す、すごい……!!」
美しい景色に、思わず興奮していると……ユンバラが呟く。
「んじゃ、入国するか」
この一言を耳にするなり……俺たちは、多少に駆け足で正門内へと向かって進む。
そんな中で息を吸って感じたが、なんとなく空気が悪い気がする。機械兵などを生産する時に、悪い物質が発生しているのだろうか?
扉を一歩潜るなり、先程まで砂漠地帯だった足元が……綺麗に整備された石畳の床に変わった。
……この町、すごい整備されているな。空気は、なんとなく悪いけれど。
街中へ入り込んで、再び町の凄さに圧倒されていたら、背後から『ガシャンッ!!』と大きな音が響いてきた。
……ん? なんの音だ??
すぐさま振り返って、扉が閉じてしまっている事を把握する。後方から聞こえてきた音の正体は……正門の扉が閉じて生じた衝撃音だったのだ。
「うぉい!? 扉が閉まっちゃったよっ!?!?」
突然の事態に、俺がアタフタしていると……イリビィートが、鼻で軽く笑いながら問い掛けてくる。
「何をそんなに慌てているの? もしかして、扉が閉まったから……外に出ることが不可能になったとでも、思っているのかしら??」
「そ、そ、そ、そんなことねぇしっ!?」
図星なことを言われた俺はスグに、声を大にして言い返してやった。
この強がりな発言に、イリビィートは又もバカにした口調で言ってくる。
「そうなのね? 別に、この町に閉じ込められたなどとは……決して思ったりしていなかったのね?? まぁ、閉じ込められたとしていても……翼を使っての脱出方法とかが考え付くし……不安感が湧き出たりすることは、決して無いわよね??」
……こ、コイツぅぅうううっ!?
俺は羞恥心のあまり顔を赤面させながらも、自身の名誉を守る為に……何回も首を縦に振って「そうだ」と、嘘を言い張った。
そんなこんなしていると、シュティレドが言ってくる。
「それじゃあ……とりあえず、王宮の前まで向かおうか」
……お、王宮!? そういえば、宝があるという王宮は、何処にあるんだろう??
そんな疑問が脳裏を過ぎった俺は、すぐさまシュティレドへ質問する。
「王宮って、何処にあるんだ??」
すると……シュティレドは無言で、ピンッと前に人差し指を差し向けた。
……え??
俺は戸惑いながらも、シュティレドの指先が向いている方を目で辿る。
と、
町の中心に大きく聳え立っている……金属で造られた巨大な円柱状の塔が視界に映った。
……確かアレは、飛行している時に『雲海まで届きてきそうだな』と、感じさせてくるぐらいに目立っていた建物!! アレが、王宮だったのかっ!?
俺が驚愕している中、イリビィートが呟く。
「早く、王宮に向かいましょう……」




