4章 第28話
……アージニエンという国。宝の情報を死守している癖に、旅人を簡単に受け入れちゃうのか。きっと、警備態勢とか物凄いんだろうな。
俺が思考を働かせ考えていると……目前のシュティレドが突然に、雲海下の砂漠地帯へ向かって急降下する。
続いてドルチェも、降下の態勢に入り……、
……おい、お願いだから思いっきり急降下とかするなよ。降下するなら、ユックリしてくれよな。
俺がそんな事を願うも叶わず……砂漠地帯へと突っ込む様に、降下をはじめた。
「うぉぉおおおおおおっ!?!?」
突然の降下に、恐怖のあまり大きな声が出てしまう。
俺が叫ぶ中……先行くシュティレド達は、盛大に砂埃を巻き上げて、陸ヘと無事に着陸を成功させている。
と、
シュティレド達が着陸して生じた砂埃が……風に乗って、運悪く俺の仮面の覗き穴を通り、両目へと侵入してきた。
砂が付着した両目に激痛が走り、更にデカイ声で叫んでしまう。
「うわぁぁああああー!! 目がぁぁああああっ!?!?」
どうやら……ユンバラとドルチェは、無害なようだ。
……チクショウ! なんで俺だけが、被害を受けるんだよ!!
自分だけが痛みにもがき苦しんでいる内に、ドルチェは無事に着陸を成功させた。
陸に足底が付いた俺は、スグにドルチェから両手を離すと……仮面を取り外して、両目に入った砂を擦り出すのに専念する。
そんな事をしていたら……正面に立つシュティレドが、服の裏側から仮面を取り出し、顔を隠して言う。
「それじゃあ早速、アージニエンに入国しようか!」
俺が一人、ゴシゴシ両目を擦っている中……「おぉー!」とか言う、六魔柱たちの声が聞こえてくる。
……うるせぇよぉ。俺は苦しんでいるんだよ。せめて、目を静かに擦らせてくれ。
目を擦りながら、内心で不満を言葉にしていると……突然に背後から、イリビィートが話し掛けてくる。
「早く行くわよ!」
……急かすな。今とっても大事な場面なんだ。目の奥に入った砂が全て取り除けそうなんだ。
俺はイリビィートの言葉に、頷く素ぶりをみせて……もう少しで取れそうな砂粒を擦り出すのに努力する。
すると、
「ねぇ、ちゃんと聞いているのかしら?」
イリビィートが、思いっきり右肩に触れてきた。
この行動の所為で……あと少しで取れる筈だった砂粒が、目の奥へと再び入り込み、更なる激痛を引き起こす。
「うぉぉおおおおいぃぃいいいいっ!?!? なんて事してくれるんだよっ!?!?」
すぐさま俺は、声を荒げながら振り返って……イリビィートへ文句を叩きつける。
「急に肩を強く叩いてくるなよっ!? 今、とても大事な時だったんだぞ!?!?」
痛みと悲しみの所為だろうか……両目それぞれから、一筋の涙が流れ落ちてくる。
……って、ん? 急に、目の痛みが消えた。
涙を流したおかげで、砂が外へと出てきたのだろう。
砂の痛みから解放され、心中で一人密かに歓喜していると……イリビィートは不満そうに俺を睨んで言ってくる。
「せっかく、親切にしてあげたのに。もう、知らないわ……」
先ほど俺が怒鳴ったことに対して、不満を抱いているのだろう。
……どうしよう? 謝ったほうが良いのか??
謝罪をしようか迷っていると……砂漠に興奮して駆け回っているドルチェの様子が、視界端に映り込む。
……こんなにも調子に乗って走っていたら、いつか転びそうだな。
ドルチェの走り回る姿を見て、そう思っていたら、
「痛てっ!!」
予想通りにドルチェは、ひょこりと短く地面に生えていたサボテンに躓いて、盛大に転倒した。
刹那、転んだ衝撃で生じた砂埃が風に舞って……、
「うぉぉおおおおぅぅっ!?!? め、目ガァァアアアアッッ!?!?」
砂粒が、俺の両目に飛び入ってきた。
……痛い痛い痛い痛いっ!! なんで俺だけ、目に砂が入ってくるんだよっ!? なんか俺は、目に砂が入りやすい性質だったりするのか!?
再び眼球を刺激する痛みで、もがき苦しんでいる中……イリビィートが呟く。
「きっと、あたしに怒鳴った天罰ね。それよりも、早く行きましょう……」
「ゔぅ……お、おう……」
俺は軽く首を縦に振るなり……目を擦りながら、イリビィートの背後をトボトボと付いて歩く。




