4章 第24話
「いや、でも……!! 目前には、侵入者かもしれない者たちが!?」
フェンが大きな口を開けて、アネータさんへ困り気味に返答した。
すると……セリカが、何か大事な事を思い出したのか、目を見開いて言う。
「そうだったわ! 私たちには、大切な任務があって……仮面を付けた変な奴らに構っている暇は、無いんだったわっ!!」
……おい、さっきから俺たちの事を……変な奴ら呼ばわりするなよ。
俺がそんなことを思っていたら、フェンが眉間にシワを寄せてボソリと呟く。
「いや……でも……」
と、
ベジッサが、途端に声を発する。
「私達は、怪しい者じゃない……。信じて……」
堂々した発言は、フェンの心深くに問い掛けた。
「え……? 怪しくない??」
フェンが呟く。
ベジッサは無言で、コクンと首を縦に振る。
この頷きの動作を目にしたフェンは、再び口を開いて、
「うん……なんかジックリ見てみると、全然怪しくないな」
……え!? 今なにが起こったの!? ベジッサは、フェンを洗脳しちゃったの!?
目前の状況に対して……俺の身体は驚愕のあまり、鳥肌だらけになった。
と、
「きゃあぁぁああああっ!? プルイドさまぁぁああああ!!」
再び、女性たちの歓喜する声が視界端から聞こえてきた。
瞬間、右耳の双方向無線機からシュティレドの声が溢れ出す。
『今、青髪男を捕まえたよ!!』
俺は急いで、女性たちの叫び声が聞こえる方へ視線を変える。
すると、遠くの方で……女性たちと綱引きするように、青髪男を引っ張り合う、シュティレドやドルチェの低空飛行する姿が映った。
……さっきまで上空を飛んでいたのに、いつの間に降下してきたんだよ。
ユンバラは、ドルチェの腕にぶら下がっているだけの……どんな奴から見ても分かる足手纏い状態。
……ユンバラ、俺たちと一緒に来れば良かったのに。
青髪男は……女性たちに足先を掴まれ、シュティレドには首根っこを引っ張られて……白目になりながらも、大事そうに両腕で何かを抱きしめている。
そんな光景に、やっと気付いたのだろう……セリカが慌てて大声を上げる。
「うぇぇええええっ!?!? プルイドさんが、なんか大変なことになっているんですけど!?」
続いてペリシアも慌てて口を開く。
「は、は、は、早く、助けなきゃ!?!?」
セリカ達は、慌てふためきながら青髪男の所へと駆け向う。
そして、現場に着くなりフェンが女性達に加勢して、男の足先に掴みかかる。
と、
「き、君たち……我から……我から、汚い手を離せぇぇええええっ!?!?」
気絶寸前の青髪男が、声を荒げながら身体全体ジタバタ動かし……纏わりつく手先を剥がし始めた。
……まぁ、こんなにベタベタと人が纏わり付いてきたら、誰でも怒るよな。
俺が同情していたら……男は暴れ狂う中、両腕に抱えている物を空中へと放り投げた。いや、放り投げたというよりも……『誤って、手から離してしまった』という表現が正しいだろう。
放り投げられた物をジックリ見てみると、小さく球体なものだと分かる。それに、なんか青白い光を発している。
青白い光を発する小さな球体は、空中に弧を描いて……、
……ん? なんか、俺の方に飛んで来てない??
俺の足下に落下して、コロコロと地面に転がった。
すぐさま、俺は腰を曲げて地面から謎の球を右手で拾い上げる。
と、
「おい! それを早く我に返せぇぇええええ!!」
女性やシュティレドに解放された青髪男が、叫び狂いながら、俺の方へと走り向かって来た。
……え、なに!? 怖い!?!? 返せば良いの!? このよく分からない球を返せば良いの!?!?
すぐさま俺は、恐怖から逃れる為に……謎の球を青髪男へと、全力投球する。
球が手先から離れ飛んだ瞬間、
「それは、僕たちの目的の品だ!! 今回、それを奪う為に、僕たちは此処へ来たんだ!!」
不意にシュティレドの焦り叫ぶ声が、両耳に響いてきた。
双方向無線機からも、同じ言葉が爆音で伝わってくる。
……み、右耳がぁぁああああっ!?!?
唐突に双方向無線機から発せられたシュティレド声は、右鼓膜を痛めてきた。幸い鼓膜は破けていない。
急いで俺は、装着している双方向無線機を取り外して、ローブに隠れたズボンのポケットへと入れる……と、ポケットの中に長く太い物体が……。
……こ、コレは!?
ずっとポケットの中に入れっぱなしで、使用することも無かったので、存在を忘れていた……。だが、再び……俺は思い出した。
『相棒』……ヒノキ棒の存在を!!




