4章 第22話
……えっ!?
俺は多少に驚きながら、セリカが叫ぶ正面をシッカリと見つめ直した。
直後……青髪男が物凄い形相で、真っ正面まで辿り着いていることに気付く。
……もうこんなに近くまで、来ていたのか!?
双方向無線機に気を取られすぎて、周囲の状況の把握をしきれていなかったことに後悔していると、
「おい、邪魔だよっ!!」
青髪男が声を荒げながら俺を避けて、真横を勢い良くすり抜けていく。
……あっ!? 捕まえないと!!
そんな言葉が脳裏に過ぎり、俺は急いで背後を振り返るが……男は既に、多くの人々が行き来している黄金の街に、姿を眩ませてしまっていた。
……あぁ、双方向無線機に夢中にさえなっていなければ……。もっと、俺の動体視力が良ければ……。
目前の状況に深く後悔を重ねていたら……呆然と立ち尽くしているイリビィートとベジッサが、ボンヤリと視界端に入り込む。
瞬間に、俺の思考がポジティブに働きだす。
……いや待てよ? 男を取り逃がしたのは、自分一人だけの責任じゃないよな??
そんなことを感じた俺は、すぐさまイリビィート達の方を向いて口を開く。
「なぁ、どうして男を捕まえようとしなかった?」
……六魔柱のことだ。男を捕まえようとしていたら、簡単に捕まえることが出来ていただろう。現在、男を確保出来ていないということは、捕まえようとしていなかったのだろう。
と、
ベジッサが静かな呟きで返答してくる。
「君が、捕まえるかと思っていた……」
続いてイリビィートが、溜息とともに言葉を吐く。
「はぁ……貴方って、何も出来ない男だったのね……」
……ひどいっ!? なんか、俺だけの所為になってる!? チームプレイとかないの!? なに、俺だけ一人プレイなの!?
俺の胸内に、多くの嘆きの言葉が交差しながら生まれた。
不意に、セリカの叫ぶ声が聞こえてくる。
「あーもうっ!! なんで捕まえてくれないのよ!? そこに居るなら、捕まえなさいよっ!!」
……なんで皆んなして、俺の所為にしたがるんだ。
少しばかりの悲しみを抱きながら、俺はセリカへ威勢良く言い返すことを決める。
「なーんで、俺の所為になるんだよ!? 別に俺は、お前らの仲間でもなんでもないんだぞっ!? な・の・に、全責任を俺だけに擦りつけるのか!? 全部、俺が悪いのか!?」
……言い切った。
そう思いながら唇と閉じると……目前のセリカは、途端に声を荒げて地団駄を踏みはじめ、
「むきー!! な、なんですって!? じゃあ、私が悪いって言うことっ!?」
「そうだ!!」
更に俺は言い切った。
すると、
「なんでよっ!? なんで、私だけの所為にするのよっ!? 私が悪いんじゃないわ!! コイツが、悪いのよ!!」
セリカは顔を真っ赤にしながら、フェンのことをピシリと指さした。
不意に指をさされたフェンは、困り果てた表情で口を大きく開く。
「えぇ!? オレの所為なのっ!?!?」
と、突然……右耳に装着している双方向無線機から、シュティレドの穏やかな声が聴こえてくる。
『君たちの姿を見つけたよ。さっき別れた場所から、全く位置が変わってないね』
……意外に早かったな。
俺はそう思いながらも、大事なことを伝える為に口を動かす。
「えっと……言いにくいんだけど、宝を持った者を取り逃がしてしまった。容姿は、青髪に白いタキシードを着ている男なんだが……上空から、そんな姿をした奴が見えたりするか??」
言い終えると……シュティレドの優しい声が、双方向無線機を伝って聴こえてくる。
『そうか、取り逃がしちゃったかぁ……。でも、大丈夫だよ!! 今くれた情報を頼りに、その男を僕が絶対に捕まえるから!!』
「な、なんか……すまない」
気を使った励ましの言葉を聞き終えるなり、申し訳なさが増したので……シュティレドへ謝罪をしていたら、
「ねぇ! どうせだから、アンタも私たちに協力しなさいよっ!!」
空気を読まないセリカの大声が、鼓膜にうるさく響いてきた。




