4章 第20話
……陸と空に手分けをして、宝を盗み出した者を捜索するのか。
効率は良いと思うが、上空には赤外線ある……それに、飛行をしてしまったら、悪目立ちしてしまわないだろうか??
シュティレドの意見を聞いて、不安な気持ちに駆られていると……視界端のドルチェが元気な声で話し始める。
「んねっ! ウチは、ボスと一緒に空から捜したいっ!!」
続いて、ベジッサが微かに呟く。
「じゃあ、私は陸から捜す……」
……皆んな、すんなりと決めているな。
俺がそう感じていると、目前に立つイリビィートが言ってくる。
「貴方はどうするの? ちなみに、あたしは……地上から捜すわ」
……そうか、陸から捜すのか。それじゃあ、俺も……、
「お前と同じく、陸を選ぶことにするよ」
丁寧に一言を伝えると、
「了解したわ……」
イリビィートは、ユックリと頷いた。
と、
視界にぼんやり映るユンバラが、不意に周囲へ向かって口を開く。
「俺は、空から捜すことに決めた!」
直後にシュティレドは、威勢良く頷いて言う。
「うん、チームが決まったねっ! 空から捜すのが、僕・ドルチェ・ユンバラ……。陸から捜すのが、ベジッサ・シュティレド・カナヤ……!! それじゃあ早速、行動に移そうかっ!!」
シュティレドは発言を終えるなり……背中から生やす、二つの大きな黒鱗翼を勢い良く羽ばたかせ始めた。
真似するようにドルチェも、背中から生えている、小さな黒鱗翼をパタパタと動かしている。
瞬間、
懸命なドルチェの細く色白な腕に、ユンバラは急いで摑みかかり、ホッと溜息を吐いて呟く。
「ふぅ……ボーッとしてたら、置いていかれるところだった」
この安堵の言葉をスタート合図にするように……シュティレドが、地から足底を離して言葉を発する。
「陸組諸君……宝を持っている者を発見したら、スグに『コレ』を通して伝えてね!!」
……え? コレ??
『コレ』という単語に疑問を抱いていると、シュティレドが……黒く小さな何かを一つ、上空から投げ渡してきた。
イリビィートとベジッサは、落下する物を茫然と目で追っている。
……何が降ってきたか分からないが、誰も受け取ろうとしていないから、俺が受け取るか。
俺は多少に慌てつつ、不意に落ちてくる物を両手で受け取る。
……一体、どんな物を投げてきたんだ??
そんなことを思いながら、両手を広げてみると、
「……なんだコレ??」
広げた掌上には、丸みを帯びた黒い小さな物が一つあった。
……いや、本当にコレ何?? 何に使う物なの??
どんなに考えても分からないので、思考を働かせるのを半ば中断しようとしていたら、
「それは、片耳に装着して使うものだよ」
突然、目上を浮遊しているシュティレドが言ってきた。
急いで俺は、上空を見上げて聞き返す。
「え? 耳に付けて使う??」
すると、シュティレドは再び唇を開いて、
「そうだよ、耳に付けて使うんだ。とりあえず、右耳に付けてみなよ」
「お、おう……」
不信感を抱きながらも、俺は言う通りに……黒く小さい謎の物体を右耳へ装着する。
と、
『おーい、聴こえるかな??』
謎の物体を装着した右耳の鼓膜に、シュティレドの声が響いた。
……なんだ急に!?!?
不意に響いた声に動揺していると、空に浮かぶシュティレドが、自信満々な感じで口を動かす。
「驚いたかい? 右耳に装着してもらった物は、赤外線でお馴染みの『アージニエン』という国が開発した、双方向無線機っていう物だよ」
右耳の双方向無線機と連動しながら、シュティレドの話はまだ続く。
「双方向無線機は、どんなに距離が離れていても会話が出来るという、とても優れている物なんだ」
……アージニエンって国、色々な物を作っているんだな。
はかとなくアージニエンに感心していると、
「ねぇー、ボス!! 早く行こうよぅっ!!」
色白な腕にユンバラを吊るして飛行しているドルチェが、大きく声を発した。
呼ばれたシュティレドは、すぐさまドルチェたちの方へ身体を転換させながら、
「僕も双方向無線機を付けているから、何かあったら、いつでも連絡してきてね!!」
俺に一言を伝えてくると……ユンバラを軽く馬鹿にしながら、何処か遠くへ颯爽と飛び去って行った。




