4章 第18話
「そうよ……」
イリビィートは、なんの躊躇いもなく答えてきた。
俺は、ハッキリとした返答が鼓膜に響くなり……声を少しばかり大にして言う。
「チクショウっ!! なんで、邪魔をするんだよっ!?」
「当たり前よ……あたしだって、一応……貴方の仲間なのだから……」
……え?
イリビィートから発せられた意外な言葉に、俺は言葉を失い掛けてしまった。
そんな中でも休むことなく、イリビィートの声は発せられる……、
「考えてちょうだい? もしも……目前に現れた敵の仮面下が、自身の知る仲間だった時に、貴方はどのような気持ちに満たされるのかしら? このタイミングで再会しても、嬉しい気持ちで満たされることは無いわよね……??」
……もしも俺の立場が、現状況のセリカだとした場合の気持ち?? それは……久々に懐かしい仲間と再会できて――…………いや、違うな。……『動揺』してしまう。
動揺してしまって、どうすれば良いか分からなくなってしまう。戦った方が良いのか、戦いを避けた方が良いのか、判断にキツく苦しんでしまうだろう。
イリビィートから伝えられた言葉の意味を考えるなり、俺の思考回路は静かに停止していく。
と、
「おい! お前らが、侵入者なのかっ!?」
正面の方から、フェンの威勢良い問い掛けが聞こえてきた。
瞬時に、質問に回答するシュティレドの声が、背後から押し寄せてくる。
「勘違いだよっ! 僕たちは、決して侵入者なんかじゃない!!」
……シュティレドが、嘘を付いたっ!?
後方からの発言を耳にするなり、そんなことを思ったが……心中で語るだけで、決して口には出さなかった。
理由は単純に、言葉にしてしまったら……侵入者だとバレて、敵が増援したりなどメンドくさい事になりそうだからな。
フェンが、嘘を信じ切って頷いていると……一人の男が声を張り上げて言う。
「侵入者ではないにしても、こいつらは……、周囲の皆を石像にしたんだっ!!」
……余計な事を言うなっ!!
俺はそう思いながら、声を張り上げた男を少しばかり睨んだ。
同時に……フェンが、俺たちを睨みつけて冷静に口を開く。
「そうか……周囲に見える、妙にリアルな石像は、元々生きている人間だったのか……。皆を石像にした犯人がお前らならば、放って置けないな……」
……こればかりは、言い逃れできないだろう。
俺は、そう感じながら……シュティレドの方を軽く見つめる。
すると突然、
『緊急事態発生!! 宝物庫から、この国の宝が盗まれた!!』
街全体に、大きなアナウンス警報が鳴り響いた。
続けて……街全体で人々の悲鳴が、彼方此方で発せられる。
……宝が盗まれた? どういう事だ??
イリビィート達の方を確認するが……六魔柱の五人の姿は、誰一人欠けていない。
……ということは、俺たちじゃない誰かが、宝を盗んだということか??
と、
「あれっ!? プルイドさんが居ないっ!?!?」
唐突に、セリカの慌て叫ぶ声が聞こえてきた。
……プルイド? 確か、世界一の遊び人の名前だったよな??
俺がそんな事を思っていると、ペリシアの焦る声も聞こえてくる。
「どうしよう! さっきまで居たのにっ!? 早く探さないと、護衛のクエストが失敗に終わっちゃう!!」




