4章 第14話
とりあえず皆が、仮面とローブを身に付け終えるなり、忍び足で人気のない裏通りを転々と移動する。
そんなことをしていて感じたのだが……この街は何処もかしこも、電飾や金色の建物で煌びやかしていて眩しい!! 裏路地すらも、電飾が施されている始末だ。
……というか俺たちは、何処へ向かっているんだ??
ふと疑問が浮かんだ俺は、小声で皆へと問い掛ける。
「えっと……コレって何処に向かっているの??」
口を閉じるなり、先頭をきって歩くシュティレドが、俺の方を軽く振り返り静かに声を発する。
「今は、街の中心地へ向かっているんだよ。説明をしていなくて、ごめんね」
……街の中心地。どのくらい賑やかな場所なんだろう??
シュティレドの言葉を聞いて、楽しげなことを想像していると……、
「きゃぁああんっ!! プルイド様ぁああんっ!!」
女性の歓喜する声が不特定多数、鼓膜へ微かに響いてきた。
……な、なんだ!? 一体何処から、発せられた声なんだ?
不意に聞こえてきた声に驚きつつ周囲を見渡してみると、目前の建物同士の狭間から……大きな石を何個も積み上げ造られている楕円形な巨大建造物が、ヒッソリと姿を露わにしていた。
「あ、アレはなんだ……?」
建物の威圧感などに圧倒されながら呟くと、ベジッサが言ってくる。
「アレは、円形劇場……。彼処でプルイドとかいう人の舞台が……公演されているんだと思う……」
……プルイド? 世界一の遊び人的な奴のことか??
説明を聞いて思考を働かしていると、
「きゃぁああんっ!! プルイド様、素敵ぃいいんっ!!」
再び、女性たちの歓喜している声が響いてきた。
……絶対に、あの巨大な建物内から聞こえてきているモノだよな?
俺は、視界に映る円形劇場を眺めながら……歓喜する声の発生地を確信する。
と、
「こんな場所で立ち止まっていても、時間の無駄使いよ……」
目前を歩き進んでいるイリビィートから、不意に軽い説教を食らってしまった。
……確かに、この場所で道草を食っているのは、時間が勿体無いな。
俺はイリビィートの言うことに珍しく共感すると、止まりつつあった脚を再び動かす。
その時だった。
「今宵、我は……っ!! この世で最も美しいものを手に入れよう……っ!!」
円形劇場が建つ方角から、男の美声が大きく聞こえてきた。
……な、なんだ?
『台詞』や『美声の持ち主』が気になりつつあるが……イリビィートに再び怒られないよう、俺は皆とともに脚を進める。
……って、皆んな歩くの速いな。
心中そんなことを思いながらも、最後尾をついて懸命に歩き進む。
しかし……一旦つめた距離も、数十歩ほど歩き進めるなり、すぐに間が空いてしまう。
……妙に皆んな早歩きになっているな。途端に急ぎはじめて、どうしたんだ?
変わりつつある雰囲気に疑問を抱きながら、監獄島の地下室で鍛え抜いた両脚を懸命に前へと進める。
だが……距離は中々縮まらない。それどころか、段々と離れてしまっているような??
そこで俺は、皆を引き止めるように口を動かす。
「な、なぁ……、皆んな歩くスピードが速すぎないか??」
すると、イリビィートが移動速度を落として呟く。
「もうすぐ、遊び人の公演が終わってしまう時間帯なのよ……」
そんな言葉に、俺は首を傾げて問う。
「こ、公演が終わる? 別に良くないか? だって、もう無事に入国を終えていることだし……??」
そんな質問内容に、ユンバラが溜息を吐きながら反応する。
「一応……伝えておくが、俺たち六魔柱は世界的に指名手配をされているんだ。たとえ仮面で顔を隠していたとしても、体格などから六魔柱だと特定されることがある……」




