4章 第11話
――四時間後。
ユンバラの説明が終わるや否や……、黄金に光り輝きながら海に浮かぶ島が、雲海の上を飛行する俺の視界へと、雲にできた隙間を通って薄っすら入ってくる。
「あ、アレは……?」
俺が小言を呟くなり、
「ペフニーズィよ……」
シュティレドと共に前方を飛行するイリビィートから、そんな一言が飛んできた。
……あの島が、ペフニーズィなのか。
俺は、そう思いながら改めて島を確認してみる。
島全体を覆っている黄金色の電飾……夜の暗い海面に反射している光り輝く島。
遠目からでも、豪華な建物群が多く建ち並んでいることが把握できる。
噂通り……どの部分を取っても、『凄い』としか表しようのない島だ。
俺が口をポカンと開き、ペフニーズィに圧倒されていると、
「それじゃ、作戦通りに行くぞっ!!」
左側から、ユンバラの生き生きとした声が鼓膜へと響いてきた。
……作戦を決行するのか。
『作戦』という単語に、少しばかり緊張を感じていたら、
「それじゃあ、準備は良いかい?」
正面を飛行するシュティレドが、軽々しい口調で言葉を発した。
瞬間に、辺りを見渡してみると……、
「全然、良いわよ……?」
イリビィートがニヤリと笑みを浮かべて、首を縦に振っていた。
他にも、ユンバラ、ドルチェ、ベジッサ達も……コクンと頷いている。
どうやら、心の準備が出来ていなかったのは……俺だけのようだ。
出発する前に、自分へと沢山言い聞かせていた筈だったのだが……いざ、目的地を眼前にしてしまうと……不安感が何倍にも増幅して身を厚く包み込まれる感覚に襲われた。
しかし、こんなことで負けていては……。
でも、怖い……。
俺が心中で、溢れ出てくる色々な感情と葛藤していると、
「何をそんなに悩んでいるのかしら?」
シュティレドに抱き抱えられ、正面を飛行しているイリビィートが、軽く振り返ってポツリと言ってきた。
「え……?」
思わず俺は、聞き返してしまった。意味はシッカリと理解していたのだが……不安感を誤魔化す為に聞き返してしまった。
すると、イリビィートはいつものように悪戯めいた笑みを浮かべて、
「誰にだって、不安感ぐらいあるわよ? でも、乗り越えて……その先の景色がどんなモノなのかをキッチリと確かめてみないと、もっと不安感が増していく一方よ?」
名言とも受け取れそうな言葉に心を強く打たれた……のだが、よく考えてみると……、俺って半強制的に心の決心をさせられて、此処へ連れて来られたよな??
そう考えると、なんかムカつくな。
まぁ……イリビィートの言うことは、ごもっともだ。
不安感のその先の景色かぁ……。
俺は密かに心の決心を済ませると、周りの皆と同じようにシュティレドの方へ、首を縦に強く振った。
すると、それを見ていたユンバラが興奮した様子で言う。
「それじゃあ、まずは……入国時の作戦を決行だなっ!!」




