4章 第4話
「え……、顔を見たら石像になるっ!!??」
衝撃的な言葉を耳にした俺は、思わず大声を上げてしまった。
そんな行動を目前で見たユンバラは、慌てながら俺の口を両手で塞いできて……
「ちょっ、お前っ!! 声がデカい……!!」
瞬間に、仮面を付けているベジッサが……俺たちの方へ顔だけを向けてきて、
「……陰口? ヒドイ……」
ポツリと仮面の下にある口を動かして、少しばかり悲しそうに呟いてきた。
「い、いや……別に悪口を言っていた訳じゃ――……」
ユンバラはオドオドした口調で、事実を伝える。
すると、
「フフっ……冗談。貴方が陰口をしない性格なのは、知っている」
ベジッサは、クスクスと可愛らしい笑い声を漏らすと……ユンバラから俺の方へ、ユックリ顔向きを変えた。
そして、
「安心して……今、仮面は取らない。あと、君たちの会話が少し聞こえて来たのだけれど……少し語弊がある」
周囲の空間を優しく包み込むような声質で、淡々と俺へと話し始めた。
「ご、語弊……?」
俺が首を傾げると、ベジッサは変わらぬ口調で淡々と答える。
「うん……先程のユンバラが君にしていた説明に、少しばかり間違いがあった」
これから始まる会話の内容は、ユンバラの先程の唐突な説明に間違いがあったから訂正をする……っと、いうことなのだろう。
ユンバラ……嘘を教えてくれやがって。
俺はユンバラへ、はかとなくモヤモヤとした気持ちを抱きながら、目前で開始する正しい説明へと耳を傾ける。
「目が合わなければ、石化なんてしない。それに……石化してしまっても、口移しで私の魔力を体内に注ぎ込めば、元どおり……」
「え……? ん??」
耳を傾けた瞬間に、膨大な情報が脳内へ入って来たので……頭の整理が追いつかず、思考回路がこんがらがってしまった。
とりあえず……もう少し丁寧な説明をして貰うように、頼んでみよう。
「あ、あの……もう少し詳しく説明をしてくれたりしますか?」
恐る恐る再度の説明を要求すると、
「……わかった」
案外サッパリと了解を得られた。
と、次の瞬間……ベジッサは顔に付けた歪な丸い仮面へ、自身の細く色白な右手先を伸ばして……
「じゃあ、いくよ……」
「え?」
彼女の顔から仮面が取れると同時に、徐々に本当の顔が露わになっていく。
きめ細やかなシルクのような白い肌、小さな赤い唇……まるで神話物語で描かれる女神様のように可憐な口元だ。
縮れた緑色の長髪で隠れている黄玉色の大きな瞳は、大地を明るく照らす太陽のように……、
――――――……
――気が付けば、唇に暖かく柔らかい感触があった。しかし……何者かに両目を塞がれているので、目前の様子が確認できない。
あれ? さっきまで……俺……??
何故か俺の記憶は、あやふやになっている。
と、口元の柔らかな感触が離れるように消えていき……
「もういいよ……」
顔正面すぐ近くに、ベジッサの優しさに溢れた声を感じ取れた。




