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冒険という名のパラダイス!!  作者: めーる
第3章 監獄島からの脱出!!
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3章 第6話

 ……ヤバイ、怖い……。お仕置きって、どんな事をされるんだろう……。


 看守の足音が大きくなるにつれて、俺の心は徐々に不安色で染められていく。


 ……ヤバイ、怖い怖い……。って、……アスモリ手元にある鍵の存在がバレたら、色々ともっと大変なことになる!!


 ふと更なる危機を察した俺は、看守が近づいてくる中、アスモリの耳元で小さく口を開き、


「なぁ、アスモリ……その手に持っている鍵……。見つかったら、絶対に没収されるよな??」


「多分そうなるな……。だが、没収だけならまだマシな方だと思っておけ……」


「お、おう……」


 拷問などされずに、没収だけで見逃してくれることは、不幸中の幸いと言えるだろう……。

 だが……本望は、鍵の没収は確実に免れたい。

 没収されてしまったら、脱獄の希望や可能性を大きく減少させられるようなことだから……。


 額に汗を浮かべ、焦りという感情を表情丸出しな俺やアスモリと比較し……イリビィートは顔の血相を一切変えず冷静を保ちながら、


「何をそんなに慌てているのかしら……? もう焦っても、無駄なことじゃない??」


「そ、そんな事ない……。何か打開策が……」


 俺はイリビィートの言葉に反論すると、現在状況の打開策を見つけるべく、あたり周辺を細かく見渡す。


 と、背後を振り向いて気付く。


「なぁ、背後……」


 俺の目に映ったのは、初めてこの建物内へ入った時に歩いた……出入口へと通じる、薄暗く長い大きな通路だった。


 運が良いのか、通路近くに看守の姿は一人も見当たらない。


「あそこを通って、外に出れば――……」


「それは、無理な事だ……」


「え……?」


 喋っている途中、割り込み口を入れ否定してきたアスモリの発言に、俺の思考は焦りで埋め尽くされた。


 焦り感情の所為で、上手く呂律が回らなくても俺は訴える。


「なぁ……なんで、そんな事が言えるんだよ……。証拠でも有るのか……??」


「あぁ……有るさ……」


「じゃ、じゃあ……その証拠ってなんだよ……??」


「赤外線……というものだ」


「せ、せきがいせん……??」


 聞き慣れない単語に、脳は更に混乱して焦りだす。


 そんな中、アスモリの説明が開始する。


「赤外線について、実は俺もよく詳しくは知らん……。しかし、簡潔的な説明なら出来る……」


「た、頼む……」


 看守が迫り来るのを横目に、俺はお願いをする。


「了解した……。では、例えるのなら……『感じ取ることの出来ない線』が良いだろう」


「か、感じ取ることの出来ない線……??」


「あぁ、線に触れたら最期……。警報が鳴り看守を呼び寄せ、出入口の扉は固く閉ざされる……。昔に脱獄を試みた者が、そのような状況下に陥ったのを……俺はこの目に焼き付けている」


 なんだよその線……。よく考えれば、看守たちが通路近くを見張っていないのも、赤外線というものが有るからだろうか??


「だけど、俺があの通路を通って来た時は――……」


「赤外線の有無は操作できるらしい……」


 又もアスモリに、話を割り込まれてしまった。


 そんなことより、操作が出来るとは……。

 つまり、新入り囚人が入獄する為通路を使用する時や、看守が外へ出かける時などは、赤外線が通っていないのだろうか??


 思えば、この監獄島という場所……技術が色々と高度な気がするのが……。出入口の自動扉といい、赤外線といい……。


「ふと思ったのだが……赤外線などの技術は、どうやって……」


 俺が問い掛けるなり、アスモリはボソリ小声で、


「理想都市、アージニエン……」


「え? 理想都市……??」


 と、


「お前ら、ゴチャゴチャ口を開くなっ!!」


 俺がアスモリの話へ深くのめり込み、周り状況下の把握が怠っている内に……二人の看守が、目前まで着いていた。


 そして……


 一人の筋肉質な看守が、俺とイリビィートの片腕を握り……もう一人の中肉中背な看守が両手で、アスモリの太い腕を掴む。


「気安く、あたしに触れないでほしいわ……」


 右腕を掴まれるイリビィートが、溜息を履きながら呟いた。


 瞬間に看守は顔を真っ赤に染め、生意気な発言に対し、


「囚人の癖に、逆らうなっ!!」


 怒鳴り込んで、ガッシリと更に腕を握る力を強めた。


 痛い! 痛い!! 痛いっ!! なんか俺の腕を掴んでいる方の握力も、強くなっているんですけどっ!?


 イリビィートは平然としながらも、眉を八の字にして、


「……腕が痛いわ」


「自業自得だっ!!」


 看守の『自業自得』という一言に、俺も被害を受けていると心中訴える。


 と、


 アスモリの腕を掴んでいる看守が、落ち着いた口調で、


「それじゃあ、拷問部屋に行くぞ……」


 え? ご、拷問部屋……??


「い、いやだぁぁああああああーーっ!!!!!!」


 看守の言葉に恐怖を感じた俺は、全身から冷や汗を噴き出しながら叫んだ。


 怖い、嫌だ、痛そう、怖い、嫌だ、痛そう……ヤダ、ヤダ、ヤバイ……。


「少し落ち着け……」


 俺の左腕を握る看守が、呆れながら呟く。


「落ち着けるわけが、ありませんよっ!!」


「ん? ……今のは、反論か??」


「え……? あ、いや…………」


 看守に反論と思われる事を言わないと決意していたのだが……恐怖のあまり、逆らった発言をしてしまった。


 視線を地へ向ける俺に、看守は更に問い詰める声質で、


「なぁ……反論したよな??」


「え……いや……。え? あ、は――……」


 俺が『はい』と、言いかけた時、


「言葉を発すれば、なんでも反論とみなすなんて……少しは羞恥心を知った方が良いと思うわ」


 イリビィートが、完全アウトな言葉を看守に浴びせた。


 当然……怒る看守の矛先はイリビィート一点に変わり、


「お、お前……」


 看守の手元がプルプルと震えているのを、握られている腕を通じて分かる。


 そんな怒る看守が、俺とアスモリに声先を向けて、


「お前ら二人はもう良い……。仕事場へサッサと行くんだっ!!」


「「は、はいっ!!」」


 こうして俺の腕は、看守から解放された……のだが、アスモリの腕を掴んでいる看守に速攻で拘束されてしまう。


 それよりも、イリビィート……大丈夫だろうか??


 俺が心配を感じる中、イリビィートは顔色を全く変化させず冷静に、


「あら……? 貴方って、短気なのね?」


「く、くそが……。確かお前、『六魔柱』だったよな??」


「それがどうしたのかしら??」


「この際、魔王の弱点を吐くまで拷問してやる……」


「無駄なことね……」


「くっ…………」


 反論を繰り返し、看守を挑発している。


 と、差し出がましい態度のイリビィートが途端に俺の方へ顔を向け、口を小さく動かし、


「せっかくバレない様にしてあげているのだから、守り切りなさいよ……? ついでに、その人は同志なのよね……??」


「え?」


 俺はワケの分からぬ発言に瞬間戸惑ったが……数秒考えて、言葉の意図が分かった。


 『バレない様に』『守り切りなさい』とは……鍵の存在を隠しきれという事なのだろう。

『その人は同志なのよね?』というのは……アスモリは脱獄仲間だと確認してきているのだろう。


 イリビィート……お前。自身を身代わりに……。


 俺は、小さく頷き、


「うん……」


 その後、大きく頷くと、


「了解したっ!!」


 感動のあまり、大声で叫んでしまった。


 当然、俺の行動を不審に思ったであろう看守が、


「おい、お前……急にどうしたんだ? 答えないと、お前も拷も――……」


「何か隠し事をしているという勝手な決めつけは、良くないと思うわ?」


「く……生意気な」


 再びイリビィートの唐突な反論に助けられた。


 足元を掬われた看守は、額に血管を浮き出させて、


「……お前ら二人、何をしている!! 早く仕事場へ向かえ!!」


「「は、はい!!」」


 アスモリと共に威勢良く返事をすると、イリビィートへ決意の眼差しを見せ付け……看守に腕を引かれながら、場を離れた。

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