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冒険という名のパラダイス!!  作者: めーる
第6章 ダンジョンで、魔族の赤ちゃん拾いました!!
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6章 第8話

「そういえば、呪いの絵本に続いて、呪いのブレスレット。どうやって入手したんですか? 呪いの魔法具の類は、そう簡単に入手できるモノではないと思うのですが?」


 城への帰路、ソフラが店主に訊いた。

 店番を城の兵士に不本意に変わってもらい、半ば強引に城に連行されているとも言える店主は、あまり良い表情を浮かべていないのが見て分かる。


「……買い取ったんだよ」


「買い取ったんですか。どなたから買い取ったんです?」


「すまないが、それは店のルールとして黙秘させてもらっても良いか? 俺の店に物を売りにくるやつも立派な客だからな。いくら俺が商売人と言っても、客の情報は売ることはしないからな」


 そう言って固く口を閉じた店主に対して、セリカがちょっとキレ気味に、「ちょっ、私の命が掛かってるのよ!? アンタに呪具を売りつけた売人の一人や二人、さっさと教えなさいよ!」と言い放った。ブレスレットを装着している右腕をブンブン振り回して、「ちょっとカナヤ。アンタからも少し、この呪物コレクターになんか言ってちょうだい!」と俺に、店主への叱責を求めてきた。


「どちらかと言えば、呪物コレクターはお前、セリカだろ? ……まぁ、店主さんになんか言えって言われてもなぁ。大切な仲間の命が掛かってるから、僅かな情報でも良いから助かるような手掛かりを頂けないか。そう懇願することしかできないよなぁ」


「なら、早く店主様に懇願してちょうだい! 私も一緒に懇願してあげるから! ほら、一緒に!」


 勢い良くセリカの右手が、俺の後頭部を触れてくる。店主に向かって一緒に頭を下げて、情報の引き出しを懇願しようというわけだろう。ブレスレットが頭に擦れて痛っ。痛い、痛ッ!


「ちょっ、痛ってぇなぁ! セリカ、お前良い加減にしろよな! もとはといえば、お前がそのブレスレットを装着したことが原因だろ? それ、俺は止めてたからな!」


 セリカと言い争っていると、店主が俺たちにむかって呟いてきているのが聞こえてくる。


「……申し訳ないが、客の情報は言えない。しかし、いま気付いたことはある」


「今気付いたこと? なによ!」とセリカが泣き喚きながら、店主を睨みつける。そんな睨みに対して店主は一切の怖気けを見せずに、ある一点を指差した。その先は、ソフラに抱きかかえられている赤ん坊。赤ん坊の額にみえる、ひし形の紫色の宝石。


 ……ん? 紫色の宝石?


 俺は直ちにセリカの腕にあるブレスレットに視線を移す。ブレスレットに散りばめられている宝石。くすんでいる紫色のそれは、赤ん坊の額にあるものと酷似している。カタチを改めて注目してみたが、全てひし形のものが装飾されている。


「このブレスレットに装飾されている宝石。この赤ん坊ともしかしたら、なにか関係あるんじゃねぇか?」


 そんな店主の言葉に対して、ソフラは抱きかかえる赤ん坊の額の宝石を吟味しながら「……魔族。宝石。紫」とやらなにかモゴモゴと囁いている。と、はっとした表情で「……この国に保管されている魔剣にも、同じモノが付いていた」と呟いた。


「魔剣?」と俺が訊いてみると「エンペラー・ジ・エンド・ソード」と訳のわからない言葉がソフラから返ってきた。


「……エンペラーなんちゃらそーど?」と訊き返してみると、「皇帝の終焉の剣」とハッキリとした言葉がソフラ――ではなく、店主から返ってきた。いつも堂々といている店主の声が、震えている。謎に緊迫した空気が場に流れはじめる。


「おい、なんだよ! その剣? 皇帝の終焉の剣って!」


 重っ苦しくなりつつある場の空気をかき乱したかった俺の想いと、俺の好奇心が、前のめりで店主とソフラに尋ねた。そんな俺を他所に、店主は、重っ苦しい顔つきでソフラに問いかける。


「……かつて魔王が生み出した、第二の魔王とも呼ばれる剣。おい、ソフラっていうお嬢さん。この王国にそいつが保管されているっていう噂、本当だったのか?」


「……」


 無言を貫くソフラ。城を目指す足取りは、少しばかり早足になっている。


「……いま私が抱きかかえている赤ん坊こそ、エンペラー・ジ・エンド・ソードなのかもしれない」


 信じられないほどのあぶら汗を額から似合わなく垂れ流しながら、ソフラが呟いた。対して、セリカが物申す。


「急なド下ネタやめなさいよ! なにが、この赤ん坊こそ、エンペラー・ジ・エンド・ソードよ! ふざけないで! その子はまだ赤ん坊よ? きっとカナヤのエクスカリバーよりも、エクスカリバーしてないわ! いま、このくだらない瞬間にも私の寿命は削れているのよ? 一刻も早く、ブレスレットの手掛かりを見つけなきゃいけないの!」


「……」


 ソフラは一切反論することなく、赤ん坊を抱きかかえて黙々と城を目指している。歩みは段々と小走りに変化した。俺らも同様に続いて、城を目指す。


「ちょっと、皆んな? 私の声が聞こえてないの? むきー! 無視しないでよ!」


 能天気に我が怒りを皆にぶつけるセリカ。きっと、生命力はゴキブリの魔物並に違いない。

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