6章 第6話
「戦闘狂とは、酷いこと言ってくれますね。私は、メイドですよ?」
とは言いつつ、モップブラシを手に持ち構えるソフラ。モップブラシの攻撃力はたかが知れている。それに、この骸骨達に物理攻撃は通用しないのだ。
「ソフラ。こいつらに攻撃は通用しないんだ……」
俺がそう説明する中、王冠を被るデカい骸骨がソフラに襲いかかる。デカい拳が、ソフラの頭上で大きな影をつくっている。どうやら俺が話しかけたせいで、その迫ってくる勢いに気づいていないようだ。
「危ない!」
責任を感じながら俺は叫ぶ。そしてヒノキ棒を、王の骸骨へと構える。そして……。
「くらえ、この野郎!」
魔力をたっぷり込めた火の玉を棒先端から勢いよく発射した。だが、その火炎は骸骨の身体をすり抜けて、部屋の天井や壁を炎上させることとなった。その隙にも勢いよく振り下ろされる骨の拳。そして、それはソフラを潰した……。かと思われたが。
「あれ? 生きてる……?」
「生きてたらダメなんですか?」
「いや、そんなことないけど……。てか、よくそんな冷静でいられるな!」
骸骨の巨大な拳を貫通する様に立って、こちらにジッと落ち着いた眼差しを向けてくるソフラ。ため息を吐いている。
「はぁ、冷静もなにも……。周囲を見てみてください。貴方が発した火炎以外では、家具や人々。無傷じゃないですか」
これを耳にしてハッと俺は気が付いた。
「も、もしかして……。こいつら、お互いに攻撃が当たらないのか!?」
「そういうことですよ。じゃなければ、メイドである私が、こんな先頭に立って闘おうとするわけないじゃないですか」
「もしかして、コイツらが幻みたいな存在だってこと知ってたのか……?」
「はい、もちろん。部屋に入ってきたとき、セリカが手にしている魔法の絵本が視界に入ったので……」
ソフラは言いながら、魔法の絵本がある場所へと向かう。そして、絵本を手に取るなり真っ二つに破いた。それを見てセリカが、大声をあげる。
「ちょ、本! さっき買ったばかりの本なのに……!」
そんな悲痛が響く中、骸骨達の影はみるみる薄くなって消えていく。それを見届けたソフラは、微笑を浮かべる。
「これにて、一件落着ですね」
その後にソフラは、表情を厳しいものにしてセリカの方に顔を向ける。
「にしても、魔法の絵本とは……。大変珍しいモノがあったものですね」
「なな、なによ! 売っていたモノを買っただけよ! そんな怖い顔で見ないで!」
「なるほど……。では、早速。その魔法の絵本が売っていたお店に行ってみましょうか」




