6章 第5話
「わ、わかった……! いや、でもどうやって? 攻撃とか、効かないんだよな?」
相手は霊体。先ほど王宮に入ってきた時、兵士たちは攻撃が通じないとか言っていた。倒し方など知らない。下手に攻撃したら、恨みを買って一方的な暴力を振るわれるかもしれない……。
「うむむ……」
俺はポケットに入っているヒノキ棒を握りしめながら深く悩む。
(よくよく思い返せば、まだ攻撃はされていない。まだ俺に被害は及んでいないんだ。多分、嫌なことをしなければ攻撃してこないのでは? じゃあ、もういっそ仲良く同居するとかでも良いのでは?)
何をトチ狂ったのか、俺の口が勝手に動きだす。
「やぁ、骸骨くん。仲良くしないかい?」
「なに言ってるのよ!? カナヤ。アンタ、この骸骨の骨格が女性だからって甘ったれてるんじゃないわよ!! この女たらしっ!!」
「いや、なんでそうなるっ!? 俺はただ仲良くした方が良いかなって……」
というかこの骸骨、女性だったのか。セリカ、よく見分け付いたな。
セリカに言い返している最中、骸骨はギギギッと小刻みに音を鳴らして俺の方を向いた。そして、ユックリと白い顎が揺れ動く。
「ぅ、ゔっごごごご……。あゔぅぅ」
「えっ、なに。なんて言ったの!? ものっすごく怖いんだけど!?」
俺が背筋を伸ばし冷や汗をかいていると、隣でソフラが呟く。
「お前、良い男。仲間にしたい……」
「うっそだろ……!? 俺、そんな目で見られてるの!?」
「はい、嘘ですよ……。骸骨の言葉を理解できるわけないじゃないですか……。えっ、もしかして。骸骨に惚れられたかと思って、少し嬉しくなっちゃったりしました? 貴方って、そんなにモテないんです??」
(くっそ、このメイド……!! いつか絶対に弱みを握って、服従させてやる!!)
呪いをかけるようにソフラを睨みつけていると、再び目前の骸骨が震えた声で発してくる。
「ゔぅ……。あゔ、あぅ、あゔぅ……。あう、おう、王、王、王ぅゔぅうう……」
「えっ、王? なんか王って、言ってないか??」
「あら、奇遇ですね。私にも、そう言っているように聞こえました」
「だよな……」
俺とソフラがそんなこんな確かめ合っていると、足元が薄っすら暗くなった。まるで、背後に大きな何かが立っているような影が足元に……。
「なぁ、背後になんか存在を感じるんだけど……」
「あら、私もですよ……」
俺とソフラは、恐る恐る背後を振り向く。
刹那、言葉を半分失いかけながらセリカが唇をパクパク動かす。
「あ、アレは……!? 確か、王……。絵本に書いてあった……」
背後を振り向き切るとそこには、俺の身長の二倍はある骸骨が存在していた。太い骨には、黄金の王冠や真っ赤なマント、煌びやかなアクセサリーが沢山身に付いている。
「うぅ、うわぁあああああ!?!?」
俺が声を荒げる隣で、ソフラは冷静に唇を動かす。
「倒し甲斐がありそうですね……」
「なに戦闘狂みたいなこと言ってるんだよ!?」