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冒険という名のパラダイス!!  作者: めーる
第5章 いざ、魔王討伐!!
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5章 第71話

「なな、なに……。蛇神? 名前からしてヤバそっ!?」


 ミネルは鳥肌を立てながら、再び周囲を見渡す。そんな中、ベジッサがミネルの手を取り立ち上がりながら言う。


「数千年に一度、目覚める伝説の大蛇。普段は、地面深く土の中で眠っている。そんな大蛇が通った道は、大災害が訪れる……。そんな災害が今、街で起こっている。それに、この花畑だって……」


 ベジッサがブツブツと下を向いて呟いていると、シュティレドがミネル達の存在に気付く。


「えっ、いつから居たの……?」


「さっきから居たよ!! 早く気付け!!」


「ご、ゴメンね……。そんなことより、街の様子が」


 シュティレドは、天高く灰色の煙を上げている街を見つめ直す。その背後で、ミネル達も街を見つめる。と、あることに気付く。


「な、なんだアレ……?」


 赤く光る街の中を悍ましく動く、大きな黒い影が見えた。漂う煙にぼんやりと隠れており、その実態を確実には目視できないが、何か山のようなものが蠢いている。


 皆がその光景に呆然としていると、ベジッサが急に街に向かって走り出す。


「蛇神め……! このままだと、街が完全に……!!」


 そんなベジッサの行動を目にしたドルチェが、グワッと目を大きく開く。


「うわっ、いつの間にいたのぉ!?」


「いや、今まで気付いてなかったのかよ! 俺たち、どんだけ存在感が薄いんだ!?」


 ミネルがツッコミを入れた。これと被せるように、シュティレドが走り出す。洞窟から出てきた場所が、街からそんな離れていないことから、すぐに街に着くことは可能だろう。


「あんな危険なところに一人で行かせたら、どうなるか分からない。早く僕たちも行こう! 空を飛んで行こうと思ったけど、この煙じゃ……。だから、走って街に向かおう」


 空には多量の煙が漂っている。視界も悪いし、呼吸も噎せてしづらそうだ。


 ミネル達は、蛇神が地を抉り返しながら進んでいたのであろう、ボロボロになっている道の上を駆け走る。そんな中、イリビィートが呟く。


「あら。なぜ、貴方たちまで……? 王宮騎士団に追い付かれないように、早くこの土地を離れた方が良いんじゃないのかしら??」


「うるさい。僕も、一応はその騎士団なんだ!! だからこそ、向かわなければ。救いたいんだ!!」


 アフェーラと共に足を動かすテップルが、唾を数滴飛ばしながら一生懸命に口を動かした。


 対してイリビィートは、「そう……」っと冷静な表情で唇を動かす。


 そんな会話をしているうちに、街へと到着した。火の粉を散らして燃え盛る街の中では、沢山の家が黒炭と化して倒壊している。それを背景にして、山のように大きな蛇神が、太く長い身体を畝らせている。見上げても、見上げ切れない程に大きい。空高くでモクモク漂う煙のせいで、顔が見えない。なによりも……。


「熱いっ! 火がやべぇ!!」


 ミネルが額の汗を手の甲で拭き取りながら、苦しそうに叫ぶ。ベジッサを追いかけて此処まで来てしまったことに、少しばかり後悔した。火傷しそうで、なんか怖い。


 周囲一帯で燃え盛っている炎を避けて歩くミネルに、イリビィートは涼しい顔を見せつける。


「なな、なにをそんな……苦しんでいるの。貴方、だ、だらしないわね」


「いや、無理するなよ。汗だくじゃん!? よく考えれば、お前。前に住んでたとこ、雪とか降ってたよな?」


 二人が少々仲悪く会話をして歩いていると、アマーロが石化しているユンバラを引きずりながら遠くを向いて叫ぶ。


「あ、アレは。ベジッサ……! 早く、ユンバラさんを元に戻しなさいよぉ!!」


 この声に気付いたベジッサは足を止めて、自分自身の足元を見つめながら、ミネル達の方へと身体を向ける。


「追ってきたのね。コレをやる、早く帰れ。コレは、自分自身の問題」


 言いながら、手に持つ石をアマーロに投げた。石は周囲の炎の灯りを反射しながら、コロコロと地を転がり、ユンバラの足先に軽く当たって動きを止める。


 そんな時。


「シャァァアアアアアアーーッ!!!!」


 蛇神の威嚇のようにも聞こえる鳴き声が、空間に大きく響いた。空気を震わせるぐらいに大きな音は、ピリピリと身体を刺激する。


「うわぁぁああああっ、鼓膜が破れそう!」


 ドルチェが、両耳を塞いで涙目になる。周囲の皆も、行動にしていないだけで同じことを感じているのだろう。


 このドルチェの声に反応したのか、蛇神が首を低く地に近付かせて、煙の中から顔を露わにさせる。長い舌をピロピロッと、口先から素早く見せ隠ししている。


「…………」


 蛇神は無言で、黄金に輝く巨大な瞳で皆の姿を見つめる。


「この、クソ怪物……。早く、土の中に帰れよ」


 ミネルがキリッと睨みながら言った。名前に神と付いていても、所詮はただの図体がデカいだけの蛇。言葉を喋れなければ、言葉を理解することも出来ないのだろう。だから、悪口を言ってやろう。これまで溜めてきたストレスを全て吐き出してやる勢いで!!


「このアホぉ! こっち見んな、アホぉ!!」


「……我に向かって言っているのか?」


 蛇神が太い声で喋った。コレに驚いたミネルは、全身から脂汗を発しながら顔を青ざめさせる。


「おお、お前。会話できるのっ!? なにそれ、聞いてない!? ズルい、それ!!」


「散々悪口を言ってくれていたな。今回の生贄は、お前で決まりだ!!」


「生贄!? なにそれ、聞いてないっ!? ねぇ、皆んな。俺のこと、守って!!」

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