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冒険という名のパラダイス!!  作者: めーる
第5章 いざ、魔王討伐!!
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5章 第69話

 ミネルはガハラドの言葉を聴きながら、テップルの方へジッと視線を向ける。


 その姿を見て、確かに人類種ではないということを認識できた。露わとなっている腹周りに、鼠色の毛に覆われる尻尾のようなものが、ちんまりとグルグルに巻かれているのだ。


「そ、その尻尾は……!」


 唐突に、シュティレドが両眼を大きく見開いて呟いた。


 この一言に、テップルは青ざめた顔をしながら素早く両手を動かし、尻尾をどうにかしようと焦りはじめる。


「ああ、あうぅ……! べ、別に、皆を騙そうとしていたわけでは……!!」


 この言い訳を鼓膜に響かせるなりガハラドが、顔を真っ赤にして叫ぶ。


「現に貴方は、私のことを騙していたではないですかっ! 仲間である騎士団たちの事も……! 国王は、貴方の正体を知っているのですか!?」


「そ、それは……」


 モゴモゴと口を小さく動かしながら、テップルは俯いて黙り込んだ。


 そんな時。


「こっちをみて……!!」


 ベジッサが、ガラハドに大きな声で呼び掛けた。


「えっ……?」


 ガハラドは反射的に、呼び声が聞こえたベジッサの方を振り見てしまう。刹那、視線を上に向けたベジッサと目が合い、石化してしまった。


 ガハラドの隣に立っていたミネルも同様に、ベジッサと目が合ってしまい石化してしまう。


 石化したミネルを見つめながら、ベジッサは若干引き気味に呟く。


「えぇ……。なんで、貴方まで??」


 そんな光景を目前に、テップルが驚いた様子で言う。


「も、もしかして僕を守ってくれたの……? で、でも……、どうして??」


 この質問にベジッサは、再び地面に視線を向けながら呟く。下を向いたのは、これ以上の誰とも目を合わせないようにする為なのだろう。


「勘違い。……この場所で、喧嘩をして欲しくなかったから」


「そ、そうか……」


 テップルは言葉を返答して唇を閉じると、周囲を静かに見渡しながら再び声を発する。


「み、皆んな……。ごめん、人類種だと偽ったりしていて……」


 瞬間、テップルの右耳に温かな声が響く。


「気付いてた……。でも、別にそんなこと関係ないよ。貴方がテップルだってことに、変わりはないから……」


 声が発せられた方に顔を向けてみると、薄っすら微笑みを浮かべるアフェーラが、視界に映った。


「えっ、気付いていたの……?」


「うん。身体にテップルを取り込んだ時に……」


 そんなこんな会話をしていると、鎧を纏う騎士団のであろう足音がガチャガチャ響いてきた。まだ音が小さく聴こえてきていることから、そんな極端に近くまでは来ていないだろう。


「この足音は、王宮騎士団だね……」


 神妙な表情でシュティレドが、周囲の皆に向かって言った。


 続けて、イリビィートが冷静に口を開く。


「石化しているガハラドを見られたら、大変なことになりそうねぇ。かといって、石化の状態を解くことは良い判断ではないわね……」


「……机の下に、隠し通路がある」


 イリビィートの言葉に声を重ねるように、ベジッサが俯きながら机の下を指差して言った。


「えっ!? 隠し通路ぉー!! なにそれ、なにそれ!! 凄い、楽しそう!!」


 隠し通路と聞いて、ドルチェが突然に瞳を輝かせて嬉々と興奮しはじめる。


 そんな行動を隣にユンバラが、抑えていた力を解き放つように叫び声を上げる。


「ゔっ、うぉぉおおおおおおぅうゔゔっ!!!! も、もぅ。限界だぁああああっ!!」


「ちょっ、本当になんなのぉ!? 早く、どうにかしないとぉ!!」


 大きな声を横に、ドルチェが両耳を抑えながら迷惑そうに眉間にしわを寄せはじめた。


 と。


「ユンバラ……! こっちを見ろ!!」


 再びベジッサが顔を上げて、瞳のチカラを使用する。


「ゔぅ……! うぉぉおおおおおおぅうう!!!!」


 ユンバラは叫びながら石化していった。


 固まったユンバラを見つめながら、アマーロが頬を赤らめて言う。


「早く机を退かしてぇ、隠し通路に入りましょう……。ユンバラのことは、任してくださいねぇ」


 言い終えると、アマーロはユンバラを担ごうと歩きはじめた。


 そんな中、シュティレドが机を退かす。机を退かしたことで、明るみに姿を現した地面には、四角い切り込みの様なものが大きく刻まれている。


「ん……? 取っ手のようなものがあるな」


 地面に刻まれている四角い線の内側には、取っ手のような穴がポカリと薄く空いていた。


 シュティレドは、そんな浅い穴に指を嵌め込ませると、勢い良く腕を上に引く。


 刹那。四角い土の板が宙に舞い、地には暗く深く続いている階段が現れた。


「中々に完成度が高そうな、通路だね……!」


 シュティレドはひっそり呟くと、一人先に地下に続いている階段を踏みしめた。


「そんなに急がなくても……? まぁ良いわ。あたしも行くと、って――」


 階段に足を付けようとしたイリビィートの瞳に、石化したミネルの姿が映った。その所為で、思わず口の動きが止まってしまった。


「めんどくさい奴ねぇ……。ベジッサといったかしら? この男の石化を解いてくれないかしら?」


 イリビィートが横目で言うと、地を見つめているベジッサが反応して口を動かす。


「分かった……。とりあえず、石を返して」


 ベジッサは言いながら、テップルの手に握られている石を指差した。


「えっ、この石!? わ、分かった!!」


 テップルは慌てながらベジッサの方へと向かい、石を手渡した。


「……ベタベタする」


 石を握ったベジッサの眉間にシワが寄り、文句が溢れた。そんなながらも、俯きながら立ち上がりミネルの元へと歩いて向かう。


「……この石の光が強く当たった者の石化は解かれる」


 そう呟きながらベジッサは俯きながら脚を止めると、ミネルの額に優しく石を押し付けた。


 刹那、石化状態から復活したミネルが周囲を見渡す。


「え……? 誰か俺のこと呼んだか??」


「誰も呼んでないわよ……」


 イリビィートが、薄笑いしながら言い切った。そして、付け足すようにもう一度ミネルに向かって唇を動かす。


「そんな事よりも、早くこの洞窟から出るとしましょう?」


「えっ……? いや、でも出口は塞がっているって、ガハラドが石化してる!? それに、なんか足元に階段!? 隠し通路か!?」


 周囲を見回して色々なことを瞳に捉えたミネルが、思わず目を見開いて声を荒げた。


 そんな驚くミネルの前をドルチェが、嬉々と笑みを浮かべながら横切って、隠し通路に脚を踏み入れる。


「シュティレド、待ってぇー!!」


「んっ? この声は、ドルチェだな……?」


 シュティレドの冷静な声が、床に見える隠し通路からミネル達の鼓膜に響いてきた。


「そうだよぉ!!」


 ドルチェは返事をしながら、シュティレドを追って階段を駆け降りて行く。


「テップル……。私たちも、行きましょう」


「そうだね……!」


 そんな会話をしながらアフェーラとテップルも、ミネルの前を横切って階段を下って行く。


「私も、そろそろ行くとするわぁ」


 そう言いながらアマーロは、石化したユンバラの脚先を引きずりながら、隠し通路の方へと向かいだした。


 ズルズルと引き摺られて運ばれているユンバラを視界にして、心配になったミネルが言う。


「お、おい……? 大丈夫かよ??」


「大丈夫よぉ……! 心配しないで欲しいわぁ」


 アマーロは言いながらミネルとイリビィートの前を横切ると、ガコンガコンと不吉な音を立てながら階段を降りはじめた。不吉な音は、ユンバラの脚先と階段が勢いよく触れ合って響いているように感じ取れる。


 ……ユンバラの脚、割れてもげたりしないよな??


 ミネルは心臓をヒヤヒヤとさせながら、アマーロが階段を降りている姿を静かに見守る。


 そんなミネルの隣に立っているイリビィートが、突然に首を傾げて言う。


「ベジッサ……。貴女は、どうする気なのかしら??」


「……石化している者がこの場にいる。だから、私は残る」


「いいえ、それは無理ね。貴女も、あたし達と一緒に来なさい」


 イリビィートは言い終えると、先程に退かした机の上に置いてある一冊の古びたノートを手に取って、俯くベジッサの足元に軽く投げ落とした。


「そのノートの中身が、貴女の本心ならばね……」


 その後にイリビィートは、ベジッサに背中を向けて、足元に確認できる階段を一歩だけ降りた。

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