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冒険という名のパラダイス!!  作者: めーる
第5章 いざ、魔王討伐!!
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5章 第66話

 ガチャガチャとした多くの足音は、迷うことなくユンバラ達の方へと真っ直ぐに向かって来る。


「王宮騎士団だな……。多分、ミネル達もいるんだろ」


 そう思ったガハラドは、急いで足音がする方へ駆け向かおうと、足を一歩前に大きく踏みだす。


 刹那。


「…………待って。石を探さないで、行ってしまうの?」


 暗闇の中から、ベジッサの声が静かに響いてきた。


 ユンバラは一旦、足を止めて口を開く。


「いやいや、探すよ……。良かったら、お前も来いよ。……あっ、そういえば」


 ユンバラは思い返した。ベジッサが石化の元凶として、王宮騎士団に命を狙われていることを。


 一応は王宮に使える騎士団。ガハラド程ではないと思うが、一人一人の力も強いのだろう。


 そう考えながら、ユンバラは言葉を返す。


「あぁ……。シッカリと探すよ。お前の宝物なんだもんな!」


 と、その時だ。


「おいっ、あそこに誰かいるぞ!!」


 松明を掲げている兵士が、大きな声でユンバラ達を指差して言った。


「あっ、やべ! 見つかった!!」


 ユンバラは急いで、逃げるために背後を振り返る。


「逃げるぞ!!」


 自分でも理由は分からないが、ユンバラはとにかく兵士たちから逃げようと考えた。


「…………さっき来た道を真っ直ぐに戻っても、行き止まり」


 そんなベジッサの声が、ユンバラの鼓膜を優しく刺激した。そして思い出す。ドルチェが石を引っこ抜いたことで、道が岩で塞がれていることを。


「そう言われても、じゃあどこに行けば!!」


 松明も持たないユンバラは、暗闇の中を殆ど感覚で歩いていた。今から、新しい逃げ道を見つけれと言われても無理がある。


 ユンバラが目を凝らして周囲を見渡していたら、片手に立松を持つ一人の兵士が勢い良く向かってきた。


「おいっ、お前は誰なんだ!! って、ん?? 確かお前は……?」


 ある程度に距離が詰められたおかげで、ユンバラの正体がバレてしまったようだ。洞窟に来るまで一緒に行動していたから、顔に見覚えがあったのだろう。


「なんだよぉ……。洞窟に潜む怪物とかだと思ったぞ……!」


 一人の兵士は笑いながらユンバラへと、ユックリと歩み寄ってくる。


 刹那。


「…………ん? えっ……あっ、」


 ベジッサの姿を見てしまったのだろう。近寄ってきていた兵士が、石化してしまった。


 そして運悪いことに、一人の兵士に続いて向かって来ていた者たちが、それに気付く。


「おいっ! あいつ、石化してないか!?」


「うわっ、本当だ!! さっきまで、活き活きとしてたのに!!」


「じゃあ……、近くに石化の元凶が居るってことだよな!!」


 兵士たちはそう言いながら、剣を鞘から音を立てて抜きはじめた。


 剣が引き抜かれる音を耳にして、ユンバラは焦りながら再び辺りを見渡す。


「おいおい、ヤバいよ!! 今この状況で此処にいたら、俺が石化の元凶だと絶対思われる!!」


 幸いなことに、駆け寄ってくる兵士たちにユンバラの姿は見られていない。石化した兵士が持つ松明が照らす範囲から、少々に離れているため、遠くから姿は暗闇に隠れて見えていないのだろう。


 ユンバラはとにかく焦りながら、逃げ道を探す。近くに松明があるおかげで、先程よりも多少に視界が良くなっている。


「ヤバい……。どこに行けば……!」


「……貴方から右側の位置。暗いから見え辛いけど、分かれ道になってる」


 ユンバラが焦っていると、低く掠れた声でベジッサが言ってきた。


「そうか! ありがとうな!!」


 お礼を言いながら、分かれ道があるという方向へと身体を動かす。


 瞬間。


 色白で細身な腕と、緑色の美しく長い髪の毛が……、ユンバラの視界端に映り込んだ。


「えっ……、あっ」


 あまりに感動的な光景に、ユンバラの動きが一瞬だけ石化したかのように止まった。


 それを目にしたベジッサが、暗闇の中から低い声で問い掛ける。


「…………貴方だけ。やっぱり、此処に残る?」


「そそ、そんな訳ないだろう!!」


 ……執念深く言い訳をすれば、王宮騎士団たちは現状を理解してくれるのだろうか?


 ユンバラはそんな甘いことを想像しながらも、更に唇を動かしてベジッサに言い切る。


「……お前の宝物。見つけるまで探すって、決めたんだよ!」


「…………そうなのね」


 こんなやり取りをしながら二人は、暗闇に染まる道の中を駆け進む。


 しばらく走っていると、前方から騒がしい会話が聴こえてきた。


「ねぇ、ウチの宝物がぁぁああっ!! ベットッベットだよぉぉおおおおーぅ!」


 ユンバラには、とても聞き覚えのある声。


「……ど、ドルチェだな」


 呟きながら前へと進んで行くと、予想通りドルチェの姿が薄っすらと見えてきた。それと、困り果てたように立ち尽くしているテップルとアフェーラの姿も。


 ……なんか、トラブルが起きてるな。


 ユンバラは思いながら、ベジッサに問い掛ける。


「なぁ、近くに分かれ道とかあるか?」


「……ない」

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