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冒険という名のパラダイス!!  作者: めーる
第5章 いざ、魔王討伐!!
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5章 第61話

「おいおいっ、どうするんだよ! この状況っ!!」


 帰り道を塞がれて焦るミネルは、山のように積み上がった岩を強く叩く。


 そんな中、ガハラドが冷静な様子でスタスタと歩いてきて唇を動かす。


「まぁ、落ち着いて下さい。出入口は、一つじゃないかもしれないですよ。とりあえず今は、元凶を倒すことだけを考えましょう」


 言い終えると、ガハラドは再び列の先頭へと戻っていく。


 その後すぐ、皆を鼓舞するかのように勢い良い口調を洞窟内に響き渡らせる。


「此処に来た目的は、ただ一つだけです!! 言うまでもないですよね!! さぁ、皆さん!! 引き続き、奥に進むとしましょう!!」


「うおぉおおおおおおおぅぅううーっ!!!!」


 ガハラドの声に負けじと、手に持つ松明を高く上げて叫んでいる兵士達の声が、洞窟内に大きく響き渡る。


 こんな様子を目前で見ているミネル達は、心深くに思う。


 ……自分達がピンチだっていうのに、任務優先なのかよ! 人間として、どうかしてる!!


 モヤモヤとした不安や恐怖や気持ち悪さが、ミネル達の心を包み込んだ。


 と、そんな時。


「…………出ていけ」


 低く掠れた幽霊のような声が、皆の鼓膜を刺激した。


 その場に居る全員が、驚きながら揃えて脚を止めて立ち止まる。


「えっ、今の声。なんだ……!?」


 ミネルは目を丸くしながら周囲を見渡す。だが……、声を発したであろう者の姿は、何処にも見当たらない。


 声の質からして、兵士など顔を知っている者から発せられたものではないと、判断ができる。初めて耳にする声質だ。


 何処からともなく聞こえてくる声は、再び低く掠れた声で皆へと伝える。


「……早く出て行かなければ。街の皆のように、石に変える」


 瞬間、ガハラドが身を乗り出して反応する。


「石に!? 何処から語りかけているかは分かりませんが、貴方が街の皆を石に変えたんですね!!」


「…………」


 謎の声からの返答は無かった。


 それに対してガハラドは、頷いて言う。


「無言ですか……。ならば、追い詰めて真実を吐かせるのみですね。皆さん、気を取り戻して進みましょう!!」


「うぉぉおおおおぅー!!!!」


 再び兵士達の声が、洞窟内に響き渡る。


 否や。


「…………お前の命を頂くぅ」


 低く掠れた声が、ユンバラの背後から微かに聴こえてきた。


「えっ!?」


 ユンバラは焦りと恐怖を感じながら、イリビィートとシュティレドの姿を確認する。どうやら二人とも、声が発せられていることに気付いていないようだ。


 と、再び。


「…………お前、今までどんな悪さをしてきたぁ」


 ユンバラの背後から、掠れた声が微かに発せられた。


 先程と同様。ユンバラ以外の皆は、声に気付いていないようだ。


 ユンバラは立ち止まり、声が発せられる背後を恐る恐る振り返ってみる。


 刹那。ワザと低く掠れた声で、ユンバラに訳の分からない事を語りかけてきているドルチェの姿が瞳に映った。


 ドルチェはユンバラと目が合うなり、ギョッと肩をビクつかせながらも笑みを浮かべ呟く。


「え、へへへへぇ……。驚いたぁ??」


「紛らわしいんだよぉ!! この、野郎ぅぅううううっ!!!!」


 ユンバラの怒る声が、洞窟内に大きく響き渡る。


 ヒェッと竦みながらドルチェは、上目遣いを使いで口を開く。


「ごご、ごめんねぇ。……コ、コレあげるから、許してぇ??」


 そう言ってドルチェは、ユンバラへと先ほど壁から引っこ抜いた輝く石を差し出した。


「いらねぇよ!!」


 ユンバラはドルチェから奪うように石を受け取ると、地面に強く叩きつけた。


 強度が高かった石は傷一つ付くことなく、地面をコロコロと転がり、闇の中へと消えていく。


「ひっ、ひどぉいぃー!!」


 眉間に皺を寄せながらドルチェは、石を追って走っていく。


「なにがヒドイだよ! お前の方が俺に――って、アレ? 皆んなどこ行った?」


 ユンバラがドルチェと会話に夢中になっている間に、皆は洞窟の奥へと行ってしまったようだ。


 遠くに目を凝らしてみると、松明が発する柔らかな明かりが確認できる。


「なんだ。あそこか……」


 ユンバラは安堵のため息を吐きながら、ドルチェに一言を伝えようと背後へと顔を向ける。


「ドルチェ、早く行くぞ……。って、え??」


 ドルチェの姿が、どこにも見当たらない。暗闇の中だから見当たらないかと思ったユンバラは、周辺を歩いてドルチェを探してみる。


「はぁ、ドルチェ……。次は、隠れんぼか??」


 言いながら歩いてみるが、ドルチェの姿はどこにも見当たらない。それどころか、ドルチェの足音や声すらも。


「……えっ!? マジの迷子かよ!!」


 焦りを感じたユンバラは、少々に荒く足音を立てながらドルチェを捜す。


 と、そんな時。


「…………貴方。私の宝物を地面に叩きつけたわね。……ヒドイ」


 低く掠れた声が、耳元で囁いた。

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