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冒険という名のパラダイス!!  作者: めーる
第5章 いざ、魔王討伐!!
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5章 第60話

 鎧を纏い進行する兵士たちの足音が、洞窟内でガチャガチャと響き渡る。


「――ねぇ、なんか聴こえてこない? この音……。もしかしたら、王宮騎士団!?」


 足音は、遥か遠くを進んでいるテップルの鼓膜を微かに刺激した。


 テップルの突然な言葉を受け取ったアフェーラは、脚を止めてジッと耳を澄ませてみる。


「…………。本当、なんか大勢の人が歩く音が聴こえる」


「だろう……! 追い付かれないうちに、早く石化の元凶を見つけよう!」


 テップルはそれだけ言うと……、アフェーラの右手を掴み、闇に染まっている洞窟の壁に触れながら脚の動きを速める。


 目が慣れていても、洞窟の中はとても暗く感じる。壁伝いに歩かなければ、道に迷ったり転んだりして大怪我をしてしまうかもしれない。


 テップルはアフェーラの手をギュッと握りしめながら、慎重ながらも脚を勢い良く進める。


 そんな状況の中。


「……ゔっ、痛っ!?」


 テップルの足先に、硬い何かが当たった。


「な、なんだ……?」


 目を凝らしながら腰を屈め、テップルは足先に何が触れたのかを確認してみる。


 今にも動き出しそうな兎の美しい石彫刻が、瞳に映った。きっと、本物の生物なのだろう。


「……コイツも、石にされたんだろうな」


 テップルが哀しげに呟きながら、兎の石肌を優しく撫でていると突然にだった。


 ――グゥゴゴゴゴォオぅううヴェェエえぇ!!!!


 背後に、何かが溶けて分解されているような奇音が響いた。


「……えっ?」


 音に反応してテップルは、後ろを振り返る。


 刹那、ドロドロの液体状に溶けているアフェーラが瞳に映った。バケツから零した水のように、地面に広がっている。


 あまりの衝撃的な光景を目に焼き付けたテップルは、顔を少々引きつらせながらも問い掛ける。


「アア、アフェーラ……? ど、どうした――」


 しかし。アフェーラは聴く耳を持たないで、まだ喋り終えていないテップルの顔に飛び込んだ。


「ゔぅ、うぐぅぅううううっ!? な、なんでこんな事を……」


 顔に張り付いた液体状のアフェーラは粘液質でベタベタとしており、剥がそうとしても中々に離れてくれない。


 次第に呼吸をすることが難しくなったテップルの目前は、真っ白になっていく。


 洞窟の奥でこんなことが起こっている中……、王宮騎士団の最後尾で脚を進めているミネルが突然に言う。


「なぁ……、俺たち必要か?」


 この発言に対し、同じく列の後ろを歩いているユンバラがすぐに答える。


「あぁ……必要だ。テップルを救う為にな」


 洞窟に潜入する寸前にガハラドの言葉を聴いたユンバラは、テップルをなんとか助けようと必死であった。


 そんな二人の会話に割って入るようにドルチェが嬉々とした笑顔で、壁を指差しながら何かを伝えようと唇を動かす。


「ねぇねぇ! なんか、ここから出てるぅ!!」


「えっ……? なにが出てるって??」


 言葉に反応してユンバラが、ドルチェの指差す方へと顔を向ける。


 キラキラとした宝石のような物が、壁に埋まっているのが確認できた。


「なんだそれ……?」


 ユンバラが首を傾げていると……、ドルチェは嬉々とした声を発しながら、壁に埋まる宝石のようなものを力強く掴みはじめる。


「よく分からないけどぉ、綺麗だからウチが貰っちゃおー!!」


 言いながらドルチェは、顔を懸命に真っ赤にしながら、壁に埋まるキラキラとした石を引っこ抜いた。


 刹那。石が埋まっていた場所を原点として、壁にピキピキと亀裂が入る。


 次第に天井から、小石がパラパラと降り落ちてきた。


「……えっ? なんか、洞窟が揺れてるぅ??」


 ドルチェは大事そうに輝く石を握りながら、周辺をキョロキョロ見渡して呟く。大きな音を立てて、洞窟が揺れている。


 と。異変に気付いたミネルの目前に、ドスンと大きな音を立てて巨大な岩が天井から降ってきた。


「うぉぉおおおおぅーっ!?!? なんだ、なんだっ、急に上から岩が落ちてきた!! 洞窟の主が仕掛けた罠か!?」


 そんな中、背後を振り返ったシュティレドが大きな声で言う。


「皆んな、大変だっ!! 道が塞がれてるよ!!」


 声に反応して、ミネル達も急いで背後を振り返り確認する。


 先程まで歩いていた道が、天井から落ちてきた岩によって塞がれてしまっている。


「……と、閉じ込められた?」


 ミネルが絶望を感じて呟く中、ドルチェは手に握る綺麗な石を見つめながら言う。


「……えっ、もしかして。ウチの所為??」


「この、小悪魔めがぁぁああああっ!!」


 ユンバラは顔を真っ赤にしながら、ドルチェを怒鳴りつけた。

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