表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険という名のパラダイス!!  作者: めーる
第5章 いざ、魔王討伐!!
159/190

5章 第57話

「――いやぁ。ミネル、どこに行ったんだろうねぇ?」


 アマーロの股に挟まれながら騎乗しているドルチェが、辺りを見渡してポツリと呟いた。


 この発言に、広げていた翼を閉じながらシュティレドが反応する。


「まぁ……。そのうち、此処に来るよ。とりあえず、ガハラドとかいう聖騎士さんが言ってたように、テントでも張ろうか」


「そうね……」


 意見に賛成してイリビィートが、静かに馬から降りて首を縦に振る。


 崖下に落ちて消えてしまったミネル達を捜しているうちに、東の洞窟前に到着してしまった。


 ジッと待っていても時間の無駄なので、シュティレド含め兵士達は、街を出発する時に放たれたガハラドの提案通り、洞窟の入口前にテントを張ることを決めた。


 そんな時。


 兵士達が馬に背負わせていたテント用具を持ち運びしている中、ユンバラが地面をみて気付く。


「ん? なんだ、この足跡……??」


 ユンバラの視線先には……、洞窟内に向かって進んでいる、最近できたのであろう足跡が存在していた。


 足跡の数から予想するに、一人ではなく二人が隣あって歩いて地に刻まれたものだろう。


「最近の足跡……。もしかしたら、テップル達のものかもしれないね」


 シュティレドが、ユンバラに近付きながら呟いた。


 刹那。


「ねぇー!! 二人揃って、おでこに皺を寄せて、なに考えてるのぉー??」


 嬉々とした笑みを浮かべてドルチェが、ユンバラ達の元へと走り向かってきた。


「こらっ、そんな勢い良く走ると転ぶわよぉー!!」


 心配そうに追いかけて、アマーロも走り向かって来ている。


 否や。


「ぶへぇ!? んゔっ、ゔぅ……! 痛いよぉぉおおおおーっ!! 膝小僧、擦りむいたよぉー!!」


 ドルチェが勢い良く地面に転がった。


「ほらっ、私が言ったようになったでしょう? 普段から翼で飛んで移動してる貴女が、脚を使って走るなんて慣れないことするからよぉ……」


 アマーロは言いながら、地面で蹲るドルチェへと心配そうに手を伸ばす。


「ゔぅ……。お姉ちゃん。ありがどゔぅぅうう……。ぐすん……」


 そんな一連の行動を目前で見ていたユンバラが、驚いた時のような表情で唐突に叫び声を上げる。


「ちょっ、足跡が!? お前が転んだ所為で、足跡が消えちまったよ!?」


「ふぇ? あしあと……??」


 ドルチェは差し伸ばされた手を掴みながら、ポカーンとした表情で首を傾げた。


 対してユンバラは、ギラリと目を見開いて唇を動かす。


「いやっ、テップル達の足跡かもしれないものが!? 転んだ時の風圧で、洞窟の中に続いていた足跡までも、地味に消えているじゃねぇかよ!?」


「そんなこと知らないわよぉ! 妹を悪者扱いする気かしらぁ!? ドルチェ、早くこの男から離れるわよぉ!!」


 アマーロは言い返しながら、ドルチェの腕を引いて起き上がらせると、翼を勢い良く羽ばたかせはじめた。


 翼から放たれる風によって、足跡は更に薄くなっていく。薄暗い洞窟の中にある足跡まで、消えていくのが確認できる。


 この行動にユンバラは、更に顔を真っ赤にして突っ込む。


「いやいや! やめろ! その動きをすぐにやめろ!?」


「えっ、なにぃ!? 私を引き留めているのかしらぁ!? えっ、えっ!? もしかしてぇ、私に好意でも持ってるのかしらぁ!?」


「ち、ちち違げぇよっ!?」


 ユンバラは頰を赤らめアマーロの言葉をキッパリと断った後も、引き続き口を開いて言う。


「足跡を消すなって、言ってるんだよ! ガハラドとかが此処に到着した時、なんかの証拠とかになるかもしれないだろう? なんで、俺がお前のことを……。まだ、出逢って間もないお前のことを……す、好きとか?」


「そ、そうねぇ……。消すのは勿体無いわねぇ。うん……。出逢って間もない貴方が、私のことを。す、好きなわけ、ないわよねぇ!」


 この二人の会話を小さな身体で見上げるドルチェは、ポカーンと口を開きながら呟く。


「……ん? なんか、生まれたぁ?? まぁ、どーでも良いや!! 足跡を消すのは勿体無いんだぁ!! ならぁ、ウチがいっぱい足跡を作ってあげよぉー!!」


「ちょっ、ドルチェぇええええ!! いや、この小悪魔めぇぇええええ!! 余計なことすんなぁぁああああっ!!!!」


 ユンバラはドルチェを直ぐに引き留める。


 しかし……。もう手遅れだった。


「え……? なにぃ??」


 そこら一帯の地面は、新しい足跡で塗り替えられていた。


「……もう、何でもないよ」


「そうなのぉ? うきゃきゃきゃきゃ!!」


 ため息を吐くユンバラと真逆に、ドルチェは嬉々としながら再び足跡を地面に刻む。


 アマーロは、そんな様子を瞳に映しながら、誰にも聞こえないくらい小さな声量で呟く。


「ゆ、ユンバラさん……。妹と一緒にぃ、遊んでくれているのねぇ……」


 途端に。


「ひぇ……!?」


 理由も分からない寒気に、ユンバラは襲われた。


 と……。イリビィートが、シュティレド達に向かって遠くから伝える。


「テント、張り終わったわよぉ……!」


 ユンバラ達が話している間に、テントが張り終わったらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ