表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険という名のパラダイス!!  作者: めーる
第5章 いざ、魔王討伐!!
148/190

5章 第46話

「裏切り者ってなんだよ! まるで俺が悪い奴みたいじゃんか!?」


「ウチみたいな、か弱い女の子を引き渡そうとするのは……悪役! 大悪党だよ!!」


 ドルチェは、ミネルの腰元を両手で強く引っ張りながら、頰を大きく膨らませた。


 そんな言葉を投げ付けられたミネルは、口を大きく開いて必死に言い返す。


「何が、か弱い女の子だよ!? 人の精気を吸い取っておいて、よくそんな事が言えるな!?」


「ゔぅ……っ!? ウチだって、吸い取りたくて吸い取っているわけじゃないのに……。シクシク、シクシク」


「お、おい。泣くなよ……」


 突然にシクシクと両手で目を抑え、静かに涙を流しはじめるドルチェを前して、ミネルは申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになった。


 と。


「あららぁ……。妹を泣かせるなんて、許せないわねぇ」


 宙に浮いている女性が、ミネルをジッと睨みつけながら呟いた。


 殺意に満ちた鋭い眼光と呟きを感じ取ったミネルは、慌て急ぎながら上空を見上げて唇を動かす。


「いい、いや……俺が泣かせたわけじゃないです! この子が、勝手に泣きはじめたんですよっ!?」


 自分自身を庇うために咄嗟に吐いた最低な言い訳に対して、女性は頷きながら言う。


「私が見た限りだと……貴方が強い口調で怒って、泣かせているように見えたけれどぉ? ねぇ、ドルチェ……。真実は、どうなのかしらぁ?」


「うゔっ……。泣かされたよぉ。……シクシク、シクシク」


 女性から問い掛けを受けるなり、ドルチェは泣きじゃくりながらもハッキリと言い切った。


 ……コイツぅ!!


 ミネルが怒りを覚えながら横目でドルチェを見てみると、ニヤリと悪戯めいた笑みが確認できた。


 可愛くない笑みを浮かべながらドルチェは、小声でミネルに呟く。


「ウチを助けてくれるなら、泣くのをやめるよぉ。ウチが勝手に泣いたことにも、してあげる……!」


「助けるってことは、お前の衣食住の面倒もみなきゃいけないってことだろう? 誰がそんなこと――」


「ゔぅ……シクシク、シクシク」


 ミネルが提案をキッパリと断ろうとしたら、再びドルチェが周囲にアピールするように泣きはじめた。


 この行動に頰をピクつかせる女性を横目に、ミネルは焦りながら小声で発言する。


「おい、泣くなよ……!? 分かったよ、お前を助けるよ。だから、泣くのはやめてくれ」


「……本当? じゃあ、もう嘘泣きはやめる」


 ドルチェは言葉通りに、すぐに泣くのをやめた。そのかわり、ニコニコと満面の笑みを浮かべはじめた。


 この変わりように若干引きながら、ミネルは内心に悪戯めいた笑みを浮かべて思う。


 ……よし。まずは世の中、泣いても解決しないことがあると教育してやるか。


 そんな中、浮かんでいた女性がミネル達の目前までユックリと降りてきた。


「あらまぁ。ドルチェ……。その様子だと、嘘泣きだったようねぇ。私、すっかりと騙されちゃっていたわぁ……」


 嘘泣きに気付いた女性は「うふふ」と目を細めながら微笑を浮かべた。


 この様子にミネルも苦笑いながらも、笑みを作ってみる。


「僕もスッカリと騙されちゃいましたよぉー。あははははぁー」


「誘拐犯が、何を呑気に笑っているのかしらぁ?」


「えっ、誘拐犯!?」


 今さっき程まで微笑を浮かべていた女性の顔は、怒りに満ちていた。色白でお淑やかな顔が、真っ赤になっていて眉間にはシワが寄っている。


「そうよ貴方は誘拐犯。私の可愛い妹の手を繋ぎながら、否定ができるとでもぉ?」


「えっ、手を繋いでる……?」


 ミネルは女性の言葉に疑問を抱きながら、自分自身の右手先に視線を向けてみる。


 刹那。


 シレッとした表情でドルチェが、右手を掴んでいることに気付く。あまりにも優しく掴まれていたので、触れらていたことにも気付かなかった。


「おいっ、なに勝手に俺の手を掴んでいるんだよ!?」


 ミネルは慌てて繋がれた小さな手を振り払うと、脂汗を流しながら女性の顔に視線を向けて言う。


「いや、コレは違うんです!! 決して、手を引っ張って誘拐をしようとかそういうのではなくて……。というかこれは、夢!! 夢の中でいくら手を繋いだところで、誘拐なんて出来ない! 連れ去ることなんて、不可能なんですから!!」


「言い訳なんて聞く気はないわよぉ……。とりあえず、貴方の精気を全て吸い取ることにするわぁ」


 女性がミネルの言葉を軽く受け流しながら言い切るなり、ドルチェが多少に慌てながら唇を大きく動かす。


「ちょっと待って! お姉ちゃん、違うの。ウチ、この人と結婚をしたいの!! だから、殺されたら困る!!」


 ……えっ、結婚!?


 不意に発せられた言葉に、ミネルの思考は一瞬だけ固まりそうになった。


 そんなことを御構い無しに、女性は口を開いて言う。


「あらまぁ。この男性は、婚約者だったのぉ? なら、力試しをする必要があるわねぇ」


 ……力試し? なんだよそれ、イヤだよ。やりたくないよ。


 ミネルが面倒くさいと感じる中でも、女性はユックリと唇を動かす。


「そうねぇ……。力試しの内容は、私と決闘をするということにしましょう。男が女の私に負けるくらいじゃ、これから先……ドルチェを護れるのか不安だから、返してもらうわよぉ。逆に貴方が勝ったら、ドルチェを宜しく頼むわぁ。決闘場所は、彼処に見える金色の島にしましょう」


「頑張ってねぇーっ!!」


 ……よし、この決闘。負けてやろう。


 固く想いを誓いながらミネルは、隣からドルチェの声援を受けて、金色の島へと繋がる橋を踏みしめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ