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冒険という名のパラダイス!!  作者: めーる
第5章 いざ、魔王討伐!!
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5章 第45話

「ドルチェって名前だっけ……? なぁ、お前を満足させるには、どうすれば良いんだよ?」


 ミネルは、船から身を乗り出して砂漠の海を楽しそうに眺めている幼女へ、不安気に訊ねてみた。


「分からなーい! でも……ウチがとっても楽しいと思って、この夢が大好きなったら、出て行くぅ!」


「大好きになったら、出て行くのか……?」


 普通、大好きなところには長居したいもんじゃないか?


 そんなことを思いつつミネルは、振り返ってきたドルチェの瞳を見つめて呟いた。


 刹那。


 ドルチェは、ニカッと満面の笑みを浮かべて唇を大きく動かす。


「うん! 夢魔族のウチは、夢に入ることで、その世界を作り出している人の精気を無意識に奪っちゃうからねぇ!! あまり長居しすぎちゃうと、夢を見ている人が死んじゃうの!! 死なれちゃったら、同時にウチの好きな世界が無くなるってことでしょ? だから、出て行くのぉ!!」


「なぁっ、早く俺の中から出て行ってくれよっ!?」


 ドルチェの返答を鼓膜に響かせたミネルは、全身を真っ青にしながら即座に声を荒げた。


 焦っている様子を目前に、ドルチェは微笑みを浮かべる。


「えへへ……! まだ大丈夫だよぉ!! ……多分」


「多分って、なんだよ!? 多分って!?」


「えへへ……?」


「笑顔で、誤魔化そうとするなよ?」


 ニコニコと微笑みを浮かべるドルチェを前に、ミネルは顔を真っ赤にしてプルプルと拳を握り締めながら内心で考える。


 ……これは夢だ。だから、なんの痛みも感じない。ということは、子供であろうと本気で殴っても良いよな? よし、実行しよう。


 そんなこんな決断した時だった。


「ねぇ! あれ、なにっ!? すごーい!!」


 突然にドルチェが、ミネルの背側へ視線を送りながら興奮しはじめた。


「えっ、なんだ? 俺の後ろに、なんかあるのか??」


 ミネルは疑問を抱きながら、後方へと振り返ってみる。


 と。


「うぉぉおおおおいっ!? なんだコレっ!?」


 目にした瞬間に飛び上がってしまうくらいの、金色に輝く島が其処にあった。


 島に根をはる植物、そんな植物の周りを飛ぶ虫までもが金色に輝いている。


 天を見上げてみると、蒼かった空がいつの間にか金色へと変化していることに気付く。


「なにコレなにコレ!? すごいねぇ!! 早く、島に入ろうよぉー!!」


 ドルチェが、船の上を小走りではしゃぎ回りだした。


「お、おう。そうだな」


 こう返答してみたものの、島を見通す限り船を着けれそうな場所は見当たらない。


 島外からの侵入者を拒むように、何処も彼処も険しく高い石壁が立ちはだかっているのだ。


 ……一体どうやったら、島に入れるんだろう?


 ミネルがこう思った瞬間、ドルチェが元気よく声を発する。


「なにしてるのぉ? 早く島に入ろう! 貴方の夢でしょ? なら、想像しようよ!」


「想像する? どう言うこと?」


「想像して、創造をするの! 例えば、足元から島内まで続く大きな橋とか!! とにかく、想像してぇ!!」


「わ、わかったよ……。想像をすれば良いんだな」


 ドルチェの元気に圧倒されながら、ミネルは自分自身の足元から島内へと続く橋を懸命に想像してみることにした。


 すると……想像したモノと全く同じ形をした橋が、浮かび上がるようにスゥーと目前に現れた。


 この光景を視界に納めたミネルは、思わず言葉を漏らす。


「な、橋が……。出来上がった」


「夢だからねぇ」


 驚愕するミネルを隣に、ドルチェはクスリと微笑しながら橋へと足を掛けた。


 瞬間。


「あららぁ……。まぁまぁ、こんなところに居たのねぇ」


 空の方から、不意に言葉が降り注いできた。


 お淑やかで女性らしい声色からして、ドルチェやミネルが発しているモノではない。


「なんか嫌な予感がする……」


 ミネルは悪い未来を肌で感じ不安になりながら、声が響いてきた空を見上げてみる。


 すると……艶の良い黒長髪と大きな胸が特徴的な美しいお姉さんが、視界に入った。


 背中にはコウモリの羽のようなモノが確認できて、尻部分から黒く細長い尾が生えている。身につけている衣類の生地は薄く、ドルチェのお姉さん版といった感じだ。


 不意に現れた空飛ぶ女性を目にしながら、ミネルはドルチェへと問い掛ける。


「なぁ。もしかして、知り合いだったりするのか? いや、知り合いだろ?」


「うん……! ウチの、お姉ちゃんなの!! 今、お姉ちゃんから逃げてるの!! 助けて!!」


 ドルチェは女性の正体を明かすと同時に、上目遣いをしながらミネルの腰元にガッシリと抱きついた。


 この甘えた行動を受け流しながら、ミネルは冷静な口調でドルチェへと訊く。


「夢に入ってくる夢魔族が多くなるほど、奪い取られる精気は多くなったりするのか?」


 この質問にドルチェは、ミネルの服袖を握りしめながら細々と返答する。


「うん……! するよぉ」


 嫌な予感が的中した。


「そうか! あのすみませんっ、お姉さん!? この子を渡すんで、すぐに夢から出て行って貰えますか!?」


「この、裏切り者ぉぉおおおおーぅ!?」


 ミネルが空飛ぶ女性へと提案するなり、ドルチェは顔面を蒼白させて声を荒げた。

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