5章 第44話
更新遅れました。
「それよりも、お前は誰なんだ? 何処かで、会ったこととかあるっけ?」
ミネルは、馬乗りになっている幼女を見つめながら問い掛けた。
夢の中で、こんなにも顔がハッキリとして見えているんだ。きっと現実世界で、ミネルが強い印象を受けた人物なのだろう。もしくは、無意識に脳内で創造をした人姿。
夢の中では、知人ですら誰か分からなくなってしまう。
ミネルが色々と思考を働かせていると、幼女が小さな唇をニッコリと開く。
「ウチは、夢魔種のドルチェ! 貴方の夢の中に、お邪魔させてもらっているのぉ!! 会うのは、今が初めてだよ!!」
「どういう意味? 俺の夢の中に、入り込んでるってこと??」
「そうだよ! 夢魔種は、寝ている人の夢に入ることができるのぉ!!」
若干にミネルが困惑をしている中、ドルチェは笑顔で答えた。
そのまま笑みを浮かべながら、ドルチェは続けて口を動かす。
「ねぇ! こんな所で寝てないで、部屋の外に出ようよ!!」
未だに困惑が解けていないミネルは、少々に首を傾げて呟く。
「なぁ……。まだ、頭の整理が追い付いていないんだが」
「どうせ夢なんだから、深く考えるだけ無駄だよぉ! 早く、行こう!!」
ドルチェは言いながら、床に立ち上がってミネルの右腕を強く引っ張った。
反動で、ミネルの身体はベッドから起き上がる。
「早く行こぉ! 早く早く!!」
ドルチェは満面の笑みを浮かべて、床に足裏を着けたミネルの右腕を引っ張り、外へと繋がる扉を勢い良く開いた。
刹那。
「うわっ、眩しい!?」
真っ白な輝かしい光が、扉外から部屋全体へと襲い掛かってくるように勢い良く侵入してきて、ミネルの視界を激しく眩ませた。
そんな光は、ミネルとドルチェの身体を白く染めて包み込んでいく。
「扉の外は、どんな感じになっているんだろうね!!」
視界が真っ白になっている中、ドルチェのはしゃぐ声がミネルの鼓膜に響いた。
「こんな状況で、よくそんな呑気なこと言えるな!?」
ミネルが大きく口を開いてツッコミを入れると、ドルチェは軽く微笑みを浮かべる。
「だって夢の中なんだもん! 本当の世界では、起きないことが沢山起こっちゃうんだよぉ? だから、楽しみで興奮しちゃうの!」
そんなこんな会話をしていると、白い光は霧が晴れるように消えていき、ミネルは視力を取り戻した。
瞼を開いて一番に映った足元を確認する限り、木製な甲板が見えたので、船に乗っているのだと認識ができる。
「なんだ、別に現実世界と変わらないじゃんか……」
ミネルは少し安心しながらもガッカリしながら、足元から真っ直ぐ正面へと視界を上に移す。
否や。
真っ白な砂漠が、視界全体に広がった。天を見上げてみると、蒼い空に青白い三日月が薄っすらと浮かんでいるのが分かる。
「は?」
ミネルは再び混乱しながら、周囲を確認してみる。
そこで気付いた。
現在……自分自身が乗っている船は、砂漠を移動しているのだと。
「ねぇ! この船、どこに進んでいるんだろうね!!」
ドルチェは輝かしい笑みを浮かべながら、頭を抱えているミネルへと言った。
この言葉を鼓膜に響かせたミネルは、元気なく萎れた声で返答する。
「なぁ……。この夢、どうやったら覚めるんだ?」
「うーん? ウチが満足するまでかなぁ?」
「え? ……今なんて言った?」
「ウチは夢魔種だから、夢の世界に入り込んで、その世界を創り出している人を夢の中に閉じ込めることが出来るの!! だから、ウチを満足させてくれるまで、目を覚まさせてあげないの!!」
この発言を耳にしたミネルは、寝てしまったことを物凄く後悔した。