5章 第38話
「証拠はあるのかっ!?」
責め口調な男が、再び口を開いて言った。
「えっ……。そ、それは……」
ピンク色の髪な男は、少々に困った表情で辺りを見渡しはじめる。
刹那。
ミネルたちと目が合った。
「突然で、申し訳ないんだが……。俺の無実を証明する証拠とかないか!? って……其処に居るのは、もしや聖女様!?」
桃色髪の男は、ミネルの隣に立つマニュタを瞳に捉えるなり、双眼を見開いて驚いた。
……なんか、忙しいヤツだな。
こんなことを思いながらミネルは、聖女であるマニュタに問い掛ける。
「えっ、なに? 知り合いなの??」
「全然、誰か分からないです……」
冷静な口調で、即に返答がされた。
そんな中……責め口調な男が悪戯めいた笑みを浮かべ、再び唇を動かして言う。
「もしかして、証拠が無いんだな!?」
「えっ、いや……」
桃色髪な男は、困った表情で細々と呟いた。
この言葉にもなっていない発言を前に、男は責め口調で追い打ちを掛けはじめる。
「証拠があるのなら、夜明けまでに証明してみろ!! もし太陽が昇るまでに証明が出来なかったら……お前が斬り裂き魔だと、町の皆に言いふらしてやる!! この町には、住めなくなるだろうな!! ……んじゃ、大広間にある噴水前で待ってるぜ」
そう言い切ると、男は裏路地の出口を目指して立ち去って行った。
証拠を問われた桃髪の男は、唖然と立ち尽くしている。
と。
「なぁ……お前ら、助けてくれないかっ!? 斬り裂き魔を捕まえて、俺の無実を証明するのを協力してくれ!!」
桃色髪な男は顔を真っ赤にして、ミネルたちに協力を要請してきた。
「えっ……?」
不意な要望にミネルが戸惑っている中、マニュタが何処か興奮した口調で唇を動かす。
「良いですよ! 協力をします!! ねっ……ベイリーンも、賛成だよね?」
「えっ、いや……」
急に同意を求められたベイリーンは、言葉を濁らせて少々に戸惑いを露わにする。
こんなアヤフヤな返答を耳にしたマニュタは、ベイリーンの耳元でコソコソと囁く。
「ねぇ、忘れたの? なんとしても私たちは、斬り裂き魔を成敗しなきゃならないのよ? じゃなきゃ……冒険者達に、家を買わなきゃならないんだから」
この言葉を鼓膜に響かせたベイリーンは、コクリと小さく頷いた。
刹那。
「えっ、協力をしてくれるのか!? ありがとう!!」
桃色髪の男が輝いた瞳で、マニュタ達に大袈裟な声の大きさで礼を伝えた。
「全然、大丈夫ですよ! 私……聖女ですから!! 貴方を助けるのは当たり前のことです!!」
マニュタが胸を張って言葉を返すなり……桃色髪の男は笑みを顔いっぱいに浮かべて、威勢良く口を開く。
「やっぱり、聖女様だったのか! 俺はユンバラ!! よろしく頼む!!」
「こちらこそ、よろしくです!!」
マニュタは魅力的な笑みと共に、言葉を返した。